Sが市長時代の終わり頃、つまり任期満了に伴う市長選や市議選の準備が始まる頃、市政クラブのP議員への攻撃が始まった。

 

 市政クラブはP議員とQ議員、そして補欠選挙で女性議員が当選して3名の会派となった。その中でP議員は東京出身である。

 要するに地元ではない人、この町と地縁のない人だ。

 また、世間と市政刷新ネットワークはP議員を「S市長派」と考えている。

 P議員は本人は「市長派ではない、私は是々非々である」と言っているが、市政刷新ネットワーク的にはそういうことはどうでもよい。要するに「自分たちの意見に同意しない者は市長派」という極めて短絡的な発想しかない。

 さらにP議員は市議選トップ当選者である。

 以上の理由から、市政刷新ネットワークはP議員を「潰した方がよい奴、潰しても大丈夫な奴」とみなしている。

 

 ただし、P議員は「自分の頭で考えて、自分の力で稼ぎ、市民との対話に基づいて議員活動を行っている人」だ。そこにスキはないし、そもそも市政刷新ネットワークとの接点すらない。

 その彼らが目を付けたのは、P議員が行っていた「地域おこし協力隊の支援業務」である。そこに「随意契約だ、癒着だ」という妄想を展開したのだ。

 

 ここで、地域おこし協力隊について少し述べておきたい。

 俺自身も東京からこの町に戻ってきた時は「地域おこし協力隊の隊員」だった。

 ここでは体験者目線から概略を述べる(詳しくは総務省のHPをご覧いただきたい)。

 まず、地域おこし協力隊には結構トラブルが多く、それを防止するためには「協力隊本人、役所の担当部署それぞれへの支援をする人」が必要だというのが現在の当たり前であることを知っていただきたい。

 P議員が行っていた地域おこし協力隊支援業務は、そういう役割を果たしていたものであることを最初に述べておく(もちろん、市政刷新ネットワークはそういう意味・役割があることすら知らないことも)。

 

 地域おこし協力隊は、東京だけでなく全国の都市圏の在住者がその対象となる。

 そこから地方に移住・定住を希望する人に、その支援をする制度だ。

 地域おこし協力隊は、1年契約で最大3年まで更新できる。

 期間中、国から1人あたり最大400万円まで補助金が支給される。この補助金は1年ごとに使った分を国に報告・請求すると支払われる。つまり自治体は一時的に建て替える必要がある。

 400万円はどのように使われるかだが、200万円は隊員の生活費、200万円は隊員が定住するための事業費という割り振りになる。

 

 隊員の給与は年200万円(税込)である。ただし、自治体が賃貸住宅やレンタカーを借りて隊員に貸し出すので、家賃などは払わなくてよい。ただ家賃なども「400万円」からの支出である。あまりよくない自治体は、複数の隊員を一部屋で共同生活させたり、隊員3人に対して車1台というなかなか不便な暮らしを強いた。

 また、空き家バングに出ている(かなり状態の悪く鍵もかからないような)一軒家に若い女性隊員を住まわせたりという事例もあった。

 

 こうしたトラブルの背景あるのは、自治体・担当部署も地域おこし協力隊という制度をよくわからないままに利用したことと、この制度を都合よく利用しようとした町の長老の思惑である。

                                 つづく…