魔法はなくても…甘いキス 3話
深い眠りから…キョーコの意識が目覚めへと上っていく。
愛し合った名残のせいか、キョーコは目覚めてもぼーっとしていた。目を開ければすぐ横に、眩しい程の蓮の笑顔があった。
「おはよう、キョーコ」
蓮の清々しい笑顔に、キョーコは笑みを返しながらも身体に感じる気だるさに小さく溜息を吐いた。
「おはようございます、蓮」
「恋人なんだから、おはよう…でいいよ」
キョーコは恋人が…久し振りに恋人として愛し合えたことで、ご機嫌の笑顔なのが嬉しいと同時に恥ずかしくも感じていた。
「おはよう、蓮。私は恋人ですが……今日の私のスケジュールも伝えてありますよね?」
「うん、訊いてるね…」
「私…今日もお仕事あるんですよ? お昼近くだから少しはゆっくり出来ますけど…」
キョーコは自分の身体が予想以上に重くて力が入らない程に感じていた。
昨夜の蓮がいつもより強く求めてくれた事は、キョーコも嬉しい気持ちで応えもした。
ドラマ収録の詰めの中では、二人が恋人になるシーンとしてソフトながらも肌を晒した場面もあって、キョーコにシルシを付けられない期間もあった。
それが理由で蓮が強く求めた夜だったことも、キョーコにも予想も出来た。
それでも「仕事を大切にする」先輩なら考えられる事を、思い付かない筈はないのに…。
「ん? 寝ても疲れは取れなかった?」
「先輩の顔が無くなった敦賀蓮という人は、加減というものを知らないのですか?」
「……どう思う?」
素知らぬ顔で訊き返した恋人に、キョーコは言葉で勝てる気はしなかった。
「…もういいです」
キョーコは首を振って諦めた。
「でも…その…私はまだ……慣れていないですから、その…蓮に…愛されるのは…、恥ずかしいけど嬉しいです。でも……お仕事に…行けないのは困るので…」
「そうだね。よかったら俺が仕事場まで送って行こうか?」
「はっ!?」
その時の蓮の顔を見て、確信犯だとキョーコにもよくわかった。
「……そんな事をしたら、交際を秘密にしているのにバレちゃうじゃないですか!」
「俺は構わないよ。ドラマで共演して、交際が始まる例も結構あるからね」
「…私達は…違いますよね?」
「そうだね。でも距離が縮まったって見てくれる事もあるよね」
キョーコは深い溜息を吐くと、恨めしげに恋人を見た。
「……蓮は、コマシに、タラシに、詐欺師です! その舌は何枚舌ですか !?」
「それでもキョーコの恋人だよ」
涼しい顔で言う蓮の笑みは、詐欺師になっても引かない顔だった。
「もう…好きにして下さい!」
そう言い放ったキョーコは大きく溜息を吐いて、ご機嫌な蓮を見ると…キョーコも苦笑して蓮にそっと口付けた。
「…甘え上手な大きな子犬ですね…」
《FIN》
「コ・ス・メな魔法は?」これにて完結です。
お付き合いいただいた方、ありがとうございました。
ちょっと一休みしながら、読みかけのコミックもありますし、
また罠様探しに行こうかとも思ってます。
ステキ罠士のまじ―ん様。ありがとうございました。