カードゲームに求められるもの - メタルギアアシッド2 レビュー | テレビゲームのソムリエになりたい - yzxのつぶやき

カードゲームに求められるもの - メタルギアアシッド2 レビュー

メタルギアアシッド2 Best版 このゲームを表現するならば、額面どおりに「メタルギアソリッドのミッションをカードゲームで表現した」というのが率直なところである。

遊んでみれば、「 マス目で区切られたマップ 」に敵が配置してあるだけで、その配置から上手に見つからないようなルート探し出してゴール地点へスネーク移動させていくだけである。ただ、その過程が『メタルギア』らしく、邪魔な位置にいる敵は物音を立てて呼び出したり、いっそのこと「全員を排除」したりして進めていく。

私なりに、このゲームは「カードゲームである」という点よりも、「 アクションゲームじゃないメタルギア 」とアピールした方が良いとは思う。アクションではないから、コレといった緊張感を求められるゲームではないし、既存の敵が移動するタイミングを見極めながら操作していくという場面がないわけだ。何せ、カードゲーム特有のターン制だから『自分が動いたら次は敵が動く』みたいな感じで、ハッキリとした境界がそこにはあるわけだ。腰を落ち着けて、煎餅かじりながらプレイできるメタルギアというのは楽でいい。

敵の視界に関してもマス目で区切られたマップによって、ハッキリと把握できる作りになっている。そのため、十字キーを一回押すか、二回押すかの違いで、敵に見つかったり見つからなかったり、そんな感じ。だから、既存のメタルギアと比べて、実にヌルい…というよりも、プレイヤー側がかなり有利な状況で遊べる作りになっているわけだ。

さて、キモとなる「カードゲーム」という部分。
ターン制の部分をどう表現したかといえば、「コスト」という行動順序で表現してる。
例えば、通常の移動ではコストが+4加算され、強力なカードを使えば+8とかになる。
これは敵も一緒。そして、次のターンはそのコストが低い順に行動できるわけだ。

こういった点はカードゲームらしく、そのコストを低減できるカードがあって、常に自分のターン終了時に貯まったコストを「0」にすることができれば、また自分のターンが続くといった形になる。まさに「ずっと俺のターン」なわけだ。更にぶっちゃけて言ってしまえば、敵に見つかっても、このコスト順で行動するが故に「ずっと自分のターンが続くデッキ」を作れば、いくら増援がこようとも怖くない。敵が4歩動く前に、自分は30歩動いたりするようになったりするわけで。

ただ、そこはこのゲームをやり込めばの話。

カードゲームなのだから、最初は当然のように所持しているカードの枚数が少ない。
ステージクリア後に、ステージ中に手に入れたカードと、クリアボーナスのカードと、ポイントが手に入る。
そして、ステージとステージの合間で入手したポイントを消費して「3枚入りのパック」が最大4種×10パックずつ購入可能で、単純に120枚のカードがランダムで入手可能なわけだ。

そういった部分は、RPG的なもので例えられる。
消費したポイントが経験値であり、「カード枚数=レベル」になる。
たくさんのカードがあれば次のステージに、より適したデッキが作成可能になるわけだ。

単純な話、RPG的なメタルギア。そういった表現もこのゲームに合っているのかも。

ただ、あくまでも、カードの出現率はランダムになるので、強力なカードが手に入ることもあれば、役立たずな使いようのないカードが手に入ったりするわけで、そこはRPGとは少し違うか。いちおう、ゲーム開始序盤は1種類のパックしか入手できないようになっているので、最初から強力なデッキは組めないようにはなっている。当然といえば当然だが。


さて、ここまで書いた時点だと、このゲームはゲームシステムそのものはそれなりにできていることが分かるかと思う。
あとは、付加価値となるストーリーや演出、ゲームを味付けしていくスパイスとなるカードの種類や機能など。

ストーリーは正直、あんまり期待できないかも。
メタルギアシリーズとしての話の面白さは、かなり低い方になるんじゃないかと。
何せ、序盤である程度の展開が予想できて、その予想を裏切ったり斜め上を行くという感じじゃなかった。
決して名作にはなりえない。そんなストーリー。
ごめん、話は単純にアシッド1の方が面白い…ただ、そっちはそっちで操作性と演出とかが未成熟

次に演出と操作性。
1作目では、カードを使用した際の演出や、ステージイベントの演出が飛ばせなかった部分が改良してある。
2ではボタン一発で飛ばせるようになっているので少し快適。特にカードを使用した際の演出が毎回飛ばせなかった部分が飛ばせるようになったのはストレスが貯まらなくなって良い。もっとも、エフェクトという演出は必ず起こるので、設定でそれらのオン、オフができるようにしてくれると一番いいんだが。

