★物語の進行とともに、「そういえば、この方の作品にはリアリティーがあったな」と、ある舞台が浮かんできた。寺島しのぶと内野聖陽の絡みだった。「禁断の肉体」のワンシーン。半裸の寺島が両足を大胆に開き内野が激しく腰を動かしていたー。昨日(17日)、東京・渋谷のシアターコクーンで上演中の「そして僕は途方に暮れる」を拝見。ニート?の青年は同棲中の女性(前田敦子)の部屋で一日中スマホをいじっている。とうとう女性に三行半を突き付けられ、青年は荷物をリュックに詰め込んで出ていく。そして、学生時代の友達や先輩の家、果ては姉、母を頼って居候の旅を繰り返す。殺人など大きな事件が起こることもない。どこにでもある日常が描かれるだけだが、実に説得力があるのだ。芝居ならではの「嘘」がないのだ。食事だって口パクではなく本物を口にほおり込む。それより何よりリアリティーを感じるのがセリフだ。歌舞伎のような大仰なセリフ回しとは逆に自然体だ。さらに文体にも気取りがないのだ。青年を演じたのはジャニーズ事務所の藤ケ谷太輔。最後はひとりぼっちになってしまうダメ男を見事に体現していた。作・演出は鬼才の三浦大輔さんでした★(随筆家・夢野幸大)