衆院総選挙が目前に迫る中、農協(JA)グループが衆院選の立候補者に政府の農協改革に反対するよう求めていると22日付日経新聞が報じています。選挙戦を手伝う見返りに、政府案に反対しろというのです。なぜ自民党では改革を実現できないのか、これを読めばよくわかります。
記事では農協の政治団体である全国農政連が次期衆院選の立候補者に「農政課題に関わる政策協定書」を配布。推薦を受ける場合にはこの文書に署名と押印をして提出するよう求めているとしています。
政府はグループのトップに位置するJA全中の一般社団法人化やJA全農の株式会社化などを進めようとしていますが、文書では「極めて問題がある」と指摘。反対するよう求めています。つまり政府案に反対しなければ推薦せず、選挙運動も手伝わないと脅しをかけているのと同じです。
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11月22日付 日本経済新聞朝刊
JA全中の政治団体 衆院選立候補者に「踏み絵」
全国の農協を指導する全国農業協同組合中央会(JA全中)の政治団体「全国農政連」が次期衆院選の立候補者に、政府の農協改革を「極めて問題がある」として反対するように踏み絵を迫っていることがわかった。農政連は一時期を除き、自民党の支持団体として集票マシンの機能を発揮してきた。選挙をきっかけに政府の農協改革を骨抜きにする狙いがある。
全国農政連は全国の下部団体に「農政課題に関わる政策協定書」とする文書を配った。政府の規制改革会議が示した全中を頂点とする中央会制度の一般社団法人化やJA全農(全国農業協同組合連合会)の株式会社化などの問題に触れ「JAグループの組織の解体につながりかねない」と指摘している。
衆院選立候補者は農政連から推薦を受ける場合、こうした文書に署名と押印をして提出する。ある自民党議員は「農政連の推薦がないと農協が選挙で動かない」と語る。
農協改革を巡っては安倍晋三首相が国会答弁で「農協法に基づく現行の中央会制度は存続しないことになる」と明言。全中を「特別な機関」からほかの業界団体と同じ一般社団法人にして、全国の地域農協の創意工夫を引き出す方針を示している。
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農協は建設業界や日本医師会などと並ぶ自民党の有力支持団体。その中でも農業従事者である正組合員が461万人、その他の準組合員数が536万人いる農協は自民党にとって非常に便利な組織です。特に農業従事者は普通のサラリーマンと違って平日の日中でも選挙を手伝ってくれるため、非常に便利な組織と言えます。
選挙を手伝ってもらった議員はその見返りに、農協の求める政策の実現に力を貸してきました。それが農村地帯を地盤とする農林水産族議員です。さらに農林水産省も加わった政財界のトライアングルで農政を歪め、結果的に日本の農林水産業の競争力低下を招いたと言えます。
今回、農協は生き残りをかけて必死のため、ここまであからさまな手口を使っていますが、どの業界もやり方は変わりません。政治家の選挙を手伝う、もしくは政治献金を提供する。その見返りに自分たちの主張を政策に反映してもらう。これが自民党政治の現実であり、限界でもあります。
安倍政権は第三の矢に成長戦略を掲げ、農協改革や混合診療拡大などの医療改革、雇用の流動化に向けた労働市場改革などをぶち上げましたが、いずれも骨抜きにされました。業界団体が与党の族議員を通じて圧力をかけ、政策を歪めるという図式はどの業界も変わらないのです。
今回の総選挙はアベノミクスの方向性を問うだけでなく、経済を再生できるのはどの政党か、改革を実行するのは誰か、という選択でもあるのだろうと思います。各党が相次ぎ発行しているマニフェストを見ただけで選んではいけません。言ったことを必ずやるとは限らないのですから。