吉田裕子(塾講師)の国語エッセー | 古典(古文・漢文)・近現代文学・歌舞伎・狂言

”国語を学ぶことで、感受性と対話力を磨いたら、人生はもっと楽しい。”という思いのもと、ブログや書籍で情報を発信する他、定期的に「大人向け古典講座」を開催しています。予備校・高校・カルチャースクールの講師、ライター。


東大入試、維新、橋本


今年の東大入試【 日本史 】第4問。

内容自体は、明治維新のありえた他の可能性を検討させたり、
明治政府の政治のあり方を整理させるものなのですが…

問題内に「橋本」や「維新」という単語が乱れ飛んでいます(笑)


これは、東大なりの世相ジョークでしょうか(笑)


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前回、東京大学2013年入学試験の古文の現代語訳をアップしましたが、
今日は、同じく東大入試の漢文(出典は『三国史記』)を訳してみました。

少々自信のないところもあるのですが、
その辺りは、赤本・全国大学入試問題正解の類の販売を待って、
再検討したいと思いますあせる

とりあえずの速報版として、
受験生の方などの東大入試分析の参考となればアップ


【 現代語訳 】

温達は、高句麗の平岡王の時代の人である。破れた上着を身につけ、世間を歩き回っていた。その時代の人は、彼を目にして「愚温達」と呼んでいた。

平岡王の娘は、よく泣くのだった。王は冗談で、「お前はいつも泣いて、私の耳障りである。お前など愚温達に嫁がせるべきである。」 王は娘が泣くたびにこのことを言っていた。

娘は十六歳になり、王は、高氏に嫁がせようとした。娘がそれに応えて言うことには、「大王(お父さん)は、いつも『お前は必ず温達の妻になれ』と言ってきた。今どうして前の発言を覆してしまったのか。つまらない人間でさえ発言を覆そうとはしない。ましてこの上なく尊い大王なら、なおさら(覆さないもの)である。故事にも『王者には戯れの発言はない』と言うものです。今、大王の命令は間違っている。私は、そのことをお受けするつもりはない。」 王は怒って言った。「お前の行きたいところに行けば良い。(温達の妻になりたければ、勝手になれば良い。)」

そこで、娘は、宮殿を出て一人で行き、温達の家に辿り着いた。盲人の母親にお会いし、礼をして、彼女の子(温達)がどこにいるのかを尋ねた。老いた母親は、「そう、我が息子は飢えに耐えられず、ニレの木の樹皮を山に取りに行った。長い時間が経ったが、まだ帰ってこない。」

王の娘はその家を出て行って山のふもとに至り、温達がニレの木の皮を背負ってやって来るのを見た。娘は、彼に、自分を妻にしてもらいたい旨を申し出た。温達は怒って急に顔色を変え、「うちに嫁いでくるなんて、若い女性のすべきことではない。(貧しく)人としての暮らしもままならないに違いないから。」 温達は遂には行ってしまって娘を振り返ることはなかった。

娘は、翌朝さらに温達の家を訪ね、その母子と詳しくこの結婚の話をした。温達は、あいまいな態度をとり、結婚すると言う決断をしない。母親が言うことには、「私の息子は大変身分が低く、(貴人であるあなたと結婚して)貴人の類になるには値しません。私の家は大変貧しく、当然(あなたのような)貴人が住むところとして適しません。」

娘が答えて言うには、「昔の人は言いました。『一斗の粟でもついて食べれば、ともに飢えをしのげる。一尺の布でも縫って衣服にすれば、ともに寒さを防げる』(『史記』にある言葉)と。つまり、もし心が通じているのなら、どうして豊かになった後に一緒になる必要があろうか、いやない。(貧しかろうが今すぐ一緒になって構わないのだ。)」 そこで、王の娘は金の腕輪を売り、田や家、牛馬、器物を購入した。


【 書き下し文 】

温達は、高句麗平岡王の時の人なり。破衫弊履して、市井の間に往来す。時人之を目して愚温達と為す。

平岡王の少女児好く啼く。王戯れて曰く、「汝常に啼きて我が耳に聒すし、当に之を愚温達に帰がしむ」。王毎に之を言ふ。

女年二八に及び、王高氏に下嫁せしめんと欲す。公主対へて曰く、「大王常に汝必ず温達婦と為れと語ぐ。今何故に前言を改むるか。匹夫すら猶ほ食言を欲せず、況んや至尊をや。故に曰く『王者に戯言無し』と。今大王の命謬れり。妾敢て祗みて承けず」と。王怒りて曰く「宜しく汝の適く所に従ふべし」と。

是に於て公主宮を出で独り行きて、温達の家に至る。盲たる老母に見え、拝して其の子の在る所を問ふ。老母対へて曰く、「惟れ我が息飢うるに忍びず、楡皮を山林に取る。久しくして未だ還らず」と。

