シンポジウムレポ「世界のAW(アニマルウェルフェア)畜産企業ビジネスが日本をどう変革するのか?」 | あにまるとーくをしよう

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こんにちは。ゆっこです。

 

さて、先日7月6日に日本獣医生命科学大学にて、家畜福祉に関する国際シンポジウムの聴講に行ってきました。

 

講演タイトルは、

「世界のAW畜産企業ビジネスが日本をどう変革するのか?-オランダの有機畜産とグローバル食品企業・ベンチャーキャピタルのAW戦略-」

です。

 

↑チラシ表面より

 

講演者は

Dr.キース・スキーペンス氏(オランダ)

ニッキー・エイモス氏、ロリー・サリバン博士(イギリス)

松木洋一先生(日本)

でした。

 

↑チラシ裏面より

 

この記事では、

①印象的だったポイント

②感想

を書いていきます。

 

それでは、スタート。

 

*****

各講演とも印象的だった部分をピックアップします。

 

■Dr.キース・スキーペンス氏

(黒豚牧場Walnoot&Wilg 経営者・獣医師)

 

①オランダではアニマルウェルフェアの関心が高いのと同時に、肉の消費量が下がっている。

国土が小さいので非常に飼育密度が高い。世界でも他にない。オランダの肉の消費量は年々下がっている。理由は、アニマルウェルフェアへの関心が高まっているから。質の良い肉が、少量で高価格で購入されている。

 

②Beter Leven (ベター・レーベン)が戦略のカギ。

 

---開発に至る経緯

1990年代にブタの行動やウェルフェア関連の研究が急激に増えた。

NGO(非政府市民団体)からの圧力が強まる動きが出てきた。中心となったのはオランダ動物保護協会DSPA(The Dutch Society for the Protection of Animals) 。

DSPAは、少数の家畜に大きな改善をするのではなく、多数の家畜に小さな改善を促す働きかけをした。

そこで開発されたのが「Beter Leben」。

 

この制度は星の数で評価され、3段階評価で☆1~☆3まである。星の数が多くなれば、達成するべき基準も多くなるが、高福祉であるとされる。現在オランダの多くの農家が使っている。特にブロイラーが非常に数を増やしている。

 

---Beter Levenの評価がもたらすもの

この評価制度があることで、2点のメリットをもたらした。

・消費者は自分で生産物を選べるようになった。

・高い評価を得た農家にとっては、高いレベルの小さいマーケットシェアの中で、少しずつではあるが確実にシェアを得られる。

現在オランダでは、100万頭以上の家畜がアニマルウェルフェアに配慮された環境で生活している。

 

■ニッキー・エイモス氏、ロリー・サリバン博士

 

①BBFAW (ビービーファウ)が、投資家・畜産関係者・消費者をつなぐ。

イギリスの動物擁護団体CIWFに提案されたBBFAW(家畜福祉ビジネス評価指標)は、企業の家畜福祉管理や経営計画上の政策・活動実績の公表に関して、世界的な評価指標となっている。投資家が注目し、実績を促すことで、企業のリスク管理への意識が高まる。そして消費者の理解が得られたとき、家畜福祉の向上がみられる。

 

②日本企業でアニマルウェルフェアが注目されていないのは、理解されていないから。

対象になった日本の食品企業5社は、2018年の実績分析で最低ランクに位置付けられた。家畜福祉対策の情報をほとんど提供していないことがわかっている。これは、日本の投資家が家畜福祉をリスクと捉えておらず、企業に対して問題提起をしていないため。

 

■パネルディスカッション

 

①アニマルウェルフェアを消費者に理解してもらうには?

・ニッチに陥らないこと。利用しやすい畜産物へしていくこと。

・実際に農場を見てもらうこと。

・NGOのサポートを受けること。農家だけでは達成できない。役割分担をすること。(該当する団体が日本にあることが必須)

・指標をわかりやすくパッケージに載せること。

 

②日本に足りないことは?

・NGO団体

・対応した小売業

・農業保護政策

の3点である。ヨーロッパは、動物保護団体とスーパーマーケットの協力で理解に繋がった。日本はそのような動きはないのか?

 

◾️感想◾️

①日本の農家側からは「ちゃんと儲かるのか?」という問いが多かった。

会場からの質問やAWFC会員の発表を聞いていて、「家畜福祉を取り入れたところで儲かるのか?」ということが一番障壁になっていると感じました。

 

BBFAWで高評価を得られるとしても、利益に繋がらなければ家畜福祉は取り入れられない。付加価値で価格帯を広げれば、それだけ食の貧困格差を生み出すのではという意見もありました。

 

せっかく素晴らしい畜産物を作っても儲かる算段がなければ出来ない、というのはとても理解できるのですが、そこに焦点が行き過ぎていて「実際取り組むための仕組みはどうしていけばいいか?」といった話が日本側から無かったのが疑問に残りました。

 

②大企業は長いスパンで取り組んでいき、小規模企業はフットワーク軽く、できるところから進めていくのが良さそう。

マクドナルドはCSRで長期的にアニマルウェルフェアを取り入れていくという発表をしています。また、小規模農家でも独自に取り入れている農場もあります。

 

小規模農家の販路を進めるという点で印象的だったのは、Delicious Revolutionという通販会社です。アニマルウェルフェアを実践している小規模農家の商品を集めて販売しており、こういった小売業者が増えていけば、価格にグラデーションのある高付加価値の畜産物が増えていき、消費者の選択肢も広がるのではと思いました。

 

③消費者の経済事情にもかかっているのでは。

次に思ったことは、「消費者の経済事情が悪ければ、高いものは買えない」ということです。アニマルウェルフェアに配慮された畜産物は、一般的なものよりどうしても価格が高くなります。

 

農家のことを知って、アニマルウェルフェアのことを理解したとしても、買えなければ生産物としては意味がなくなってしまいます。そこをどうするか。

 

④自分にできることは「ご褒美」で買ってみる。

毎日は買えなくても、応援したい農家の畜産物を定期的に買ってみるということが一番現実的かなと思いました。


このような「消費者がアニマルウェルフェアに配慮した畜産物を選んで買う行動」が少しずつ広がることで、経済的にも注目されていくのではないでしょうか。

 

⑤最後に。


今回は、経済的観点からアニマルウェルフェアを考えるシンポジウムでした。私個人としては、世界と日本の事情を知った上で、アニマルウェルフェアを積極的に取り入れている農家を応援したいと思いました。

 

 

それでは、またの更新まで。