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2005-12-25

(story) クリスマス(かあさまの秘密)

テーマ:* ショートストーリー

いつからかだっただろう。。
クリスマスの夜にかあさまは私を前に決まって昔話を話してくれた。。
それはかあさまの小さな頃の話や世の中の話だったり、それが私が大きくなるにつれ、かあさまの恋の話を聞かせてくれるようになった。。
かあさまの作ってくれたクリスマスの料理とプレゼント。。そして、必ず12冊の新しい本をくれたっけ。。
私達はとっても仲が良かった。。
私には世の中で言うところの父親がいなかったから、かあさまはたった一人で私を育ててくれた。
いつもいつも忙しいかあさまだったけど、クリスマスには必ずお休みを取ってくれて私と一日中過ごしてくれた。。
でも、いくつかのかあさまの恋物語に私のとうさまの話は何故か出てこなかった。。

あれは私の心に一人の男性が現れた年のことだった。。。
私はかあさまにクリスマスの夜にデートをしたい、と告げた。。
かあさまは、あなたもそういう年になったのね。。と言うだけで反対、しなかった。。
正直、私の頭の中には彼のことでいっぱいで、かあさまの恒例の話などすっかり忘れていたほどだった。
クリスマス・イヴの夜、かあさまはいつもクリスマスの時に出すようなご馳走を食卓に並べた。。
私は少し、心が痛かった。。
その晩、私達はたわいも無い話をしながら夕食を取った。。
でも、かあさまの恋の話は何故かなかった。。かあさまは怒っちゃったのだろうか。。。
私は少し心配したけど、かあさまに振るでもなく、食事を済ませてしまった。。。

次の朝、目を覚ますとベッドの横に白い封筒が置いてあった。。私はバイトがあったので、そのまま封筒をバックに入れ、プレゼントの入った紙袋を持つと、朝食も取らずに家を出た。。
なんとなくかあさまの顔を見られなかったこともあったんだけど。。。
本当はかあさまの封筒がとっても気になって仕方が無かった。。だけど、見られずにいた。。どしてだろう。。。

バイトは時間通りに終わった。。
彼との待ち合わせまで一時間、間があったので、私は一人で喫茶店に入って時間をつぶす事にした。。
そしてかあさんの手紙を読むことにした。。。


とーこへ
大きくなったね、とーこ。。
あなたも一人前に恋愛するようになっちゃって、かあさま、嬉しいけど、寂しい気もしています。。
でも、今迄、とーこにはかあさまの話、たくさんしてきたからきっといい恋愛できる、ってかあさま、信じています。。
一人前に恋愛するようになったとーこへ、最後のアドバイスしようかな?
とーこもこれから色んな男性に出会うと思う。。その時に役に立つといいかなって思ってね。。
かあさまの男性論を書く事にしましょう。。。

かあさまは拘りを持った男性が好きです。。
何かに夢中になったり、真剣になれるものを持った男性が好きです。。
男性って言うのは社会に出て仕事が忙しくなると仕事だけになっちゃう人がどうしても多い。。
そうしているうちに、どうしても自分の中での占める割合が多いから、仕事での立場から自分を解放出来なくなってしまう。。。
会社では上司で、部下がいても、その人、個人になった時に、そんなものは何にもならないのに、切り換えが出来なくなっちゃう人って案外、多いんだよ。

だけどね、何か他に夢中になれるものを持った人は自分をすぐに解放できてる人だとかあさま思うの。。
よく「男はいつまでも少年の心を持ち続けられる」って言うよね。。
だけど、持ち続けられる人、かあさま、そんなに知らないです。。
この持ち続けられる人こそ、拘りを持った男性なのよ。。

ミニカーやプラモデルに夢中になっちゃっている男の子っているでしょ?それとか、夢中で外で遊んでいて、気がついたら真っ暗になっちゃって、怒られるんじゃないか、ってビクビクしている男の子、遠くに行き過ぎて迷子になっちゃって、心細い気持ちや涙を必死にこらえる男の子。。
そんな男の子がそのまんま大きくなっちゃったような人、かあさま知っているの。。

かあさまはその人がかあさまを目の前にして、お話してくれるの聞いているのが大好きだった。。
一晩中だって、かあさま、その人の話、聞いていたかったわ。。
目を輝かせて、一生懸命話をしてくれるその人にはかあさま、会社の歯車とか、組織の一部とか、そんなもの、何も感じなかったわ。。
でも、決して、お仕事を蔑ろにしていたわけじゃないのよ。。
お仕事はお仕事として、立派にやっていたのは言うまでもないわね。。
かあさまはその人のこと、とっても愛していたわ。。その人もかあさまのこと、とても愛してくれた。。。かあさまは幸せだった。。。

