{第80回・アカデミー賞(2008年)//主要賞・結果)}
<詳しい結果の知りたい人は、Oscar.com.へ
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PICTURE. {WINNER} No Country For Old man.
DIRECTER. {WINNER.} Coen Brothers.(No Country For Old man.)ACTOR. {WINNER} Daniel Day Lewis.(there will be blood)
ACTRESS. {WINNER} Marion Cotillard.(La Vie En Rose)
SUPP. ACTOR {WINNER} Javier Bardem.(No country for old man.)
SUPP. ACTRESS {WINNER} Tilda Swinton.(Michael Clayton)
ORIGINAL SCREENPLAY {WINNER} Diablo Cody.(Juno)
日本時間では、今朝あった2008・アカデミー賞。レース結果は、以上のようになった。WOWOWOで、授賞式・生中継を見たが、今回は僕なりのオスカー・レポートを書きたい。
俳優部門の4賞。僕の願いは、主演女優・マリオン、主演男優・デップ、助演女優・ブランシェット、助演男優・ハヴィエル、だった。半分の願いは叶えられたワケだが、主演女優は、先に助演でブランシェットが獲っていればの条件つきだった。なので、不満タラタラの結果となった。
{女優革命・ブランシェット}
ケイト・ブランシェットは、主演・助演2つにノミネートされていた。16世紀のイギリス女王、エリザベス1世と、20世紀のロック・伝説、ボブ・ディラン。この180度異なる2役への勇敢なチャレンジと成功。それは女優の歴史全体で見ても、画期的だ。
ゲイや性同一障害者、またイメージと正反対の役やキワモノ的役柄。それらを、女優が演じた例はこれまで数多くある。しかし僕は、女優がそのまんま男を演じた例を1つも知らない。
ケイトがボブ・ディランを演じた映画。それは、数人の俳優が競演的に、ディランを演じるという構想。そこで彼女は唯一の女優なのに、皮肉にも1番ディラン本人に迫った演技をしたと大評価されている。
今回のオスカーの司会、ジョン・スチュワートも授賞式中、そんな彼女に引っ掛けたジョークを言った。彼女があまりに多彩な役を演じるので、何かの映画の犬の映像を見せて、これもケイトが演じてると言い、その後には、「実は司会の僕も、ケイトが演じてるんです。」と付け足した。それは、この夜の彼のベスト・ジョークだった。
彼女は一般的に正統派の女優と見られてるが、若い時にはジプシーのようにアフリカ大陸を長年、1人で放浪したことがあるという。とにかく、この時代とジェンダーを超えた、ブランシェットの素晴らしい試みには、絶対に賞を送るべきだった。
{キュートなマリオン、期待薄なコーエン兄弟} にしても、主演女優獲った、マリオン・コテヤールにも好感が持てた。“TAXI”シリーズのヒロインで有名な彼女だが、僕には“ロング・エンゲージメント”での演技が強烈な印象を残している。復讐に駆られる娼婦の怪役を体当たりで演じてて、圧倒的な輝きがあった。 フランスではベテランだが、ハリウッドでは新人。というワケで、受賞スピーチもウイウイしく、見てるだけでハッピーになった。
作品賞はメディアの予想通り“ノーカントリー”で、監督賞はそのコーエン兄弟。僕もかつては彼らの大ファンだった。ビッグ・リボウスキーは、僕のNO-1コメディー映画。しかし、それ以降、この兄弟は大昔のアメリカ映画にオマージュを捧げるような古臭い映画ばかり撮っている。今回の映画もそれ系のもんだというのが、予告編だけで分かる。
ノーカントリーは、去年のカンヌ映画祭のコンペにもかけられたが、こちらでは1つの賞も与えられなかった。カンヌの方が明らかに良質の映画を選ぶ力があるので、オスカーより、こっちの評価を信頼すべきだろう。
{残念なデップ、お見事のハヴィエル}
