「―――潤、大丈夫か?」


俺は、ソファーで横になっていた潤に声をかけた。


「―――うん」


潤が微かに目を開ける。


眠っていたわけではないのだ。


あの事件の後、潤はずっと眠れないようだった。


もともと繊細な男なのだ。


その体も、元から華奢だったが、さらに痩せてしまった気がする。


顔色も良くなかった。


弱音は吐かないけれど、自分が原因で起きてしまった事件のことで苦しんでいることは明白だった。


辛そうな潤を見ているのは、俺も心が痛かった。


できればなんとかしてやりたい。


だけど―――


きっと、それは俺じゃだめなんだ・・・・


そう思って、俺は小さく溜息をついた。


―――何やってるんだよ、あの人は!



「―――翔くん」


いつの間にか、潤が俺の方を見て立っていた。


「あ―――なに?」


「相葉ちゃんの店で、コーヒー飲んで来るね」


「ああ、うん、わかった」


潤は、入口へ歩いて行き、扉を開けた。


そして、ちょっと振り向くと、俺に笑顔を見せた。


「俺は、大丈夫だから。心配しないで」


「―――うん」


潤が出て行った扉を見つめる。


―――ったく・・・・こんな時にまで、俺に気を使うんだから・・・・


潤は、俺には弱音を吐いてくれない。


俺じゃあ、ダメなんだよな・・・・・


もう、わかっていたことだけれど。


俺は、傷む胸を無意識に手で押さえた・・・・・。





「―――あ、潤ちゃん!ちょうどよかった!」


店を出て、事務所への階段を上がろうとしたところで、降りてきた潤ちゃんと出くわす。


「相葉ちゃん」


潤ちゃんが俺を見て微かに笑う。


けど、やっぱり元気ない。


潤ちゃんは、あの事件のあとからずっとこんな感じだ。


店にも顔出してくれるけど、いつも顔色が悪い。


ちゃんと寝れてないみたいだって、翔ちゃんが言ってたけど・・・・・


「あのさ、潤ちゃん、マンゴー好き?」


「マンゴー?」


「うん。常連のお客さんに宮崎県産のおいしいマンゴーもらったんだ。潤ちゃんと翔ちゃんにもあげようと思って、持って行こうと思ったんだけど」


「そうなんだ。ありがと。翔くん、たぶん好きだよ。じゃあ、もらおうかな―――」


そう言って、俺の差し出したマンゴーの入った袋を受け取ろうと手を差し出した潤ちゃん。


俺は、その潤ちゃんの手を握った。


潤ちゃんが、ちょっと驚いて俺を見る。


「―――潤ちゃん、俺、潤ちゃんのためだったら何でもするよ?」


「え・・・・・・」


「どうしたら、元気になる?どうしたら、笑ってくれる?」


「―――相葉ちゃん・・・・・」


潤ちゃんの瞳が揺れた。


長い睫毛が縁どる大きな瞳。


その大きな瞳に、今は俺だけが映ってる。


「潤ちゃん、俺―――」



「潤!!」


突然聞こえてきた声に、潤ちゃんの体が大きく震え―――


その大きな瞳が、さらに大きく見開かれた―――


「さ・・・・・とし・・・・・?」


そこに立っていたのは、なぜか肩で息をする、大野智だった・・・・・。



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