吉田裕子(塾講師)の国語エッセー | 古典(古文・漢文)・近現代文学・歌舞伎・狂言

”国語を学ぶことで、感受性と対話力を磨いたら、人生はもっと楽しい。”という思いのもと、ブログや書籍で情報を発信する他、定期的に「大人向け古典講座」を開催しています。予備校・高校・カルチャースクールの講師、ライター。


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蜘蛛の糸 (日本の童話名作選)/偕成社



近日、九段生涯学習館にて、子ども向けの「小説の書き方」講座を担当します

読者にきちんと伝わる文章の書き方や、物語を魅力的に彩るキャラクターのつくり方など、小説を書くコツをお話しする2時間講座。お話をする上で欠かせないのが、小説の構成(組み立て)のお話です。

基本の「起承転結」をご紹介するのですが、その際に例の1つとして使わせていただくのが、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』です。

原作は3段落に分かれていますが、今回の講座資料では「起承転結」が分かりやすいように4つに段落分けした上で、あらすじをまとめてみました。

…………


 お釈迦様がある朝、極楽の下にある地獄の様子を見ると、多くの罪人が苦しむ中に、犍陀多(かんだた)という男を見つけました。犍陀多が過去に一度だけ良いことをしたのを思い出したお釈迦様は、彼を地獄から救い出してやろうと、一本の蜘蛛の糸を下ろしました。

 血の池で浮いたり沈んだりしていた犍陀多は、極楽からたれ下がる蜘蛛の糸を見て、「この糸をのぼれば助かる」と考え、糸につかまってのぼり始めました。地獄と極楽の間は何万里もあるので、なかなか到着しません。休憩がてら下を見ると、血の池も針の山もはるか遠くになっていたので、犍陀多は嬉しく思いました。

 続いて、無数の罪人が自分に続いてのぼってきていることに気が付きました。重みで糸が切れてしまうことを恐れた犍陀多は、「この蜘蛛の糸は俺のものだ、下りろ」と喚きました。すると、蜘蛛の糸が犍陀多の所から切れ、彼は再び地獄の底に落ちてしまいました。

 それを見ていたお釈迦様は悲しそうな顔をして、蓮池を離れました。極楽の蓮の花はいつもと変わらず、良い香りをただよわせています。



★お問い合わせやご依頼はホームページまで。間もなく(6/17(水))、新刊『品よく美しく伝わる 「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)が発売です。

★これまでの著書…『美しい女性(ひと)をつくる 言葉のお作法』(かんき出版)、『頭をよくする整理のしかた』、『人生が変わる読書術』、『正しい日本語の使い方』、『大人の文章術』、『源氏物語を知りたい』、『東大生の超勉強法』(枻出版社)など。産業能率大学総合研究所の通信講座『文章力を磨く』のテキストも執筆いたしました。

都内の大学受験塾に勤務する他、NHK学園 市川オープンスクール産経学園 新百合ヶ丘校で古典入門講座を担当しています。また、月1回開催の古典サークル「吉祥寺 古典を読む会」も主宰しております。

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私の中で印象深い文学者を挙げるなら、外せないのが与謝野晶子です。

