ディズニー映画語り ルイスと未来泥棒 | すきなものしか語れない

すきなものしか語れない

ディズニー映画を自己満で語るつまらないブログを粛々と書いています。一投稿の文章が兎に角長いです。ごめんなさい。

はいどうも。


さて、今回も恒例のディズニーアニメーション映画史。時代は輝かしい黄金期・ディズニールネサンスと言われた1990年代を終えて【ディズニー第3の暗黒期】とも言われている2000年代の真っ只中です


バラエティにとんだ良作を産み続けるもののフルCGの時代の波に抗えず苦戦が続くディズニースタジオ。


ついに2004年をもって手描き2D映画から撤退。フルCG映画制作への完全移行実施しました


前作の「チキン・リトル」はディズニーアニメーションスタジオ初のフルCGアニメーションとなりましたが、そこそこの収益を記録するものの評価は低迷


その後ディズニーはCEOマイケル・アイズナー退任。1984年から続いたアイズナー体制に終止符を打ちピクサーを買収ジョン・ラセターチーフ・クリエイティブ・オフィサーに据える大改革を決行します。


そんな大きな動きの末、ジョン・ラセター総指揮のもと初めて制作・公開されたWDASの作品がこちらでした。




(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







  ルイスと未来泥棒

(原題Meet the Robinsons)


2007年

監督

スティーヴン・J・アンダーソン



データ


ウォルトディズニーアニメーションスタジオ47作目の長編アニメーション。

 

監督は2011年版「くまのプーさん」の監督も務めたスティーヴン・J・アンダーソン。脚本にはミシェル・スピッツの他「ターザンや「ムーランをはじめ様々なディズニー作品を手掛けたドン・ホールネイサン・グレノも参加音楽には「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」をはじめティム・バートン作品で名を上げたダニー・エルフマンが担当しています。

原作はディズニーやピクサーの制作スタッフとしても知られる作家ウィリアム・ジョイスの絵本A Day with Wilbur Robinson
ジョイスは今作の制作にも参加しています。

幼い頃に親に捨てられた孤児の発明少年ルイスがタイムマシンで未来を体験するSFファンタジーアドベンチャー
監督のアンダーソンはルイスと同じ孤児であり、その共通点が今回の監督就任に繋がりました。


声の出演ではトム・セレックアンジェラ・バセット等の有名俳優が参加、日本語版では高畑充希さんや小林幸子さん等が出演しています。

地味ながら特にアメリカでは概ね高い評価を獲得する事に成功しますが、興行収入はチキン・リトルの約半分まで減少。
厳しい結果となってしまい、現在でも特に知名度の低い作品ではありますが「トレジャー・プラネット」等と同様ディズニーファンからは根強い人気を獲続けている作品です。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あらすじ



幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で育った発明家を夢見る少年ルイス。

日々発明品作製に夢中になり、なかなか養子先が見つからないまま養子適齢期を過ぎた12歳となった。

そんなルイスは自分の母親に会いたい一心からついに「忘れた記憶を映し出す装置」を発明する。
その発明品のお披露目の為に科学フェアに出かけたルイスは、そこでウィルバーという謎の少年と出会う。

ウィルバーは自分が「未来からきた」と主張し、ルイスに「君の発明品が狙われている」と警告する。

結局装置のお披露目は失敗に終わり、落ち込むルイス。ウィルバーは自分が未来から来た事をいっこうに信じようとしないルイスに証拠を見せる為、彼をタイムマシンに乗せ未来の世界へ連れて行く。

ルイスがそこで出会ったのはちょっと変わっているけれど賑やかで暖かいウィルバーの家族達だった。

次第に心を通わせていくロビンソン家とルイス。

しかしそんなロビンソン一家とルイスには実は思いもよらない秘密が隠されていた…。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


感想




良くできた映画ですね。


ディズニーの中ではかなりメッセージ性の高い作品になってると思うんですが、そんな中でもディズニーらしいエンターテイメント性もしっかりと抑えたかなり優秀な作品だと思います。地味ですけどね。

特にキャラクターの配置や使い方なんかは本当に素晴らしくて、ディズニー映画ならではのエンターテイメントにピッタリと適した絶妙なバランス感だと思います。

ストーリーも随所で引き込まれるようなフックをしっかり掛けているので地味な展開ながらも飽きずに最後まで観たくなる作りになっています。



ただやっぱり、これはジョン・ラセターの就任の影響がかなり大きいと思うのですが、テーマ性を押し出しぎて少々「あざとさ」「押し付けがましさ」を感じてしまうんですよねぇ。。

