(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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シンデレラⅡ
(原題:Cinderella II: Dreams Come True)
2002年
監督
ジョン・カフカ
データ
1950年公開の大ヒットディズニー映画「シンデレラ」の実に52年ぶりの新作続編作品。
2002年にソフトリリースにて公開されました。
元々は企画されていたシンデレラのテレビシリーズの為に用意されていた3つのエピソードを、テレビ企画が流れた事により一つの作品としてまとめたオムニバス形式の長編作品。
フランスの作家シャルル・ペローによる同名童話を原作としていますが、今作は原作のその後を描くストーリーになっている為基本的にはディズニーの完全なオリジナルとなっています。
シンデレラが王子と結ばれてお城で暮らすようになったその後の3つの物語をもとに、ジャックやガス達とフェアリー・ゴッドマザーが一冊の本を作っていく…という展開のオムニバスファンタジーです。
〈制作スタッフ〉
監督はジョン・カフカ。
いくつかのアニメーション作品を手掛けたクリエイターですがディズニーでのクレジット作品は本作のみです。
脚本はティンカー・ベルシリーズやプーさんシリーズも手掛けたトム・ロジャース、「ノートルダムの鐘2」「リトル・マーメイドⅢ」のジュール・セルボ等が務めました。
音楽はマイケル・タベラ。
多数のディズニーテレビ・ソフト作品の他トムとジェリーシリーズでも有名な作曲家です。
オリジナル楽曲を新人歌手のブルック・アリソンが歌っています。
〈キャスト〉
シンデレラ役を務めたのは2代目として以後のシンデレラを専属で担当するジェニファー・ヘイル。
日本語版はオリジナルから鈴木より子さんが続投。
ジャック役にはロブ・ポールセン。OVAやテレビにて様々なディズニーキャラクターを演じています。日本語版はオリジナルに引き続き山寺宏一さん。
ガス役はチップ&デールのデールをはじめディズニーの代表的ボイスアクターの1人、コーリー・バートン。日本語は2代目プーさんとしても有名な亀山助清さん。
フェアリー・ゴッドマザー役をミニー・マウス専属声優を30年以上に渡って勤め上げたディズニーレジェンド、ルシー・テイラー。
日本語版は京田尚子さん。こちらもオリジナルから続投です。
その他のキャスト陣もディズニーを代表するような実に豪華な布陣で構成されています。
〈世評〉
実に半世紀ぶりの名作の続編ということで話題性は高く、ソフトリリースではありますがその売り上げは非常に好調であり、収益的には大きな成功を収めました。
しかし評価面では厳しい声が相次ぎ「ボツになったアイデアを繋ぎ合わせたディズニーの処分セールに過ぎない」等の痛烈な批判も多く上がりました。
一方でオリジナルでは行われなかったキャラクターの掘り下げ、特にシンデレラの義姉であるアナスタシアの描写等に関しては好評化する声も多く、現在でもファンの間では一定の支持を集めている作品です。
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あらすじ
シンデレラが王子と結ばれてお城で暮らしはじめてからしばらくの時が流れたある日。
お城ではフェアリー・ゴッドマザーがガスやネズミたちにシンデレラのお話を読み聞かせていた。
皆のところへ急ぐジャックだったがお話の終わりに間に合わず、別のお話をして欲しいと催促する。
しかしシンデレラのお話が一つしかない事に気付いたジャック達は、ゴッドマザーの提案でシンデレラに纏わるもう一つの本を作ることを思いつく。
これまでの出来事を思い出しながら、ジャックたちは魔法の力を少しだけ借りてシンデレラの新しい本の制作にとりかかるのだった…。
※収録エピソード
・Aim to Please
・Tall Tail
・An Uncommon Romance
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感想
あのシンデレラの50年以上ぶりの待望の続編…
という重厚感はまるでなく、続編と言うよりはスピンオフ・おまけエピソード的な物を1本にまとめたファンアイテムのような作品。
いや別にこういう作品があっても全然良いと思うんですけど、こういう作品ならばナンバリングタイトルは付けないで欲しかったですねぇ…。
だってあのシンデレラですよ。
ディズニーが誇る傑作の半世紀ぶりの続編なわけじゃないですか。
その冠の重さをもう少し自覚してほしいっていうのが正直な感想です。
シンデレラだけではないんですけど、この時期のトゥーン作品はその内容云々以前にナンバリングタイトルを容易に使いすぎなんですよね。
やっぱり、その作品に見合ったタイトルってのが絶対あるじゃないですか。
そりゃ名作に「2」てタイトル付けたらどうしても見る方は期待しちゃいますから。
まぁそれが狙いなんでしょうが、だったらせめて相応のプロットは用意してほしいものです。
