翌日、先生に外出許可をもらいRに会いに行くことにした。


 面会は14時から。昼前に夫が迎えに来てくれた。

 

 K病院までは高速をつかって1時間強。

 私の傷口を気遣って、助手席にはフカフカの座布団が敷かれていた。


 そして一枚の紙を差し出した。

 そこにはRの病気について夫なりに解りやすく図を描いていた。


 車中で紙を見ながら夫から説明を聞く。


 ・Rは上の食道と胃がつながっていない。

 ・胃からの食道は気管につながっている。

 ・気管につながった食道を切り離し、上の食道と繋ぐ手術をする。

 ・幸いにも他の合併症はない。これは珍しいこと。

 ・食道と食道の距離が2cm以上だと手術できないが、幸い1cmほどだった

  ため手術することができた。

 ・手術は成功した。傷口がきちんとくっつくまで、Rは動けないように薬で眠らされている。

 ・様子を見て問題なければ10日くらいで薬をやめ目をさますだろう。


 夫はしきりに「大丈夫」を繰り返していた。

 私に心配かけないように精一杯気を使いながら説明していた。


 病院について私はRに会えるのにうれしい気持ちと怖い気持ちが交差していた。

 そんな私に夫は言った。

 「正直、Rを見たらショックを受けるかもしれない。ちょっとだけ覚悟して」


 NICU、私はそのときまでその存在を知らなかった。

 面会は両親のみ。ジジババすらダメ。

 夫に言われるまま荷物をロッカーに入れ、手を洗い白衣を着てNICUに入る。


 案内された先には、何がなんだかわからない管だらけのR。

 赤ちゃんなのにダラリとした手足。

 素っ裸にタオル、オムツもしていない。消毒薬のせいか肌の色も黄色い。

 あまりにも衝撃的でショックで涙が止まらない。


 なんで産まれて早々こんな目に合わないといけないの?

 本当にちゃんと目を覚ますの?痛くないの?


 いろんな感情が湧き出て涙が止まらない。


 看護師さんがイスを持ってきてくれる。

 私の横で一緒に泣いていた。


 ここにいるBabyちゃんたちは色々な事情をかかえ、そのパパママたちは

私たちと同じように辛い思いでここに通うのだろう。

 その様子を毎日のように見ている看護師さんたちもきっと辛いのかな?


 担当の先生がやってきた。

 とりあえず御礼を言う。

 先生達は私に心配をかけぬよう、でも「大丈夫です」って言葉は絶対言って

くれない。でも、不安なことには精一杯答えてくれる。

 Rの手術をしてくれた先生がこの人たちでよかった、って心底思った。


 この日、会えないにもかかわらず、両両親が来て待合室で待ってくれていた。

 本当にありがとう。そして心配かけてごめんなさい。


 帰りの車の中で緊張の糸が切れてしまったのか、嗚咽がとまらない。

 もう、何が悲しいのかすらわからない。

 でも、泣くのはこれで最後にしよう。


 今、私に出来ることは快復しRにいつでも与えられる母乳を搾乳し病院に

届けること。


 よし、頑張るぞ!! 心に誓った。