公主出で行きて山下に至り、温達の楡皮を負ひて来るを見る。公主之と懐を言ふ。温達悖然として曰く、「此れ幼女子の宜く行ふべき所に非ず、必ず人に非ざるなり」と。遂に行きて顧みず。

公主明朝更に入り、母子と備に之を言ふ。温達依違して未だ決せず。其の母曰く、「吾が息至つて陋しく、貴人の匹と為るに足らず。吾が家至つて窶しく、固より貴人の居に宜しからず」と。

公主対へて曰く、「古人言ふ『一斗の粟猶ほ舂くべく、一尺の布猶ほ縫ふべし』と、則ち苟くも同心たれば、何ぞ必ずしも富貴にして然る後に共にすべけんや」と。乃ち金釧を売りて、田宅牛馬器物を買得す。




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東大入試をその日の内に解く、という、
大学受験塾の講師らしいことに挑戦してみました!!

今回、古文はまさかの超・超・超有名な場面。
静御前が、頼朝夫妻の前で義経を慕って舞う場面です。

とても素敵な場面なので、
急ごしらえの粗いものですが、
現代語訳を作ってみましたニコニコ


【 東大のリード文 】

次の文章は、近世に成立した平仮名本『吾妻鏡』の一節である。源平の合戦の後、源頼朝(二位殿)は、異母弟の義経(九郎殿)に謀反の疑いを掛け、討伐の命を出す。義経は、郎党や愛妾の静御前を引き連れて各地を転々としたが、静とは大和国吉野で別れる。その後、静は捕らえられ、鎌倉に送られる。義経の行方も分からないまま、文治二年(一一八六)四月八日、鎌倉・鶴岡八幡宮に参詣した頼朝とその妻・北条政子(御台所)は、歌舞の名手であった静に神前で舞を披露するよう求める。静は再三固辞したが、遂に扇を手に取って舞い始める。


【 出題箇所現代語訳 】

静がまず歌を吟じて言うことには、

「吉野山みねのしら雪踏み分けて入りにし人の跡ぞ恋しき」
(吉野山の嶺の白雪を踏み分けて、山の中へ入って行った人(義経)の行方が恋しい)

また、それとは別に曲を歌った後、和歌を吟じる。その歌では、

「しづやしづしづのをだまき繰り返し昔を今になすよしもがな」
(静よ静よ(と義経様は繰り返し私の名を呼んでくださった) 苧環から糸を繰り出すように、昔を繰り返して今にする手立てがあればなぁ)

こんな風に歌ったので、神社が鳴り動くほどに、身分の高い者も低い者も皆、面白いと感じていたところ、頼朝殿がおっしゃったことには、

「今、八幡の神様の前で、私の芸を奉納するのにあたり、当然に、我々の長く久しい繁栄を祝わなければならないのに、人が聞いているのもはばからずに、反逆者の義経を慕い、(歌うべき曲とは)異なる曲を歌うということは、とても奇怪なことである」

と言って、ご機嫌が悪くなりなさったので、(それを)政子がお聞きになって、

「あまりお怒りを顔にあらわしなさるな。(私は)自分の身にとって、(静の歌うことに)思い当たることがある。あなたが既に流罪の人となりなさって、伊豆の国にいらっしゃった頃、(あなたが)私とご縁が浅くはない状態にあった(=恋仲であった)と言っても、平家が栄華を誇っていた時期なので、私の父もやはりその時分(の情勢)を恐れなさって、ひそかにこのことを制止なさった。しかし、それでもなお(私が)あなたと恋情を交わして、暗い夜一晩中降っている雨さえも厭わず、巻き上げた着物の裾もすっかり雨に濡れているその隙間から、あなたのいらっしゃる寝室の中にこっそり入りこみましたが、その後、あなたが、石橋山の戦場に向かいなさるとき、私は一人伊豆の山に残っていて、あなたのお命が無事であろうかどうであろうかということを一日思い悩んでいたところ、昼間に何回か、夜に何回か、気を失いました。その嘆きに照らし合わせましたら、今の静の気持ちもそのようであるだろうと思わずにはいられず、いたわしく思います。彼女がもし長年義経と連れ添った絆を忘れておりますなら、貞淑な女性のありようではないでしょう。今の静の歌の詠みぶりは、外(言葉)には少しばかりの想いを託し、内実にはひどく迷い悩んだ憤りをふくんでいる。何とか憐みをお感じになって、ぜひとも味わい楽しみください」

とおっしゃったところ、頼朝はお聞きになって、(政子と)一緒に涙をもよおした様子で、腹を立てるのをやめなさった。しばらくして、御簾の中から、卯の花襲の衣を静かに下賜なさった。



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