加賀恭一郎シリーズ第七弾となります、
東野圭吾「赤い指」です。
このシリーズの中ではいちばん面白かったです。
当初、トリックに重きを置いた本格推理小説として
スタートした加賀恭一郎シリーズですが
(という理解で合ってますよね?)、
前作、今作とだいぶ雰囲気が変わってきたと思います。
それは著者の推理小説に対するスタンスとも
密接に関係しているのだと思いますが、
もともとミステリ読みでない私には、
今作のような小説の方が楽しめます。
すなわち、本書はミステリであっても推理小説とは言えず、
むしろ家族小説とさえ言えるような内容だと感じました。
住宅地の公園で一人の少女の遺体が見つかります。
それが事件の発端なのですが、小説そのものは犯人側が
遺体を公園に遺棄しようとするところから始まります。
倒叙であるというよりは、死体遺棄にいたる原因となった
家庭環境を語るために描かれたものでしょう。
遺体発見後は、当然加賀恭一郎が登場して事件に当たり、
これまで通りの驚異的な洞察力で事件解決に向けて
一直線に進んでいくわけです。
これも上手いところで、一直線に見えないようでいて
結末を見ると見事に一直線であったことが分かります。
必然性というか、あるべき姿の積み重ねの結果
避けえざる道を通って、ゴールにたどり着いています。見事。
また、サイドストーリーとして何度かシリーズに現れている
加賀の父との物語も描かれておりまして、
こちらも本編との絡みが程よくて絶妙の味わいです。
とても美味しゅうございました。
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