これから書くことはとーこにそうしろ、ってことじゃないの。。それは誤解しないでね。。

かあさまはとっても愛しているその人と結婚することを選ばなかった。。
とーこがかあさまのお腹の中に生まれた時、かあさま、一人で育てようって決めたの。。
かあさまは器用な人間じゃないから、あなたの母親でいながらあなたのとおさまの妻にはなれない気がしてね。。
とおさまの前ではずっと女でいたかったの。。
かあさまのわがままのために、あなたにとおさまと呼べる人、いなくしちゃってごめんなさいね。。
でも、かあさまはあなたの母親の前に自分、ってのがあったのよ。。
その自分を捨てられなかった。。
そして、もう一つ、かあさまはあなたのとおさまを家庭に縛りたくなかったの。。
とおさまのきらきら光る瞳をかあさまのせいで、輝きを失わせたくなかったの。。
男は家庭を持つとやりたいことの半分も出来なくなる。。
家族を養うために仕事をして、したいことも我慢して、でもね、普通はそれも、自分の作った家族のためならって思うものなのよ。。そして、それを幸せに感じる男性も多いの、それが普通なのよ。。
でも、かあさま、とても愛したその人との間の子、神様から授かった変わりに夫を持つことをやめたの。。
心から愛して、尊敬できる素敵な人の遺伝子、かあさまが未来に受け継げることが嬉しかったぁ~

その人にもずっと自由でいてほしかった。。
妻や子供達の為に生きるのではなく自分の為に生きてほしかった。。
彼を愛していたから、彼を一番よく知っていたから、彼をずっと愛し続けたかったから。。。
家族にはならない代わりに、それ以上のもの、かあさまはその人から貰った、って思っている。。

かあさま、今でも、勿論、あなたのとおさまを愛しています。。
そして、彼もかあさまを愛してくれています。。

結局、彼は家庭を持たなかったの。。
かあさまはそれがわかっていたの。。
今でも、彼の目は誰よりも輝いているわ。。

かあさまは自分の意志を通すことで、あなたに父親を持ったことが無い子にしてしまったけど、でも、あなたのとおさまを世界中の男性の中で一番愛しているの。。
あなたはそんな愛の中、生まれた子なのよ。。
クリスマスにいつも渡していた本、あれはとおさまからのあなたへのプレゼントだったの。。。

でもね、とーこ。。世の中には一生愛し合いながら夫婦として、父、母として、立派に家庭を持ち続けて幸せな人もいくらでもいる。。
それは忘れないでね。。
かあさまととおさまは出来なかった、ってだけだから。。。

かあさま、あなたが独立したら、彼の側に行こうと思っています。。
でも、間違えないでね、決して即しているわけじゃあないんだからね。。
とーこがどんな形でかあさまの所から巣立っても、かあさま、あなたが決めたことなら反対、しません。。
だって、とーこは彼とかあさまの子だから。。。

とーこ。。本当に愛せる人と結ばれなさい。。
あなたが本当に愛せる人を見つけなさい。。
その人と結婚したいならそれもいい。。
かあさんのように生きるならそれもいい。。
でも、女として生まれたからには、一生に一度は死ぬほど愛せる男を全力で愛しなさい。。

あなたの人生です。。人の迷惑にならなければ良いのです。。
好きなように生きなさい。。
あなたはそれができる子です。。


かあさま。。。私は女なんだね。。
かあさまのように強く、自分の意志のために生きられるかどうかまだわからないけど、私は私でやってみるよ。。
かあさまのように、一生涯、愛せる男にめぐり合うために、私もいい女にならなくちゃ、だね。。
彼が私の一生愛せる男かどうかわからないけど、今は彼が大好きです。。
とおさまのいる暮らしがどんななのか、私にはわからないけれど、私はいつもかあさまの大きな愛を感じていたからとおさまが居ない暮らしも平気だった。。
それに、私にはとおさまがいないわけじゃなかったんだね。。
クリスマスにかあさまがくれたプレゼント、あれも、嬉しかったけど、12冊の本、とおさまだったんだ。。
かあさまがお仕事で帰りが遅い夜、私は本を読んで過ごすことが多かった。。
私の本好きはとおさまのおかげだったんだね。。。

もうすぐ彼が来る。。
かあさまと一緒じゃない初めてのクリスマスだね。。
かあさま、私、幸せです。。。


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2005-12-25

(story) casa-M もみの木(2/7話)

