政府の農業改革が失敗する3つの根拠 | 山本洋一ブログ とことん正論

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元日経新聞記者が政治、経済問題の裏側を解説!

 政府・与党が減反見直しに次ぐ農政改革の第二弾を決めました。焦点となっていたJA全中の廃止は撤回し、企業による農地の所有解禁も見送りました。TPP参加に向けて国内農業の競争力強化は待ったなしの課題ですが、政府・与党は本気で取り組む気がないようです。


 改革案のベースになったのは政府の規制改革会議が5月に出した提言です。会議は全国の農協を指導する「JA全中」の廃止や、農産物の販売を請け負う「JA全農」の強制的な株式会社化、将来的に企業が農地を所有できるようにすることなどを政府に求めました。


 しかし、廃止を求められたJA全中など関係団体は猛反発。自民党の農水族議員らに働きかけ、多くの項目を「骨抜き」にしたのです。


 報道によると、政府・与党案は今後5年間を「改革集中期間」とし、JA全中は権限を縮小して「自律的な新たな制度」に移行。JA全農は「株式会社も可能にする」としています。企業による農地所有も見送り、農地を所有する農業生産法人への企業の出資規制の緩和にとどめました。


 規制改革会議がJA全中の廃止を求めたのは、圧力団体の中でも際立って高い政治への発言力を弱めること、そして農協のあり方を全国画一的な中央集権体制から地域の実情に合わせた地域主権体制に変えることが目的です。ところが政府・与党案にある新組織の表現はあいまいで、どんな組織になり、どんな役割を担うのかまったく見えません。


 さらに5年間の猶予期間を設けたことが最大の骨抜きポイントです。日経新聞は「安倍晋三政権の求心力が衰えれば、農協改革が看板の架け替えになる懸念がある」と指摘していますが、それこそがJAや族議員の狙い。安倍政権が今後5年間も続くはずがないので、次期政権でひっくり返せばいいと考えているのです。これが「政府の農業改革は失敗する」と考える、一つ目の根拠です。


 二つ目は、農協の参入規制緩和が盛り込まれていないこと。農協は独占禁止法の対象から除外されているため、競争原理が働かず、創意工夫が生かされないと指摘されています。農協を独禁法の対象に加え、新たな農協の参入や、既存農協の対象地域拡大によって競争を促進し、農業の競争力強化につなげるべきです。


 三つ目は税制改革が欠けています。全国には約40万ヘクタールの耕作放棄地がありますが、その背景には税制優遇があります。耕作放棄地でも農地と同じように優遇されているため、転売や貸借が進みにくいのです。耕作放棄地の税制優遇をやめ、意欲ある農家への貸与や転売を促していかなければなりません。


 日本の農政は零細農家の保護にこだわり続け、効率性の向上という課題から目を背け続けてきました。たまりにたまった膿を一掃するには大改革が必要。しかもグローバル化の波を乗り越えるためには急がなければなりません。


 やるべき課題は安倍政権もわかっているはずです。やっぱり自民党ではできないのでしょうか。