癌に関する情報をネットで収集しようとすると、ステージⅣの癌を克服したとか、色々な体験談を目にします。

有名人となると、ネットでなくても、テレビなどから癌を克服したとかニュースが流れてきます。

夫の癌が発覚した時は、余命あとわずかと言われながら長く生きた方や癌の克服体験の話を励みに頑張ってきました。

でも、手術は不可能で抗がん剤治療しか選択肢がなく、しかもその薬も長くは効かず、だんだん積極的な治療ができなくなるにつれ、癌を克服した人の体験談を見ると、「素晴らしい」と思う反面、「私の夫は完治できる治療の選択肢がないのに」と、羨ましさを通り越して妬まくなってしまいました。

治る癌だろうが治らない癌だろうが、闘病の苦しさは同じだし、結果的に治った方も絶望することもあったと思います。だから、それに打ち克つことは誰にもできることではないのはわかっているつもりです。

そもそも一昔前は、癌になったら終わりというイメージだったのが、今は治る確率が高くなりました。ただし、何の癌で何ステージで若いのか高齢なのかなど、患者さんの状況によって全然違います。

それ故に、一昔前だったら皆同じ条件だから気にならなかったのが、今は癌患者の中でも格差が生じて、妬ましくなってしまうんだと思います。

癌の治療で苦しんだ人に対して、そんなことを思ってしまう自分が情け無いです。でも、私より、一番生存率の低い膵臓癌にかかってしまった夫は、もっと悔しいと思っているようです。

もう50代半ばとは言え、まだまだ仕事がしたかったという夫の言葉を聞くたびに、涙が出そうになりました。

精神的にズタズタになっている中、たまたまネットで田端健太郎さんという方の記事を読みました。「治らない人のための情報がない」ということで、最期を迎える直前までのご自分の状況を発信されていました。それを読んで、感動して泣きました。まだ意識がハッキリしているうちに、こういう生き方を夫にさせてあげたかったと後悔しています。

今、私は、だんだん意識が朦朧となり、ほぼ寝たきりになってしまった夫と一緒に病院に泊まっています。もはや「寂しいから泊まって」という夫に付き添うことしか私にはできません。

こんなに私を愛してくれる夫を少しでも安心させてあげたいです。