また、1では移動の途中で隣接した敵を蹴り飛ばせなかったり、途中でホフク姿勢になれなかった部分が、2ではそういったことができるように操作性そのものを変えてある。おかけで、よりメタルギアっぽい、細かい動作ができるようになった点はかなり良い。


んでもって、次に登場するカード。
パスワードやダウンロード含めて全559種。
前作では300種ぐらいだったので、倍近いのだけど、実はコスト調整した程度のものでたいした変化なし。
今作では「カードのアップグレード」というのも追加されているのだけれども、この559種にはアップグレードしたカードも1種として計測してるので、要は1枚のカードで2種できたりするだけ。アップグレードできないカードもあるけれど、この倍近いというのはそういうカラクリがあったりするだけなんですね。商品パッケージの裏面に書いてあることには期待しちゃダメです。

しかも、アップグレードそのものは、前作から弱体化したカードをアップグレードすれば前作と同じ強さのカードになったりとかで、実に微妙。手間がかかるだけになっただけかも知れない。

強いてあげるなら、特定のカードを使用した際に自動的に効果が発動するというカードだけが目新しいだけ。
1作目と2作目でこうも違うんだぞ!というような部分はない。

そして、このゲーム…どうしても駄目な点があって、それが今回のエントリー名にようやく関連するんですわ。
何せ、デッキを作成する部分のインターフェイスが実に悪い。

いちおう、「現在の所持カードからもっとも適したデッキを自動的に作成する」という、そりゃすごく画期的な機能はある。
マジックギャザリングで例えると、ボタン一発で、現在の所持カードから「MoMa」を作ってくれたり「ステロイド」を作ってくれるのなら、なんて楽なんだろうって。

で、実際その機能でデッキ作成してみると、実に役立たず。
何せ、方向性をもってデッキ作成してくれるわけじゃないから。
適当に1枚1枚はそれなりに役に立ちそうだなぁって感じで作ってくれるんで、実際に使ってみると、これが実に使えない。
せめて、火器重視、素手重視、ステルス重視って感じで作れればいいんだけど。

まぁ、これは一つの機能としてはありかもしれない。
対戦機能があるので、この機能で作ったデッキ同士で戦えば、カード所持数を除けば絶対的に経験とカードの引きという運で戦えるわけだし。まぁ、このゲームで対戦までして遊ぶかどうかは別にして。

で、もっと駄目なのが、複数種のデッキ作成ができないこと。
例えば、チャフ・グレネードというカード。使えば、一定コストが経過するまでは、機械が役立たずになるカード。
機械ばかりのステージならともかく、全く役立たずなステージも当然ある。

おかけで、ステージ毎にデッキの構成をし直さなきゃならんわけで、これに手間がかかってストレスが溜まる。
予め、ある程度のテーマにそったデッキを作っておけば、使用するデッキを変更するだけで、それがすむだろうがと。どうして、一度修正したデッキを次のステージで、また戻さなきゃならんのかと。当然、次のステージではまた、構成を変えなきゃならんのだが。

更に、面倒なのがデッキ編集画面が洗練されていない。
登場するカードには、大まかに書けば「装備武器」「消費武器」「サポートカード」「アイテムカード」「リンクカード」「キャラクターカード」ってな感じでカテゴリ属性が一応存在する。そして、編集画面にも「カテゴリー」でカードを並べる項目もある。ただし、その機能はカテゴリー分けした全体一覧であって、「装備武器だけを表示」や「アイテムカードだけを表示」って感じになってない。

それは、一覧のページを進めていくことで、装備武器だけが続くページがあったり、アイテムカードだけが続くページがあるだけで、せめて、「装備武器だけを表示してコスト順で並べ変える」っていうソート機能は欲しい。でも、このゲームにそんな機能は微塵もありませんよ。

また、新しく手に入ったカードをデッキ編集画面から探したりするのも面倒。
何せ、「新しく入手したカード一覧」ってのがないし。
アップグレードしたカードも同様で、多くはその名称が「チャフ・グレネード+」といった感じなるのだけど、
一覧で通常の「チャフ・グレネード」の下にすぐ表示されてるわけでもない。
アップグレードしたカードはアップグレードしたカードとして、カテゴリ毎の後ろにまとめて表示されてたりする。