テーマ:* ショートストーリー

* もみの木 *

夏には活気のあるこの街も冬の厳しさに来る人も滅多にいない。
ところが、クリスマスだけは違う。
雪はさほど多くないこの街にも、時折白い物が舞い、ホワイトクリスマスの趣は充分に果たしてくれる。
都心から二時間ちょっとの立地条件でホワイトクリスマスを楽しむ別荘族もいるようだ。
夏には食料を買い込む別荘族の人たちも、この季節の一日二日は外食をするようで、かき入れ時と言っても良い。
毎年、クリスマスシーズンになると特別のメニューをお出しするのが開店以来続けている。
今年はタンの塩釜焼き。
丸々一本のタンに下味をつけて、あら塩、卵白、香草を混ぜた塩で塗り固め、オーブンで焼くのだ。
冷たくても暖かくしてもどちらでも美味しい一品だ。
ここは、陸の真中なので、中々、良い海の幸にめぐり合うことが出来ない。
どうしても山の幸に頼るような食材になってしまう。
イブとクリスマスには七面鳥を丸ごと一羽焼いて、サービスでお出しする。
クリスマスシーズンにお出しする特別メニューには七面鳥の胸肉のソテーにドライフルーツと赤ワインのちょっと甘みと酸味のあるソースをかける一品。
デザートのケーキもドライフルーツとお酒をきかしてちょっと寝せたフルーツケーキに生クリームを添える。
季節柄を生かして、やはり保存食を上手に使って、冬の趣を感じていただくのも、家庭料理をおだししている醍醐味ではないかと思っている。
この時期によく出るのがロールキャベツ。
どんな味付けにも馴染んでくれるロールキャベツは和風、中華、イタリアン、コンソメ味と数種類お出しする。
ちょっと手間のかかるロールキャベツは家庭の味であって、最近の食卓から消えかけている一品のようでご注文下さる方が多い。
家庭料理だけあって、4種類のロールキャベツにそれぞれ懐かしさを感じるようで、どれもやめることが出来ないのだ。

このロールキャベツを好物にしてくださるお客様の予約が今日、入っている。

毎年、この時期予約をしてくださり、仲良く二人してロールキャベツを食べながら、楽しそうにお喋りをしていらっしゃる。
もう何年になるだろう。。どこにお住まいでどんな関係なのかなんて知らなくても良いこと。
自分と同じ年頃の仲の良いカップル、で充分じゃないか。
まもなくいらっしゃる頃だ。

カウベルの音とともにあの二人がいらっしゃった、と、思った。

「いらっしゃい。。」

女性が一人で戸口に立っている。

「あの、二人で予約したんだけど今日は一人なの。。いいかしら」

「はい、どうぞ、お入りになって。。お席の方へ」

「あの、あそこじゃなくってカウンターがいいんだけど、いいかしら」

女性の顔が今までのどんな寒い夜よりも白かった。。

「ええ、勿論ですとも。。どうぞ、ここがいいかしら、暖炉の側で暖かいわ」

「ありがと。。そうさせていただくわ。。」

女性のコートとストールを受け取り、コートかけにかけると厨房に入った。。

「これ、身体が温まるわ。。お好きかどうか。。」

「いい香り。。これはなに?」

「ミルクティ、チャイって言うの。。フェンネルやシナモンなんかを紅茶の葉と一緒に煮出しているの、お気に召して良かったわ。。」

大きめのマグを両の手ではさんですする女性の頬が少しずつ色を取り戻していった。。

「それをお飲みになったら、お料理、お出ししていいかしら?」

「ええ。。いただくわ。。お願いします」

私は厨房に入ると女性の予約していたロールキャベツを温めた。
女性はくるりと椅子を回すと、マグを持ったまま窓を眺めている。
お連れの男性を待つかのように。。

「今日はお飲みになりますか?」

「ええ。。チンザノのドライをいただきたいわ」

「はい、少々お待ちください。。」

いつもと変わらないオーダー、彼女はいつもオードブルを食べながら、チンザノを飲んでいた。。

「はい、どうぞ。。タンの塩釜焼きです、オードブル仕立てで良かったですか?」

「ええ・・美味しそう・・・いただくわ・・・柔らかい、とっても美味しいわ」

彼女と言葉らしい言葉を交わすのは初めてかもしれない。
一人でいらっしゃるお客様でカウンターにお座りになる方は大概、お喋りを欲している方だから、それとなく話し掛けてみたりする。
でも、複数でいらっしゃる方には余計な事を話し掛ける事はまずなかった。
長いこと贔屓にしてくださっているこの女性もいつも二人でいらっしゃるから時候の挨拶やメニューの説明以外、話すこともなかったのだ。