実際にこの作品は一度ほぼ完成した物をラセター就任後に半分以上を破棄し彼の意向通り作り直してるんですよね。

元々のプロットの中に強引にラセター節が入ってきてる感覚が、観てるとなんとなくわかると思います。

後述しますがこの作品はこれまでの作品になかったくらい物凄いわかりやすく「ウォルト・ディズニーへのリスペクト」が如実に表に押し出されている映画です。

これがちょっと正直ちょっとしつこい

他社からいきなり伝統あるスタジオの責任者に就任したばかりで「ウォルトの事を忘れてないよ!」アピールをしたいのはわかるのですが、それにしても不自然なくらいの押し方です。

ちょっと後半食傷気味になっちゃいました。

メッセージが一方的すぎるんですよね。


あと、まぁなんというか主人公の孤児で養子になかなか引き取られない境遇とか山高帽の正体と境遇とか伏線の回収とか全体的に「さぁここで感動して下さい」作り手の思惑が透けて見えちゃって、ちょっとだけ押し付けがましいんですよね。

あくまで個人の見解ですがこういう「考えさせられる系」とか「伏線と回収」みたいな如何にもいっちょ前の映画的な要素って「リロ・アンド・スティッチ」みたいにファミリー・エンターテイメントの中にスパイス程度に潜り込ませるくらいが丁度よいんですよねディズニー映画は。

このブログで何度も言ってますが「観たあとに何も残らない」のがディズニー映画の良い所だと思っているので。


ちょっと全面に押し出され続けると、どうしてもあざとさを感じてしまいます。

まぁこれは好みの問題も多分にあるとは思いますが。


ただ全体的にはこの近年で稀に見る映画としての全体バランスの良さストーリープロットの洗練さクオリティの高さを持った非常に良い作品に仕上がっていることは間違いないんですけどね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

練り込まれたプロットと無駄の無い展開



全体のストーリーや世界観、脚本はよく練られていると思います。原作絵本に忠実な部分と、独自のストーリーやテーマ性のバランス、ディズニーらしいファミリーエンターテイメントな部分と大人向けな深みのある部分のバランスが絶妙だと思います。


単純そうに見えるストーリーの中にいくつかフックを仕掛けているので、ちゃんと「この物語はどこに向かっているのだろう」と気になりながら観る事ができます。


未来世界の愉快なロビンソン一家も、もうちょっと見たいってくらいの絶妙なバランスの魅せ方ですよね。


真ヴィランのドリスについてとかブーグの境遇と行く末、ルイスの境遇と心情変化、ウィルバーとの友情等、登場キャラクターや見せなきゃいけない要素が多い中でこれだけキレイにまとめているのは見事だと思います。


