かなり前にこんな症例をみつけましたので掲載しておきます。
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E子さんは20代半ばの、スタイル抜群のお嬢さんで、家は都内にいくつかの豪邸をもつ資産家です。
しかし、家庭内は複雑で、父親は外に女性を囲っていて、母親はそんな父親に嫌気がさしてました。
親は彼女に対して、あるときは目の中に入れても痛くないかのように扱ったり、またあるときは手のひらを返したりと、情緒不安定な扱いを交互に繰り返します。本人としては、親を拒絶したい気持ちがある反面、依存したい気持ちもあって、そのもやもやを外で解消することを繰り返してきました。
ところが、本人も20代半ばになって考えるようになったのでしょう。
親の呪縛から逃れたいとおもうようになってきました。親離れをしようと思っているのです。
ところが、母親は娘の親離れを引きとめようと必死になりました。
ご主人に見放され、そのうえ娘にまで見捨てられる孤独に耐えられないのです。
こんな母親に対しE子さんもむげにはできません。そうした二律背反の精神状態がフラストレーションとなり、はけ口となったのが、彼女のフィアンセでした。
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一般に、母親と子供の共依存が生まれる背景には、夫婦関係の問題が投影されています。
家庭内での夫婦間の会話がなくなり、特に妻としては夫に応えてもらいたいと思っているのに、夫から何の反応もない状態が続くと、そこで溜まったフラストレーションが「第三者」である子供に向いてしまうのです。
そして夫はあてにならない、子供だけが頼りだと益々わが子に依存し、結局子離れができなくなるのです。
一方、子供の方も母親の期待に添わなければならないという、半ば使命感に似たものを背負い込み、母親の為に献身的に努力するという構図が家庭内に出来上がるわけです。
母源病(母原病)という言葉があります。
上記のケースのように、親は子が親離れすることを半ば脅迫的に抑圧し、親離れしそうになると、ときには「親不孝」などと罵ることもあります。
つまり「親の子離れ」のほうが「子の親離れ」よりも遅いのです。
そして自立のチャンスを失っていきます。
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私感ですが、「親不孝」「出て行け」などと言い放ったあと、本当に子が「親離れ」をしそうだと感じると手のひらを返したように
「甘い餌をちらつかせる」「甘い言葉を言い出す」「自分(親)はこんなに辛い」みたいな事を言い始めます。
うちの女王様は症例の通り(微妙な違いはあります)で、人格障害の治療に親の助けを求めることはできませんでした。
言うなれば、逃げ場になり悪化しました