「冬の寒さが厳しいのに、何故、ここでお店をしていらっしゃるの?」

オードブルを2/3食べ終えたところで女性が口を開いた。

「はい、私はここが大好きで。。若い頃からここで食べ物のお店を開くのが夢だったんですよ。。」

「私もここが大好き。。でも、寒さ、半端じゃないわね。。だけど、あの人がここのこの寒さも好きだったの。。」

「あ・・いつも一緒にいらしていたお連れさんですね」

「そお。。私は涼しい夏も好きなんだけど、あの人、人が多いのを好まないのよ。。だからね、冬のここが好きなんですって。。でね、ごめんなさい、人が、どさどさと押し寄せないのに美味しいお料理を食べさせてくださるここのお店もとっても気に入っていたのよ」

お店に入ってきた時からずっと続いていた硬い表情に束の間微笑がさした。

「それはありがとうございます。。ここは私が暮らせればいいんで、特別な宣伝もしませんし、こんなんでいいと思っているんですよ」

「あの人、病気なの。。」

「あらま。。それはご心配ですね。。」

「でもね、どこが悪いのかわからないの、最後に会った時に背中が痛いって言っていたの。。だけど、それから連絡が取れなくなってて。。だから、病気なんだと思うのよ。。でもね、ここの予約は病気の前だったから。。お互い、歳だしね、いつ病気になってもちっとも不思議じゃあないわ。。ただ、ひょっこりきてくれるんじゃないかって、ちょっと期待しちゃったんだけど。。来ないみたいね。そうなの、私たち。。」

女性の頬からまた色が失せ、束の間の微笑みはまた闇の中に消えていった。

「病気は養生したら良くなりますでしょ。またお二人でいらしてください」

「ここのロールキャベツは絶品だわ。。あのね、何度か自分でもチャレンジしてみたのよ、でも、どこか違うのよね。。あの人もここのロールキャベツが大好きだった。。だから、今日は一人でも、あの人の分までいただいちゃおうと思って来たの」

女性は心の隅に影を押し込めているのが、よくわかった。

それでも、ロールキャベツを一切れ、一切れ、口に運んでいる。

「差し出がましいこと言うようですけど。。お二人してここに、もう何回いらっしゃってくれているかしら。。ここは今年、10年を迎えました。。ここが始まった頃からお二人でいらっしゃってくれてましたね。。ご夫婦でないのは、なんとなくわかるものですよ、でも、とっても仲がお宜しくって。。素敵だと思っていたんですよ」

「ありがと・・・なんか照れくさいわね」

「もうすぐ、クリスマス・・・サンタクロースだって、年に1回、プレゼントを持って来てくれるんじゃないですか。。でも、サンタクロースが普段、どんなお仕事をして、どんな暮らしをしているかなんて、誰も知らないでしょう。。だけど、子供も大人もサンタクロースを毎年待ってます。。」

「いいこと言うわね、ここのお料理と同じ位、あなたが好きになったわ」

「あはは。。それは嬉しいです。」

「本当は今日、どうしようか迷ったの、お断りの電話をしようと思って電話も取ったわ。。だけど、もし病気なんだったら、私、あの人の食べたがってたあなたのロールキャベツ、代わりに食べることしか出来ないなって思ってね。。でも、来て良かったわぁ~」

「今日はどうなさるんですか?お泊りですか?」

「ええ・・別荘を開けるのは面倒だし、ホテルを取ってあるの。ここにもタクシーで来たのよ、あとで、タクシー、呼んで下さる?」

「ええ・・いいですとも、なら、ゆっくりしていって下さいな、予約のお客様も入ってますけど、よろしかったらここで一緒に飲みましょうよ」

私もこのご夫人がとっても好きになってきていた。
今夜は久しぶりに話の出来る人と話が出来そうだ。

「嬉しいわ。。ここでお喋りさせていただいて、ホテルに帰ったらこてっと寝るわ。。」

「バタバタとしてますが、そんな時はそこの本でも、ご自由にご覧になっていてね」

「ええ。。そうさせていただくわ、それにしても、あなたと話せて良かったわ、10年になるのね」

「私も嬉しいです。。世の中っていつもプラスとマイナスの引き合いですよ」

「連れがいないことであなたと話ができたわ、これもプラスね」

「そう言ってくださると私も嬉しいです」

窓ばかり気にしていた女性の視線がいつからか落ち着き、ゆったりとしてきた。。

「あ・・降ってきましたね。。雪ですよ。。」


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2005-12-25

(story) 夜光虫

テーマ:* ショートストーリー
* 夜光虫 *


「はい、いいですよ、年末だって、お正月だって、いつだってやっちゃいます、任しといてください!」
「ひとみちゃ~ん、悪いねぇ~助かるよ」
どうせ一人だし、一人で家にいるならここにいた方がいいもの。。バイト代入るしね。。
お金貯めて、アメリカに行くんだもん、クリスマスの1回や2回、どってことない、そおそお。。
今夜はきっと、店長さん、焼きそばパンをくれるだろう、明日の朝食にしよう。。
ここにいると、音楽はただで聴けちゃうし、だけど、今日は来てからずっとクリスマスソングで飽きてきたな。。爪先立ちしてほそ足体操でもやって気をまぎらわそう。。

