side N
フラフラしている彼女を半ば抱えながら歩く。
真っ赤な顔はまるでりんごのようで私は柄にもなく笑ってしまっていた。
な「入りますよ、、」
はぁ〜い、と酔っぱらい特有の間延びした返事を合図に
私は彼女の部屋に足を踏み入れた。
さっき感じ取った甘い彼女の声。
熱い体。
ドキドキしていないといえば嘘になる。
な「ゆっくり、、、」
そう彼女に小声で言って、
頭を抑えながら、ゆっくりと私は彼女をベッドにそっと寝かす。
な「お水取ってきます」
そう言って背中を向けると、
彼女は私の服の袖をぐっと掴んだ。
そのまま私を引き寄せる彼女の力で私はベッドの端に座り込む。
な「気分悪いですか??」
そう尋ねるとフルフル、頭を左右に振る彼女。
私の袖を離す様子もなく、戸惑っていると、
彼女はうるうるした目でこちらを見つめた。
ゆ「ねぇ、、わざと?」
気づいてないふりしてるの? と
とろけるような甘い囁きに私の胸はどくどくと波打ってる。
彼女は酔っているだけ。
伸ばしてしまいそうになる手をぐっと握り、
私はただそこに何も言わず座っていた。
ゆ「私はなぁの全部が知りたい、、」
なぁは? と尋ねてくる顔は、
生唾を飲んでしまうような破壊力。
な「ゆうちゃん、今日は酔ってるから、、」
そんな生温い言い訳で逃れようとする私を
絶対に逃してくれはしない彼女。
そして私もそれをわかっていた。
ベッドから起き上がった彼女はベッドの端に座る私の前に立ち、
太ももの上においた手を邪魔だというように払い除けると
向かい合うようその上に乗った。
ゆ「ほんとはゆう、酔っててもこんなことしない」
一人称がゆうに、私の呼び方がなぁに変わってる彼女は
きっと確実に酔っているだろう。
だけどそうやって訴えてくるのはきっと真意があるからで、、
ゆ「なぁは怖がりだから、
ゆうがこうでもしないとどうせ触れては来ないんでしょ?
だから私が求めたときは、なぁも求めていいんだよ?」
ぎゅっと私の胸元の服を掴んで、
舌っ足らずな彼女がそう言う。
酔っていても、どんなに恥ずかしがり屋でも、
臆病な私のためにいつも一歩目を踏み出してくれる彼女。
ほんとに出来た女性だと、泣きそうになりながらも、
私は恐る恐る彼女の腰へと手を添えた。
ゆっくりと近づく距離に、爆発しそうな心臓は
彼女も同じのようで
お互いの心臓の音はうるさいくらいに耳に響いて
ゆ「なぁに全部上書きして欲しいの、、
忘れさせて全部、
なぁの記憶で埋めさせて」
その声はやけに彼女の心臓の速さと共に
儚げな音を立てた。