昨日あった滋賀県知事選で、現職の国松善次知事が破れ、嘉田由紀子京都精華大教授が当選した。新聞の地方版を読むと、終盤、嘉田さんの追い上げで、国松さんを抜いたと出てるが、事情を知らない県外人には、アァ!、という出来事である。


嘉田さんは、
・京大農学部、米国ウィスコンシン大学修士、県立琵琶湖研究所研究員、京都

 精華大教授
・琵琶湖の環境問題の専門家
・ダム建設反対、地元負担の大きい新幹線栗東駅建設反対
・環境団体を中心にした草の根選挙を展開し、無党派の風を起こす
・埼玉県本庄市出身、父は市会議員、「小学生のときに選挙カーに乗ってウグイ

 ス嬢のまねをしたり、事務所でお茶を配ったり。学問より政治の家系」


子供のころから地方政治に親しんできたのが大切な点である。サッチャー元首相が、70年代の後半に保守党党首になったとき、仲間の議員が、自由派経済学の旗手ミルトン・フリードマンの難しい論文を持ってきて、読むようにすすめた。数日後、その議員に、論文に書かれていることは、子供のときから知っていたことで、読む必要はなかったと言い、論文を返したそうだが(自伝に出てくるエピソードです)、サッチャーの実家は、地方都市で雑貨商をやっており、子供のときから店頭に立ってたので、自由な取引は、どんなものか体感で知ってたのである。


こういうことが、サッチャーの規制緩和、小さな政府政策の元にあり、サッチャーの父も、地元の市議会議員で、政治についても皮膚感覚があったことが、大政治家になれた理由である。


こんな話を思い出した。また、環境問題の研究者は、机上論、抽象論好きが多く、現場感覚がない人が多い。環境問題の始まりはそれでも通じたが、もうだめだ。現在は、目前の具体的な問題の解決策を打ち出せなくては相手にされない。事業構築能力が求められているのだが、嘉田さんは、現場を知ってるのが強みになり、足りない事業能力は、そうした人に求めればよい。


琵琶湖のある滋賀県だから起こったことで、出るべくして出てきた人の感じがした。


県政の最大の課題は、財政の再建だが、これは国の財政再建とパラレルに進むので、それに同調すればよく、人件費1割削減、外郭団体の縮小、無駄な公共投資の中止、資産の売却、借金の返済など、どの県でも似ており、流れに任せておけばできることである。


そこで、滋賀県の独自性は他の所で出さなくてはいけないが、嘉田さんの場合、琵琶湖の環境改善、環境事業の開発で、具体的な独自性があるのがすばらしい。


だいぶ前だが、県の外郭団体が主催した大学生社会事業ビジネスプランコンテストがあり、審査委員をやったが、このとき、国松知事と懇談したことがある。知事は、優れた環境を求めて移住する人が多く人口が増えている、工場は木に囲まれて外から建物が見えない、世界的なオペラホールがあるなど、滋賀県らしさを自慢していた。


そのとき、○○、△△、××など、社会事業の思いついたアイディアを提案したが、反応から、県庁職員を長くやってきた人の臭いを感じ、起業家型の知事じゃないなと思った。それに比し、嘉田さんは、過去の延長でない飛躍した政策ができる感じがする。


環境事業は、社会起業の本丸である。あれも、これもやらずに、得意な環境事業に絞り、環境事業で全国のロールモデルを作ったらいいのにと思う。そうすれば、この事業作りに、全国から俊英が結集して楽しいことになると思うんですが。。。