ブックレビュー その犬の名を誰も知らない 著・嘉悦洋監修・北村泰一 | 猫と本と映画と絵を描く日々

ブックレビュー その犬の名を誰も知らない 著・嘉悦洋監修・北村泰一

その犬の名を誰も知らない

著・嘉悦洋 監修・北村泰一

小学館集英社プロダクション 2020年2月20日初版第1刷発行

 

1958年、第一次南極越冬隊の交代時に置き去りにされたソリ犬たち。

翌年タロとジロが生き残っていたのは有名なお話し。しかし、タロジロと共に生きていた犬がもう一頭いた事実はこれまで知られることはなかった。

 

南極の気温が上がったため氷の氷塊が例年よりも進んだことが原因で、第九次観測隊が昭和基地の敷地で発見した第三の犬。

この時、同時に第四次観測隊で遭難した隊員の遺体も見つかったこともあり、第三の犬の件は闇に埋もれてしまった。

 

第三の犬の正体は誰なのか?

遺体の発見が報道されなかったのは観測隊員の遺体発見と重なったからだけなのか?

タロジロそして第三の犬はどうやって南極大陸の冬の乗り越えたのか

 

第一次南極観測越冬隊に参加した19頭の犬たち、それぞれにスポットライトをあてながら「第三の犬」の正体を突き止めていく。

 

タロジロ以外知られていない犬ぞり隊の犬たち、それぞれのエピソードが第一次南極観測越冬隊で唯一、生存している元隊員・犬の担当だった北村泰一(タロジロと一緒に写っている写真で有名)の回想形式で臨場感たっぷりに語られていく。

 

特に雪上車がダメになり、犬ぞり隊が南極大陸の未踏峰・ボツンヌーテンを目指すところなど、冒険映画を見ているようでカッコいい。

 

南極に戻り、犬たちをつないでしまった_しかもいつもよりも首輪を穴ひとつつきつくして_場所をひたすら氷を掘り続ける北村の姿と、死亡が確認された9頭(7頭は行方不明)の埋葬シーンは滂沱滂沱。

 

タロジロが食べられたはずの犬用の餌には手を出さず、発見時には丸々太って大きくなっていた謎解きも興味深い_もちろん、仲間を共食いなどしたわけではない、遺体は氷の下から無傷で見つかっている。

 

巻頭の19頭のポートレイトは貴重だし、後書き、参考資料、奥付まで見てほしい 最後にまたグッとくるのだ。