ギャグは基本オーソドックスを保ちつつ、ロビンソン一家の部分だけ不条理系というのも良かったですね。


子供もついていける笑いと大人にしかわからない笑いと、上手に使い分けてます。



ルイスという少年の視点に合わせた物語としては文句のつけようがないくらい良くできたストーリーエンタメ映画です。


問題はそのルイスに感情移入できるかどうかなんですが…


生じてしまう押し付けがましさ



うーん、この作品の一番の肝はここですね。


この作品では主人公のルイスは終始一貫して


「可哀想な境遇の中健気に頑張り続け才能を開花させ幸せを手に入れたシンデレラマン」


のように描かれています。


勧善懲悪ストーリーの完全な善として。


ただストーリープロットを観てみると、どうにもそれでは無理があると思えてなりません。


ブーグの事もありますがそれだけじゃないんですよね。


客観的に、別の立ち位置からルイスを見てみるとこれが面白いくらいに


「自分の事しか考えられないワガママで性悪な天才少年の成功物語」


にしか見えないんですよね。


一貫して周りへの配慮に欠けている。

人の気持ちを考えない。

失敗するとすぐにキレて投げやりになる。。


等など…


劇中の行動からさまざまな事が見えてきちゃいます。




何より自分が原因で不幸な境遇をたどったブーグに対して一度もまともに謝らないんですよね。

それどころか「済んだ事は忘れて前に進まない自分が悪いんだ」と言い放ちます。


最後に過去に戻ったときについでみたいにブーグを助けて満足気な顔をするのみでした。


これ、敢えてやってるようには見えないんですよね。。


もし敢えてやっていたとしたらジョン・ラセター恐るべしとしか言えないんですが。


というのは、この作品明らかにウォルト・ディズニーへのリスペクト作品を強調して作られていて、主人公のルイスをウォルトに重ねているのは間違いないんですよね。

作中何度もウォルトの言葉をテーマとしてキャラに言わせて、最後に活字でクレジットするくらいですから。


「過去を振り返らず前に進み続ければ必ず望みは叶う」というウォルトの信念がこの作品のテーマなわけです。


そしてそれを体現したのがこの物語の主人公ルイス。才能はあるけれどチャンスに恵まれずくすぶっていた彼のサクセスストーリーなわけです。



これをもし裏テーマとしてウォルトの事を皮肉る為にルイスの性格付けやプロットを形成させてたとしたら、、ジョン・ラセター相当恐ろしいです


実際にこれと似たような手法を使ったウォルト批判を実写版「ダンボ」でティム・バートンがやってるんですよね。


だからあながち絶対に無いとは言い切れませんが…。


兎に角ブーグにしろドリスにしろ、事の発端にルイスの身勝手さみたいな物が起因してる事はちょっと視点を変えると簡単に見えてくると思います。ドリスに対して「なんであんなヤツ作っちゃったんだろ…」とボソッと呟くシーンとかちょっと怖かったですもん。


科学の先生とか孤児院のミルドレッド、ブーグ等周りの人達の優しさに支えられている事に気づいてないんですよ。



まぁだからこそ、真っ当に見ようとしてもちょっと「押し付け感」があるんですよ。

ルイスを悲劇の主人公にしないとこの物語は感動できないわけですからね。


無理矢理それを押し付けられてる気がしちゃいます。


ルイスが可哀想な孤児な部分を全面に押し出したストーリーなんですよね。


この点はやっぱりディズニーらしくないです。


似たような可哀想な境遇や設定を味付けにしながらもそれを決してメインにしない「リロ・アンド・スティッチ」とか「チキン・リトル」の方が自分は好きですねやっぱり。



それとやはり「前に進み続けよう」というテーマ性も作中何度も何度もキャラに言わせてるのでちょっとくどいんですよ。


そんなに言葉にしなくても伝わるよ、、と。


あとちょっと凝った展開とか伏線の回収とか、感動させようというあざとさも透けて見えちゃうんですよね。


ロボットが後ろからいきなり胴体突き破られる衝撃絵とか、別に正直ディズニーで観たくないんですよね。



これはまぁなんとなくピクサー色が強い部分ですね。



彩り豊かなキャラクター性と適材適所のキャラ配置



前述しましたがルイス以外のキャラクターに関しては本当に素晴らしいと思います。


かなり登場人物の多い作品だと思うんですが、そのどれもが強烈な一つの個性アイコンとした適材適所な使い方をしてるのでうるさくないんですよね。ブラザー・ベアと同様、必要最小限のキャラの使い方をしていてそれがどれも効果的に働いてると思います。


ロビンソン一家は前述の通り出番にしたらそれ程多くないんですが、しっかり一キャラずつが際立つ絶妙な演出バランスです。あれ以上出張ると多分うるさいんですよね。



あと現代の方ではミルドレッドリジー(日本語版で高畑充希さんが演じている毒アリの娘)とか、素晴らしかったと思いますね。少ない出番ながらしっかり役割を果たしていて。


キャラクターデザインもわりと原作絵本に忠実な物になっていて、少しクセはありますが慣れると魅力的でしたね。



それと音楽は多種多様なジャンルの挿入歌が盛り込まれていますがどれもパッとしないのが正直なところでした。ただダニー・エルフマンの劇伴は文句なしに素晴らしかったですね。



まとめ【今後のラセターディズニーの礎となる原点作品】



良くも悪くも、まさにラセター流ディズニーの始まりと言える作品になっていますね。


まだまだこれから本格化していくのですが、今作に関してはラセター半分、これまでのディズニーらしさ半分くらいのバランスでしょうか。


一つのエンターテイメントアニメーション映画として非常にうまくまとまった良作であることは間違いありません。


何よりロビンソン一家等コンテンツとして魅力的な部分も沢山あったので出来ることなら続編が見たかったですね。


ちなみに続編はトゥーンスタジオによって制作されていましたがジョン・ラセターによってボツにされてしまいました。


うーん残念。


テーマ性もわかりやすく適度に驚きや感動も盛り込まれてるのでファミリー映画として家族で観るにも最適だと思いますし、ディズニー好きでも、あまり興味ない人でもそれなりに楽しめる内容とクオリティです。


地味なことは間違いなく知名度もかなり低い作品なんですけど、広く色んな人にオススメしやすいディズニー作品ですね。



この後の「アナ雪」や「ベイマックス」「ズートピア」等、第三次黄金期へ続く新ディズニー始まりの一本として歴史的に見ても大きなターニングポイントとなった一本です。





はーい。


というわけで。



今回はこの辺で。



長々とお付き合い頂きありがとうございました。



そしていつも沢山のアクセスといいねも本当に感謝です。続ける励みになっております。





ではまた次回!





しーゆーねくすとたいむ。