「ひとみちゃん~悪いんだけど、ちょっと裏、整理頼んでいい?」
「はぁ~~いっ!」

私はこの裏と呼ばれている在庫置き場が嫌いではない。。
商品が出番を待って、ここで鎮座している。
特に、お菓子の整理はたまらなく幸福な気分になってしまう。
自分の好きなスナックはつい前に置きがちで、ついつい贔屓してしまうのだ、いけないね。
箱に少なくなった商品を取り出し、並べ替える。作業は単純だけど、お客さんの少ない時間にさっとやるのがこつだ。
ピンポンピンポン~♪
あ。。お客様だ。。店長いるし、あれ?店長いない。
レジに戻らないと。。。

「いらっしゃいませ・・あ・・・」
「なに?」
「いえ、別に。。。」

私の朝食焼きそばパンが・・・

「843円です、ありがとうございました。。」

焼きそばパン、もうない。。
仕方ない、在庫の整理の続きをしよう。
あ。。こんなところに花火。

「ひとみちゃん~そろそろ終わりだよ~あがってぇ~」
「店長、こんなところに花火が落ちてました」
「あ。。夏のだね、いる?ほしけりゃ持っていっていいよ」
「はい、いただきます」

やったぁ~なんか嬉しい♪

「あ。。それと、店のもんだけど、これ、ちっちゃいけど持ってって」
「わっ!ケーキ、ありがとうございます、いただきます」

焼きそばパン、残念だったけど、花火にケーキ、やったねぇ~でも、家に戻っても出来ないし、帰りに前の浜でやっていこう。
どうせ一人のクリスマス。。花火でもやって景気よく。

「店長、ライター買います」
「あ・・これ、落しもん、使い捨てだし、持ってっていいよ」
「はいっ!ありがとうございます、それじゃ、お疲れ様でした」

その足で浜に行った。
こんな日に浜にいる人など誰もいない。
よぉ~~しっ!風もないし、やるかぁ~真冬の花火大会だぁ~
タンタタタァ~ン タタンタタタァ~ン~♪
あ。。さっきまでのクリスマスソング、頭に焼き付いてるし。
でも、この歌は好きだ・・
わ・・・花火・・・・何年ぶりだろ・・・・
寒いけど、綺麗だ。満天の星空独り占めの花火大会、ついでに独り占め。

タンタタタァ~ン タタンタタタァ~ン~♪
タンタタタァ~ン タタタァ~ンタッタタァ~♪

ん?誰??あ・・・焼きそばパンっ!

「ねぇ、どうしていつも怒った顔しているの?さっきまでみたいに笑うと可愛いのに」
「怒ってなんかいません」
「ほら。。怒ってる、ねえ、クリスマスに一人で花火?」
「店長さんがくれたんだけど、帰っても出来ないし、それでしてたんです」
「俺にもやらせてよ」
「いいですけど。。じゃ、はい。。。」
「あ・・ほんと一本だ。。」
「やりたかったらどうぞ、やってください」
「花火なんか久しぶりだなぁ~しかも、真冬に花火なんかしたことねえよ。。でも、空気澄んでるからかな、きれいじゃん!」
「やっぱ、そう思います?私もなんか違うなってさっきっから思ってたんですよ」

焼きそばパン、悪い奴じゃなさそうじゃん

「そおそお、そおやっていつも笑ってなよ、わらってた方がかわいいんだから」
「おかしくもないのに、笑えませんって」
「そりゃそうだ。。あ~~腹減ったぁ~~」
「焼きそばパン、あるじゃないですか。。」
「なんで知ってるの?あ。。そか、さっき、レジ、やってたんだもんな、アハハ」
「あの、良かったら、ケーキ、食べます?あなたも一人クリスマスなんでしょ?」
「悪かったな、一人で。。。」
「いらないなら、いいんですけど」
「食うよ、いただきます」
小さな丸いチョコのケーキを半分にして手渡した。。
「うめぇ~」

あ・・3口で食べちゃった!

