仕事で時々タクシーに乗ります。

ここのところ、タクシードライバーの質の低下が著しいように感じるのは小生だけでしょうか?

 

ある時に、急ぎの用事でタクシーを使いました。

慌てて乗り込んだら、ドライバーがクルっと振り向いてにっこりと微笑み、

「ご利用ありがとうございます」

若い女性ドライバーでした。20代前半ぐらいでしょうか

急いでいるので、とにかく早く目的地に着きたいのですが、何だか嫌な予感がしました。

 

「ドライバーになりたてで、道に詳しくないのでどうぞ宜しくお願い致します。」 

(しまった。)

「急ぎで丸の内までお願いします」

「あのー、私新卒で名古屋から来たもので、場所が良く分からないのですが。。」 

(うわっ)

「新宿通りから内堀通りで行けるでしょう?」

「通りの名前がよくまだ分からなくて。。。あの丸の内ってどこでしょう?」

「ナビがあるでしょう。それ使って下さいよ」

「通りの名前が良く分からないので、良かったら住所を教えてください」

(目的地の住所まで詳しくしらないよ)

「仕方ないなあ、この通りを右に行って、はいそこで左、あとしばらく真っすぐね xxxxx」

 

結局こんな感じで目的地までいちいち誘導する事になりました。

移動中に電話で用事を済ませたかったのですが、それもできなくなってしまいました。

 

また、こういう事もありました。

やはり急ぎでタクシーを拾って乗り込んだら。初老の男性ドライバーでした。

ベテランそうなので安心して目的地を告げると、

 

「たまたまこの辺りに客を乗せた後なんですが、この辺あんまりくわしくないんだよね」

「ナビがあるでしょう?使って下さい。」

「会社から支給されてはいるんですが、使い方が良く分からなくて。それに老眼で文字がよく見えないんだよね」

「仕方ないなあ、これはここを押してxxxxx」

 

今度はドライバーのために客である小生がカーナビ操作をする羽目に。

アポには結局遅れてしまいました。両方とも、自分が運転を代わっていたら良かったと後悔しました。

 

この人たち、ほんとにプロなのでしょうか?

営業用の2種免許試験がどのようなものかは知りませんが、少なくとも地理と機器の使い方は試験科目に入れるべきでしょう。

もちろん、タクシーのドライバーすべてがこういう人ばかりではないことはご存じのとおりです。特に個人タクシーのドライバーは道に詳しい、信頼できる方が多いと思います。ただ、全体的に道を知らないドライバーが年々多くなっているように思います。問題はドライバーの質にかかわらず、料金がみな同じだという事です。上述の2例の様な場合、むしろ小生がお金を貰うべきだと思うのですが、如何でしょう?

 

 

小生20年ほど前にロンドンに住んでいた事があるのですが、そこには有名な黒いタクシー「ブラック キャブ」が走っています。彼らは例外なく実に良く道を知っています。BBCの番組で以前紹介していたのですが、ブラック キャブのドライバーになるための試験は大変厳しく、口頭試問で狭い住宅地の番地を指定して、そこまでの道順を問われる試験が課されると聞きました(現在はどうなっているかフォロー出来ていませんが)。そのため、試験を受けるドライバー候補はみな、自分のバイクに地図を積み、ロンドンじゅうの道を隅から隅まで走って道を覚えてから受験に臨むとの事です。客を乗せて目的地まで運んでお金を稼ぐのですから、プロとしては当然ですよね。

 

では英国の職業人がみなプロフェッショナルかというと、そうでもないようです。

例えば美容師は反対に日本と比べ物にならないぐらい低レベルです。

 

小生英国でヘアカットに行くのが嫌でした。どんなスタイルにされるのか、怖かったからです。

済んでいた家の近くにあった、外装からみてファッショナブルなお店に入ってみたのですが、恐ろしい腕前で、「髪」を切るというより、「紙」を切っているような手つきなのです。耳の周りやもみあげなど、我々が見慣れている、櫛を髪に通しながら段々に長さを調節して切るといったものでは全くなく、単に2次元的に「紙」細工をするように耳に沿ってチョキチョキと切り込みを入れる感じなのです。

 

地元の美容室に行くのは凝りて、多少遠くてもフランス人が多く住む地域のフランス人美容室が切っているところや、日本人美容師が切っているところへ行くようになりました。

 

聞くところによると、英国には理容師や美容師の資格制度がないそうです。

資格がないので、誰でもその日から開業できるのです。評価は市場が決める事になり、評判の悪い店が淘汰され、良い店が残るという事の様です。

 

英国でのタクシードライバーに課されている厳しい資格制度と、なんでもありの理美容師の状況は、日本とは全く対照的で興味深いですね。

日本の理美容師の皆さんは本当に腕が良いと思います。厳しい資格制度に裏打ちされた訓練と日々の鍛錬の賜物です。日本のタクシードライバーについても、そうした厳しい資格制度にするか、反対に下手に保護したりせずに競争させ、市場に淘汰されるようにするか、どちらかにするべきでしょうね

 

 

今回はプロフェッショナリズムについてちょっと考えてみました。