現存する最古の「萌え」を探して(第1回) | 語源blog

現存する最古の「萌え」を探して(第1回)

 以前から「(今日的な意味での)“萌え”という言葉は、いつから使われるようになったのでしょうか?」、という質問をよく受けるので、何とか調べてみたい!とか思っていたのですよ。

 んで、ネットで調べた感じでは、パソコン通信上では、1990年代はいめに

・『恐竜惑星』というアニメのヒロイン・鷺沢萌
・『太陽にスマッシュ』という漫画の主人公・高津萌

あたりに対して初めて使われた、という説が有力なのですすが…(参考リンク:メイプルタウンネットワークでの「萌え」の用例を探る

 パソコン通信普及以前にも、アニメ雑誌・同人誌方面で使用されていた、という説も根強いのですよね。で、雑誌起源説の中でも、

雑誌『ふぁんろーど』誌上において、『イデオン』という作品に登場するB級キャラ、ファントム・モエラに対して使われた

 という説がけっこうあったので、「これは大昔の『ファンロード』を漁って、真相を明らかにするしか!」とか思いまくり、国会図書館方面へ向かいまくったのですが……残念ながら、国会図書館には初期の『ふぁんろーど』は納品されていませんでした。うーん、国会図書館といっても、すべての本があるわけではないのですねぇ。

 で、『ふぁんろーど』は古本屋には置いていないし、ヤフオクではなんかでは初期のものが一冊2000円くらいするし……などと難関連発だったので、「この本方面からの調査をあきらめようかなぁ?」とか思っていたのですが……

 先日、2ちゃんねるの「もしこの世にガンダムがなかったら」というスレッドなど読んでいたところ

ガンダムが存在しない

『リアルロボット』系アニメが生まれない

ロボットアニメ平坦化

トミーノがイデオンを生まない

ふぁんろーどがイデオン特集で 『萌え』の誤植をしない

『萌え』の概念自体存在していない


という、興味深い記述を大発見!ってことで、「もしかしたら、この「イデオン特集」が載っている『ふぁんろーど』をゲットすれば、最古の“萌え”の真相が分かるかも?」とか思い、その特集が掲載されていると思われる『ふぁんろーど(1982年7月号)』など購入したのですよ。で、頑張って読み込みまくってみたのですが……この号の何回読み返しても、「萌え」という誤植は発見できなかったよ(笑)

 っか、よくよく考えてみると当時はワープロなど使わず、手書きの原稿から写植屋さんが活字を拾って本を作っていた(誤変換という概念はなかった)ハズなので、ぜんぜん違う形の「燃え」と「萌え」と間違えるってのはありえないよなぁ、とか思いました(ま、その代わりに、原稿の字が汚いと「ハンドルを右に」が「インド人を右に」となるような、伝説的な誤植も生まれたりするのですが)。


 ただ、この1982年5月号の『ふぁんろーど』では、「萌え」という表現こそ発見できなかったものの、ペンネーム・羽富萌さんという投稿者の方が、「イデオン用語集」で活躍しておられるのが確認できるのですよね。

 で、彼女、どうやら『イデオン』に登場するファントム・モエラの大ファンだったみたいなのですね。ということは、

ファントム・モエラ → ふぁんとむ・もえら → 羽ぁん富・萌えら → 羽富萌

というのがペンネームの由来なのでしょう。ということで、彼女のペンネームを覚えていた人が、現在、一部で主張されている


「萌え」の起源は『伝説巨人イデオン』のファントム・モエラに由来


という説を唱えているのだと思うのですが……おそらく、その当時の羽富萌さんと思われる方のプロフィールをWebで拝見させていただいたところ(リンクはしません)

昔は羽富萌だったんだけどね。変えてよかったわ、萌だもんねえ…(笑)

だそうで。どうも、彼女自身、「萌え」という言葉に好意的な印象を持っていないところをみると、イデオン全盛時に「モエラ萌え~」とかいう表現が流行っていたとは考えにくいなぁ、とか思いました。


 ということで、今回は「‘萌え’は『イデオン』起源説は怪しいかも?」という中途半端な結論ですが、どこかで昔の『ふぁんろーど』を見る機会があったら第2回を行います、ってな感じで。