「早いですね。。」
「うめえもんはさっさと食う~」

さっさと食べちゃうと、のこった花火に火をつけて、たいまつみたいに持って走り出した。。おかしな人。。

「ねえ、わおっ!ちょっとちょっと!!こっち、きてみぃ~~~」
「なんですかぁ~?」
「いいから、くりゃ、わかるから、早く、早くっ!」

あ・・・・なに?海に星が落ちたみたい・・さっきの花火の青白い光の色のような・・・あれはなに?

「へぇ~~こんな時期にも見られるんだぁ~~」
「きれぇ~~これ、これってもしかしたら夜光虫?」
「ああ。。別名:海ほたる。。普通は4月とか5月に見えるはずなのに、たまに赤潮の強い日の晩に冬でも見えるって言っていたけど、今年は暖冬だから、こんな時期でも見えるのかね」
「これが夜光虫ですか・・・・きれい~」
「俺さ、別に気にしてなかったんだけど、今日ってクリスマスじゃん、昨日の次の日なのに、今日がクリスマスってだけで、家に一人っつうのがなんとも侘しかったんだけど、いいクリスマスになったなぁ~」
「はい、私もなんかそう思ってました、確かに昨日の次の日なのに、バイトして、いつもと変わらない日常送って、なのに、なんか、なんてんだろう・・・」
「ねぇ、明日はバイト?」
「いえ、明日は休みです」
「そうか。。じゃ、明日、映画にでも行かないか?」
「へっ?だって、今日、初めて話したばかりなのに。。。」
「俺はずっと前から知ってるよ、それに、明日からずっと知ったらいいじゃないか、だろ?」

私だって、ずっと知ってた。。いつも私の焼きそばパン、最後の焼きそばパン、買ってっちゃってた人、だけど、ちょっとかっこいい人って。。

「うん、いいよ。。映画」
「よしゃ~じゃ、明日、映画行って、明日からずっと知り合いになろうなぁ~あっははぁ~」

店長・・・大晦日とお正月、バイト出来なくなるかもしれません、そしたらごめんなさい。。だって、明日からずっと知り合いになるんだもん、焼きそばパンと。


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2005-11-13

(story) casa-M 星と炎 5/7話 

テーマ:* ショートストーリー


里が秋の気配を色濃くする頃、こちらでは既に冬の気配を感じ始める。。
朝晩の空気は冷蔵庫を開けた時の温度のように冷たくなり、そろそろ一冬分の薪を集めにかからなくてはとせかされる。。
家中の暖房を暖炉にしているわけではない。。
ただ、やはりお店の暖は、目にも暖かく薪のいい匂いのする暖炉にしているのだ。。
火は人の心までも暖める。。
ここに来て、胃も心も満腹になって戻っていただきたい。。これが私の望みなのだ。。
10月に入るとメニューも冬物へと換える。。
人の出入りの少なくなる季節に伴ない、作り置きの出来る物はさる事ながら、やはり暖まってもらう料理への衣替えは必須である。。
そして、この時季だから来るというお客様もいらっしゃる。。
そういう方達だからこそ満足していただきたい。。
今夜もそんなお客様の予約が入っている。。


カウベルの音とともに、冷たい外気が店内にすぅ~って入ってきた。。


「やあ。。こんばんは~来ましたよぉ~~」


「いらっしゃいませ。。今夜はよく見えそうじゃないですか。。さあ、どうぞ、暖かい所に」


東京からいらっしゃるこの男性、田所さんとおっしゃって。。casa-Mからそんなに遠くない別荘にいらっしゃる方で、東京では歯医者さんの先生だそうだが、本人はとっくにリタイヤしたつもりで歯科医院は息子さんがお継ぎになり、本人は週に何度かの検診をしている身分だそうだ。。
そして、若い頃から続けていらっしゃる星見のためにこの時季になるといらっしゃるのだ。。


「予定さえなければ、ずっとこっちで星を見ていたいんだが、まだまだそういうわけにもいかなくってね。。」


別荘族の方々が避暑にいらっしゃる時季、この地は空気はいいのだが、星空が見える夜は本当に少ない。。
昼間、あんなに晴れていたのに何故?って言うくらい、4時を過ぎる頃から天気は崩れ、夕立にみまわれる。
夕立のなかった日でも、寒暖の差から作られる雲が夜空を覆い、星は中々、その姿を見せてくれない。。


子供の頃、毎夏、一ヶ月以上、この地に逗留していたが、天の川を見られたのは数度ほどなのだ。。
それだけに、たまに見える星空は降ってくるかのようで、星座の区別がつかないほどの星の数だったのを覚えてる。。