この作品も、あのシンデレラのその後を描いたスピンオフやボーナスムービー的な感覚で見ればそれなりに良く出来た作品だと思うんです。
ただこの内容でナンバリングをつけられちゃうとやっぱり「それはちょっと…」とどうしても思わざるを得ない。
結果的にこのタイトルのおかげで作品自体も損しちゃってると思うんですよ。
決して全く駄目な作品とは思わないだけに、だからこそ、ちょっとこの安直なタイトルには残念なんですよね。
ちょっとしたお楽しみ
一言で言うならば、シンデレラファンのためのちょっとしたアフターエピソードが見れる'ちょっとした'短編集。
特に【何か】が起こるわけではなく、ただ一作目の後、こんな風にしてシンデレラ達は愉快に平和に暮らしてますよ〜というのを垣間見ることができる、それだけの作品です。
テレビアニメ用のボツ企画をリユースしたというだけあって、作画もアニメーションも音楽も劇的に酷いわけではないですがそれこそテレビアニメーションレベルと言わざるを得ません。
前述の通り1本の長編作品として、ましてや歴史に残る名作のナンバリング続編作品として向き合えばこれはまぁ間違いなく失格でしょう。
それはそうです。
ただ、シンデレラファンの方にとってはあの一作目から50年、その後のキャラクター達の健在な様子をアニメーションとしてまた観れるというそれだけでも嬉しいでしょうし、大きな価値のある作品だったんじゃないかと思いますね。
一つ一つのエピソードはどれも決して凄く面白いわけではないですが、各キャラクターを少しずつ深掘りした大きな外しの無い堅実な内容になっています。
各エピソードは、、
【新しい環境で自分らしさを貫く主人公】
【脇役スポット】
【脇役の恋】
という、まぁプロットだけ見て有り体に言えば、どのアニメシリーズも一度はやっているようなお決まりの定番エピソードです。
中でもやはり「An Uncommon Romance」という、シンデレラの義姉アナスタシアを主役としたエピソードは下馬評通り最も良く出来た1本だと思います。
一作目では「いじわるな姉」というアイコンでしかなかったアナスタシアに、見事に個性を付与しました。
同時に「いじわるな猫」でしかなかったルシファーにも新たな個性付けがされていて、個人的にはこれは良いなと思いましたね。
アナスタシアだけでなくルシファーにも目を向けた着眼点が。
欲を言えばトレメイン夫人のヴィランらしい活躍も見たかったですけどね。
あと(名前以外は)無個性で有名なプリンス・チャーミングが今作でもしっかり無個性だったのは…これはこれで良かったと思いますw
そしてフェアリー・ゴッドマザーに関しては、一作目のテーマ的にできれば無意味に登場してネズミ達と本読んだり無闇に魔法使ったりとかはして欲しくなかったですね〜。
彼女はあくまでシンデレラの願いを叶える手助けをする為だけに現れた一瞬の奇跡のような存在でいてほしかったです、個人的には。
ここが唯一、ちょっと1作目からブレちゃってるとこかなと思いました。
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まとめ
んー。
正直、これまで語ってきた作品の中で最も語る事が無い作品かもしれません…w
物凄く悪いわけでもなく、とても良いわけでもない…。
作品全体の明確なテーマも特になく、本当にシンデレラという題材を扱った普通のTVサイズの小話的な、そういうライトな作品です。
タイトル通り「シンデレラⅡ」として見れば、そりゃお世辞にも良作とは言えません。
ただ、手軽なファンムービーとしてならば、充分に面白く見る価値のある作品と言えるでしょう。
アラジンの「ジャファーの逆襲」や「リトル・マーメイド2」のように真剣に続編をやって出来が良くないのであれば色々語りようもあるんですが、この「シンデレラⅡ」に関してはそもそもその(真面目な続編の)つもりが制作側に無いので…
やっぱり「タイトルを間違えたかなぁ」くらいし言うことが無いんですよね…w
しつこいですが基本的な全体のクオリティはテレビアニメレベルです。
俗に言うナンバリング続編作品のようなシンデレラの正統後継作を求めているなら、この作品はオススメできない…と言わざるを得ませんが「シンデレラ好きだし時間あるし、ちょっと見てみるかな〜」くらいの方には丁度良い作品だと思いますね。
まぁでも、長らくシンデレラのその後を1度は見たいと思ってた人って多分結構いたと思うので、そういうファン達にとってはマストな作品である事は間違いないです。
トゥーン・スタジオ作品の1番良いところって実はこの部分なんですよね。
【本家スタジオは絶対に続編作らないけど、それでも続きやその後を見てみたいって人が沢山いる】
そういう作品にとっては実はとても存在価値のある貴重なスタジオだったんだろうな、と今になってしみじみ思います。
「シンデレラⅡ」は現在ディズニープラスで配信中です♪
はい。
というわけで!
今回はこの辺で。
いつも長文駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!
では、また次回!
しーゆーねくすとたぁーいむ。