主演男優はデップに獲って欲しかった。日本には彼のファンが多いので、共感する人は多いだろう。この20年、彼ほどうまく、ハリウッド大作とインディーズ映画の間を渡り歩いてきた俳優は他にいない。だが、俳優賞ではトータルの功績より、その1つの映画だけの演技で評価される事が圧倒的に多い。受賞したダニエル・デイはまさに1本集中型の名演を見せている。一方、デップの作品はミュージカルで、アカデミー委員にはそれ嫌いが多い。
助演女優は、先にも書いたようにブランシェットが獲るべきだった。ただ1度受賞歴があるのが引っかかったのか。また、受賞したティルダ・スウィントンは、オスカーに値する名演を過去、数々の映画で見せてきたので、しょうがないとも思える。
助演男優は、ハヴィエル・バルデム。僕は彼のスペイン時代、ハモンハモンの頃からのファンで、受賞はホントに嬉しい。しかし、まさかその映画で、ペネロペのオッパイをペロペロなめてたエロ・マッチョが、こんな名優になるとは思えなかった。
「夜が来る前に」ではラディカルなキューバ人作家。「海を飛ぶ夢」では全身麻痺の老人。で、今回は冷酷な殺人マシーン。ブランシェットにも負けない多彩な演技歴の持ち主で、受賞は文句なし。
{元ストリッパーの脚本賞!}
ブランシェットの惜敗と共に、大きな印象を与えたのは脚本賞だ。というか衝撃だった。
“JUNO”を書いた、Diablo Cody, 彼女が受賞した。Q.タランティーノのパルプ・フィクション革命以来、脚本賞はインディーズ映画の脚本家に送られるようになった。それ以来、ソフィア・コッポラ、チャーリー・カウフマン、といった素晴らしく個性的なライターたちが受賞している。
で、今回はその極めつけという人が受賞した。その名は、ディアブロ・コーディー。彼女は元ストリッパーという経歴がある。僕は、司会のジョンが授賞式・冒頭でそれ関連のジョークを言ったことで知った。
で、そのディアブロ嬢。
オスカーの舞台ではストリッパーの過去を隠すかと思いきや、その真逆。受賞の名前が呼ばれると、
ストリップのステージ衣装そのまんまなカッコ、あそこまで切れ上がった超ロング・スリットの豹柄系ドレスをなびかせて、堂々登場。二の腕にはストリップ・キャラの巨大タトゥー。第1声は、「What is happening? This is for the writers.(何が起こったの? これって脚本家の賞よね。)」
僕も長年、オスカー授賞式を見てるが、ここまでキャラ立ちした人の受賞は他に例がない。
まさにストリッパーの星。 この勇姿には、過去のストリップ仲間たちは涙を流し、世界中のストリッパーたちも希望をもらったことだろう。にしても、アメリカン・ドリームはまだ健在。どこの誰であろうと、ガンバって何かをやり遂げれば栄冠が与えられる。ディアブロもすごいが、そんなアメリカもすごい。
{政治的対立をあおらなかった、オスカーピープル}
オスカー授賞式・全体はどうだったか。司会のジョン・スチュワート。今年は大統領選挙があるため。ポリティックなコメディアンが選ばれたワケだ。僕は彼のCNNのコメディーショウの大ファンだ。しかし、全体的に政治色は薄かった。というか、ワザと薄めてるようだった。 また、それが賞レースにも少なからず反映されていた。長編ドキュメンタリーの最有力候補だった“SICKO”の、マイケル・ムーアが賞を逃した。また、同様に民主党の熱心な支持者、ジョージ・クルーニーも、最有力候補ながら主演男優賞を逃した。
前回4年前の授賞式では、華氏・9.11のムーア監督を始めとして、反ブッシュ・反共和党の色で塗り固められていた。 しかし、それがアメリカの分断をますます助長し、大統領選を接戦にして、結果、民主が負けることになった。今では民主の敗因の1番の原因として、こういう強硬対立姿勢が上げられている。
今回、民主の大統領候補・オバマはその理解から、超党派的で融和的に振舞っている。僕の目には、今回の授賞式も、オバマと同じ路線を取ったように見えた。
司会のジョン・スチュワート。 彼もリベラル派で、最初のスピーチで民主党支持の声を上げたが、共和党非難はしなかった。むしろジョークは民主側に向けられた。
1度、夫のことを忘れた痴呆症の老女を演じた女優に引っ掛けて、ヒラリー・クリントンがぜひ見たい映画だと言ってみたりした。僕にとって、それはこの夜、2番目に爆笑させられた彼のジョークだった。