「パパぁ~~!!大変だっ!!!円盤っ!!円盤が飛んでるってばぁ~!!」


ある日、流れ星にしてはゆっくりした動きで、飛行機とは確実に違う物体が飛んでいるのを見つけ、驚いて父に知らせると、父は一瞬考えたような顔をしてこう言った。。


「ん。。残念だけど、あれは円盤ではないよ。。あれは人工衛星だな」


「人工衛星?それってロケット?」


「色々な仕事をするんだよ。。ほら、カーナビやテレビなんかも使うし」


「なんだ・・・円盤じゃないのか。。」


ちょっとがっかりしたものの、父は本当のことを教えてくれたのだ。。
この話を田所さんにしたところ、自分も同じことがあったと話してくれた。。


「自分が星空に興味を持ったきっかけかもしれないな。。」


そお、田所さんはおっしゃってた。。


「宇宙飛行士になりたかったんだ。。でも、家が代々続く歯科医だったからね、そうじゃなくたって、きっと宇宙飛行士にはなれなかっただろうけど、夜空が星が手の届かない輝く星が好きなんだ。。」


リタイヤする年齢の田所さんの瞳が星の話をすると少年のようにくるくると良く動き、きらきらとよく輝く。


「ママさん所が好きなのには勿論ママさんの料理が一番だけど、あそこが好きなんだ。。」


と言って暖炉を指した。。


「火はいい。。何も考えずにぼぉ~っと火を眺めているのが好きなんですよ」


「田所さんがいらっしゃると火の番をして下さるから助かります。田所さんは火の扱いがとてもお上手」


「暖炉はね、ただ、薪をぼおぼお燃したらいいわけじゃない。煙を出さないように、消えないように、ちろちろと大切に焚くんだ。。東京の家にも私が小さな子供の頃に暖炉があったんですよ。父がよくその前でパイプを咥えて本を読んでいました。父は火の燃える音で薪をくべるきっかけがわかっていたそうです。私にも最近、なんとなく薪の声が聞こえるような気がしてきました」


「薪の声ですか?私には聞こえませんね。。私はただ、目で見てくべていますから。私も火が大好きなんですよ」


田所さんは日が暮れるのを暖炉の前に座ってゆっくりと待っているようだ。。


「それじゃあ、ちょっと失礼して、お料理の用意をさせていただきますね」


「はいはい、私は勝手にここで火の番をさせていただいてますから」


今日、田所さんにお出しする料理は、彼がもっともよく注文してくださるタンシチューのセットメニューだ。。
正肉を使わずに、それ以外の部分を使った料理はここの看板。。
なんだかわからないけど、美味しい。。また、食べたくなる、を目指している。


「ここの砂肝は絶品だね、それと、あれ。。ミノのグラタン。。まるでささみのようだ。。」


そう言って頂けると、本当にこの仕事を始めて良かったとつくづく感じる瞬間である。。


「人は昔、北極星や南十字星を目印にして、旅を続けた。。夜空に輝く星の瞬きを道しるべに自分の行く方向を定めたんですね。。ママの店はそんな道しるべの星のような気がしますよ。。
暖炉の炎の輝きは夜空の星の瞬きに似ている。。一度訪れたお客さんが、またここを目指したくなるような。。」


私はある日を境に歳を取ることが、まんざらでもないって思うようになりだした。
若い頃と違い、体力も記憶力も落ちる一方だが、歳を重ねて得られるものがあると気がついたからだ。。
星の輝きは自らを燃やしながら放っている。。
星の輝きは有終の美なのだ。。
燃え続けられる炎はない。。いつかは消えてしまうから、炎は熱く燃えるのであろう。。
だから、炎は人の心までも暖められるのであろう。。


「今、私達の目に届いている星たちの瞬きは、もうとっくに燃え尽きたものもあるんですよ。。燃え尽きたあともまだ輝き続ける。。星って思い出みたいですね」


火の番をする田所さんが独り言のようにつぶやいている。。


「さあ、そろそろこちらへいかがですか?前菜は野沢菜とガツの炒めものですよ、田所さん、お好きでしたでしょ?」


「ん。。やっぱり。。いい匂いがしてきたから。。」


「さっき、調理場の窓から外を見てみましたら、今日はたくさん星が出ていましたよ。。きっといいお写真が撮れますね」


「ここで、ママさんの料理を胃袋に詰め込んだら、寒さなんかへっちゃらですよ。。どら。。いただきましょうか。。」


暖炉の薪はちろちろと燃すのがいいんだよ。。ぼおぼお燃して煙をだしちゃいけない。。
ゆっくり、ゆっくり。。燃え尽きるまで。。。

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2005-08-25

(story) Ivory(象牙色の花)