そのせいで、どのカードをアップグレードしたのかも確認しずらい上に、アップグレードしたカードをデッキに組み込む際に、そのカードのカテゴリ属性そのものが変わってしまったカードは全カード一覧から見つけ出すというような、実に煩わしい作業まで発生するわけですよ。

結局、カードゲームとしての、「デッキを作成する面白さ」って部分がインターフェイスの不備ゆえにストレスを感じ得ない作りに。そのストレスを避けたいがために、デッキを毎回変えることを極力少なくすることで、どのステージでも対応できるカード構成なデッキにならざるをえないわけですが。

ゲームシステムがしっかりとできていても、インターフェイス…言い換えれば操作性なのだけども、そこが駄目なら、ゲームとしては駄作にならざるを得ない。「カルドセプト」や「ルーン2」が名作である由縁は、ゲームシステムが完成されていることと、そこに関わるインターフェイスが実によくできているからであって、むしろ、カードゲームでなら。そこは当然よくできていなければならないと思うんですけどね。

カード種が多くなればなるほど、ユーザーは把握しにくくなるわけだし、そこから特定のカードを見つけ出すためのカテゴリというキーワードか生かされていないのは、今やシステム開発の世界で生きる私としては設計ミスとしか言いようがないし、これはすごく勿体ない。

で、更に残念な事実は、そういった部分が前作から引き継がれたまま。
PSPでは、ポータブルオプスがリリースされてるから、このアシッドシリーズが続くことはもうないかと思うが。ゲームシステムそのものは悪くない。だからこそ、勿体ない。残念なのである。


……と、ここでこのエントリを終わらせても良いのだけど、このゲームの不親切な部分はまだあったりするので、ついでに書いてしまおう。

まず、カードパック購入画面で表示される「各パックから入手したカード種」と「各パックから入手できるカード種の最大数」の部分。
アップグレードしたカードは、アップグレードしない限り入手できないため、パックの購入からは直接入手できないんですけれど、入手したカード種の数字はアップグレードして手に入る数までカウントしてる。

プレイヤーは、必要のないカードまでアップグレードする必要はないから、何故にそんな不親切な表示なのだろうと。
しかも、カードをアップグレードしても「入手したカード種の表示」は即座に変わらなかったりする。
一度パックを購入するか、ステージを進めないと更新されないんですな。
……たいした不具合じゃないけれど、不具合としか言いようがない。

そして、カードパック購入時に手に入ったカードの効果は、その場で確認できるんですが、ステージクリア時に入手したカードやアップグレード時にはその効果の確認ができない。わざわざデッキ編集画面にいって、「手に入ったカードって何だったけ?」と探しつつ確認する必要があるわけです。

これは、カードゲームとしての「新しいカードが手に入った時のワクワク感」を半減させてるとしか言いようがない。
あと、一番よく使うであろう「コストを減少させるカード」の演出エフェクトが、前作よりストレスが溜まり易い表現に変わっていること。エフェクトなので飛ばせません。ああ、うざい。

あと、全カードを集めるのにこのゲームは二週クリアが必須なんですが、初プレイ時にチュートリアルがあるのはいいけれど、二週目も必ず一番最初にチュートリアルをやらされる。とばせないので強制に。そういった部分で、わざとなのか知らないけれどストレスの溜まる作りになっているわけです。こんちくしょうですよ。

更に不満点はあって、いちおう入手したカードは売ってポイントに変えることができます。
これで、不必要なカードは売ってしまって、パックを更に買うっていうやり方は、ゲームを進める上での正攻法だと思いますが、ここにもシステムの不備があってまとめ売りができなかったりします。1種のカードを複数枚売ることは可能なのだけど、2種類のカードを同時に売ることができないんです。だから、もし、20種類のカードを手放す場合は、それぞれ1種ごとに「売却しますか?」といった表示にボタンを押す必要があってですね……まぁ、そんな感じで不親切な点があるわけですわ。


ゲームのやり込みとしては、カードゲームとして全カード種を集めるというのが最終到達地点かなと思いますが、バグ技を利用してポイントを大量に稼ぐ裏技が使用可能で、それを使用した後にあとは、ひたすらパックを買うというのがそうなるんですが…自分は正攻法でポイントを稼ぐやり方で、全カードを集めました。気付けば、総プレイ時間は130時間以上かかりましたが。

最後は悪い点が目立ってしまったのですが、いちおう、それだけの時間を費やせるだけの楽しみはありますよってことだけは、付け加えときます。プレイヤーが奴隷になるゲームと言われたら、あながち間違っちゃいない気もする。


もっとも、こういったレビューが発売した直後の旬な時期にできればいいんですが。