この町は、平成の大合併で「市」になった。
元々5つの「町」があり、それぞれに町長と町議会があった。
5つの町は、それぞれ山を隔てて存在している。地理的な状況は町ごとに異なり、特産品や暮らし方も違う。農業が中心なのは共通だが、米作、果物、野菜など主力商品は異なる。加工品がある町もあれば、工場を誘致している町もある。
5つの町が統合されて1つの市になることが決まった時、各町は「町の公共施設」を新設した。公民館だけでなく、プールや体育館、美術館まで作った町もある。
市になる・町がなくなるという寂しさから何か「証」を残したかったのかもしれないし、田舎町によくある「隣町との対抗意識・敵対意識」もあったのかもしれない。
いずれ、イタチの最後っ屁のようにハコモノを建てた。その維持費は「市」の負担となる。計画を実施した旧町の町長・町議会議員は知らん顔である。そして、それぞれのハコモノは建設して20年以上経過し、マンションで言えば大規模改修が必要となっている。
市になってからもだ。前々市長は4期16年勤めた。
「市民会館・温泉付き宿泊施設・道の駅の新設」は前々市長時代のものだ。そして今回「田んぼアート事業」が議会を通った。市の予算で土地を買い、市の予算で土地を整備し、市の予算で駐車場や公園を作って、その中に田んぼアートを見るための展望台やカフェを作る。
田んぼアート事業は、一人の老人の「自分が持っている地域の伝統農法を残したい」という願望が出発点だ。それを市議会議員が「市の事業」にする。そこには市の予算を原資とした利権が構築され、市長も共犯となって議会で承認される。
この老人が、現在市政刷新ネットワークの代表であるXさんである。事業化・利権構築をしたのはW議員と山川さんだ。
田んぼアート事業のための土地が購入された。すぐに整備が始まる。そこには建設業を営むW議員がオーナーである企業がからんでいる。
田んぼアート事業の土地購入・整備が終わったところで、前々市長は引退した。
そして、無投票で新市長が決まった。
新市長(前市長)は就任半年で、現職大臣から票の取りまとめを依頼され現金を受け取って逮捕された。市長と一緒に逮捕されたのは、当時の議長、W議員、山川さんの4人である。
この事件は日々報道され、世間をにぎわせた。
市長選は、当時の副市長が立候補し無投票で決まるかと思われた。
そこにSが立候補し、当選した。
市長となったSは、公共事業の見直しに取り掛かった。
そもそも、国から「ハコモノを減らせ」という指示は出ており、指示に従って公共事業の廃止・ハコモノ減少の計画を市は立ててはいた。ただ、それは国に対するアリバイであったのかもしれない。
国の指示は、床面積で20%以上ハコモノを減らせというものだ。
ちなみに、市のハコモノの総面積は全自治体平均の2.5倍である。ハコモノ過剰なのだ。そしてSが市長となった時、ハコモノ減少計画は9%しか進んでいなかった。
20%のうち9%ではない。20%減らすという計画の実施率が9%だ。
土地購入・整備まで終わった田んぼアート事業は見直しの対象となった。
議会ではW議員、山川さんが抵抗を示したが、完成しても赤字にしかならない事業を進める理由はない。事業はストップした。
これ以降、XさんはS市長を憎悪するようになった。
これが、Xさんが市政刷新ネットワークの代表となることの伏線である。