テーマ:* ショートストーリー
senaka 陽が昇りきらないうちに僕は目が覚めてしまった。。
いつもならば僕の左腕にあるはずの心地よい重みが今朝はない。。
きみはまだまどろみの中にいた。。
うつ伏せになって寝ているきみの象牙色の背が僕をちょっと不安にさせる。。
薄暗い部屋の中できみの背が夜明けの月のように輝いている。。
冷たそうに輝く夜明けの月に僕は触れる。。
何もない僕の部屋の中のたった一つの宝物が手の平の下で息を吹き替えしていくように桜色に変わっていく。。
きみは僕の温度を感じて目覚めたようだ。。
頬にかかった髪が砂丘をかける砂のようにさらさらとくずれ、その奥に僕は東の空にあるのと同じ星をみた。。
きみは日向のネコのように伸びをする。。
僕はおはようの代わりにきみの背にキスをする。。
きみの背のうぶ毛は朝陽に照らされた漣となり、僕を凪の海に船を出す船乗り
へと変える。。
象牙色したきみの背は瞬く間に温度と色を取り戻していく。。
だけど、昨夜僕に見せてくれた吉祥天女はどこにもない。。

きみは中々、僕を受け入れてくれなかった。。
きみの気持ちはわかり過ぎるほどわかっていたのに、決してぼくの前で肌を見せてくれなかった。。
そして僕の誕生日にきみは初めて僕の前で肌を見せてくれたんだったね。。
きみは、
「後悔など何もしていないの。。むしろ自分にとっての誇りだとも思っているわ。
だけど、それをあなたに理解してもらうのは少しむずかしいのではと思っていたの。。でも、あなたを愛しているの、私の誇りをみてほしい。。」
そう言って、着ていたワンピースを脱ぎ、僕に背を見せたんだったね。。
僕の目の前できみの背は一度も陽を浴びた事などないような象牙色をしていた。。そして、きみの恥じらいを表わすかのように、少しずつ桜色に変わっていった。。
僕はきみを抱きしめた。。小さなきみは振るえていたね。。
僕達は長い長いキスの後に結ばれた。。
きみの肌は今まで見た誰よりも木目細かくて吸いつくように美しい。。
まるで昔見たビスクドールのようだったよ。。
冷たいきみの身体が僕の下でどんどん暖かさを増していったね、そしてきみが
人形でない印のように肌に色が注していった。。
その時だったよ。。
僕の目の前に美しい吉祥天女と牡丹の花が現れたのは。。
僕は夢を見ているのだと思ったよ。。
だってさっきまできみの背は象牙色に輝いていたのに、その背に今はくっきりと吉祥天女と牡丹が鮮やかに浮かび上がっているんだから。。。。
驚いたけど、感動だったよ。。そしてきみの誇りは例えようないほど美しい。。

「小さな頃から、この白い肌が嫌いだったの。。だけど、近所に住んでいる彫り師のおじちゃんだけは違ってた。。あたしのこの肌をいつも褒めてくれていたの。。
そして20歳を越えて、その時におじさんが生きていたら、私の肌に刺青を入れさせてほしい、ってずっとずっと言われ続けられていたの。。
20歳を過ぎた時に、なんの取柄もないあたしはあたしなりに色々調べてそしておじちゃんのところに行ったの、白粉彫りを彫ってもらいに。。
白粉彫りっていうのは普段は何も見えないの。。だけど、体温があがったり、興奮した時にだけ、彫ったものが浮き上がって見えてくる彫り方なの。。
桜彫りとも言うのよ。。
ずっと嫌いだった白い肌が、20年たって甦ったの。。
でも、逆に更にその肌は封印される事になってしまったけど。。
彫り物の為に、プールにも海にも行けなくなっちゃった。。
それに、普通はないじゃない?こんな彫り物。。かたぎの女の子には。。
そして決めたの。。もう、この肌は決して陽と人の目に触れさせることはしない、ってね。。」

お風呂上り、きみはどんな思いでその背を姿見に写していたんだろう。。
湖に写る、己の姿に恋をして、水仙になってしまったダフネのように、きみはその背の彫り物を自分だけのものにしようと思ったのかい?
違うね、僕に、早く、見て欲しかったんだろ?

僕は大切にするよ。。約束する。。
きみがその背を守ったように。。僕はきみをきみの背をずっと守り続けるよ。。
僕の前で牡丹の花が咲く限り、吉祥天女が微笑む限り。。
ずっと。。ずっと。。ずっと。。。。



DELICIOUS ! Afternoon tea & Night-cap

↑他にも自作の読み物をご用意しています。興味のある方はGo!



写真素材:防腐剤

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