その作品自体はもちろんですが、情熱やバイタリティに溢れた生き方自体に強く惹かれます。


今日は、そんな彼女の短歌の中から、個人的にお気に入りの作品をご紹介したいと思います。

少し言葉は古いですが、いちいち解説せずともエネルギーの伝わってくるような歌ばかりかと思います。


みだれ髪 (新潮文庫)/新潮社


まずは、彼女の処女歌集であり、最も人口に膾炙した『みだれ髪』から。

もともと妻子のあった鉄幹に恋し、その情熱で大阪から東京に上った晶子の若さの爆発した歌が詰まっています。この頃、20歳を少し過ぎた晶子です。


やは肌のあつき血汐(ちしお)にふれも見でさびしからずや道を説(と)く君 


狂いの子われに焔(ほのお)の翅(はね)かろき百三十里あわただしの旅
※百三十里は大阪-東京間のこと


むねの清水(しみず)あふれてついに濁りけり君も罪の子我も罪の子


春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳(ち)を手にさぐらせぬ


いとせめてもゆるがままにもえしめよ斯(か)くぞ覚ゆる暮れて行く春


道を云わず後を思わず名を問わずここに恋い恋う君と我と見る


病みませるうなじに細きかいな捲(ま)きて熱にかわける御口(みくち)を吸わん


みだれ髪を京の島田にかへし朝ふしていませの君ゆりおこす


清水へ祇園をよぎる桜(さくら)月夜(づきよ)こよい逢う人みなうつくしき


なにとなく君に待たるるここちして出でし花野(はなの)の夕(ゆう)月夜(づきよ)かな

晶子は63歳のとき、荻窪の自宅で亡くなりました(昭和17年5月29日)。晩年の歌を集めたのが、遺詠集の『白桜集』です。

この中には、先に亡くなった鉄幹(昭和10年没)を偲んだ歌が多く収められています。

そちらから2首。


人の世に君帰らずば堪(た)えがたしかかる日すでに三十五日


青空のもとに楓(かえで)のひろがりて君亡き夏の初(はじ)まれるかな



なお、彼女が亡くなった際、詩人の高村光太郎が次のような詩を残しています。



詩・与謝野夫人晶子を弔ふ


5月の薔薇匂ふ時 
夫人ゆきたまふ。 
夫人この世に来りたまひて 
日本に新しき歌うまれ 
その歌世界にたぐひなきひびきあり 
らうたくあつくかぐはしく 
艶にしてなやましく 
はるかにして遠く 
殆ど天の声を放ちて 
人間界に未曽有の因陀羅綱を顕現す。
壮麗きはまり無く 
日本の詩歌ためにかがやく。 
夫人一生を美に貫く。 
火の燃ゆる如くさかんに 
水のゆくごとくとどまらず、 
夫人おんみづからめできせ給ひし 
5月の薔薇匂ふ時 
夫人しづかに眠りたまふ。





★ホームページはこちら。著書(『美しい女性(ひと)をつくる 言葉のお作法』(かんき出版)、『頭をよくする整理のしかた』、『人生が変わる読書術』、『正しい日本語の使い方』、『大人の文章術』、『源氏物語を知りたい』、『東大生の超勉強法』(枻出版社)など)でも情報を発信しております。

都内の大学受験塾に勤務する他、隔週月曜13時に東急セミナーBE古典入門講座を担当しています。また、吉祥寺 古典を読む会も主宰しております(2月15日(日)14時「中宮 定子の人生」)。
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渋谷にあるたばこと塩の博物館で、近代日本文学の有名な短編をもとにした映画、『BUNGO-日本文学シネマ-』の上映会が開催されています。

博物館入館料の「100円」だけで映画を観られるチャンス。この夏で閉館してしまう博物館とのお別れがてら、行ってきましたニコニコ

※正確には、墨田区に移転し、2015年リニューアルOPEN。


BUNGO-日本文学シネマ- BOX 【完全生産限定】 [DVD]/アニプレックス


上映されている作品は、「檸檬」「高瀬舟」「グッド・バイ」でした。


「高瀬舟」では、成宮寛貴さんが、弟殺しの罪人(とされている)喜助を演じています。凛々しい顔立ちで、複雑な表情を演じ切っていて見入ってしまいます。

基本的には、原作に忠実なストーリーでしたが、いくつか足されている場面がありました。

たとえば、喜助たち兄弟と一緒に働いていた男が移動途中の道で行き倒れてしまうシーンや、喜助が「飲めばたちまちに病気が治る」というあやしい水を縋り付くようにして買うシーンが追加されていました。より、貧しい者たちが搾取され、働けど働けど報われない様子が浮き彫りにされていたように思います。

以前「高瀬舟」を読んだときには、安楽死/自殺幇助の問題の方が印象に残っていたのですが、これを観てから改めて読んでみると、金銭や貧困に関しても、しっかり紙幅が割かれているのですね。

喜助を送っていく同心の庄兵衛も、

「心の奥には、こうして暮らしていて、ふいとお役が御免になったらどうしよう、大病にでもなったらどうしようという疑懼が潜んでいて、おりおり妻が里方から金を取り出して来て穴うめをしたことなどがわかると、この疑懼が意識の閾の上に頭をもたげて来るのである。」

と、不安を漏らしているのでした。


山椒大夫・高瀬舟 (新潮文庫)/新潮社



上映会に話を戻すと、1作目の「檸檬」は沈鬱な雰囲気に呑まれて苦しく、3作目に上映された「グッド・バイ」の山崎まさよしさんと水川あさみさんの掛け合いは、とても楽しく観ることができましたニコニコ

友達と…と言う感じのラインナップではなさそうですが、5月中旬まで土曜日・祝日の午後2時~3時15分で上映されています。渋谷にお立ち寄りの際は楽しんでみてはいかがでしょうか音譜



★ホームページはこちら日常の気づきのブログもあります

★近日開催の大人向け古典講座は、4/29(月祝)論語@渋谷5/11(土)日本古典名作の冒頭を読む@新宿です

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