【詩】表参道似顔絵師 | 跡地~想い出のブログ

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2011年5月から2012年9月までの想い出です

僕が子供の頃
表参道に似顔絵師がいた

日本人と言われればそう見えるし
外人と言われればそうも見える

そんな風貌の人だった

彼の描く絵は似ていた
まぁそれを商売にしてたんだから
当たり前なんだけど

女性はほんの少しだけ
実物よりキュートに描いた

男性はほんの少しだけ
実物よりイケメンに描いた

それが彼の美意識なのか
商売のためなのか
子供の僕にはわからなかった

ただ描いてもらった人が
似てる~
そう言って喜ぶ顔を見る
彼のちょっとほくそ笑むような笑顔

僕はそれを見るのが好きだった

僕は一日中ずっと
彼の側に座り込んでいた

彼はときたま僕を見て
笑っていたけれど
気にもとめていないようだった

客足が途絶えている時間
彼は鳥を描いていた

目の前に鳥が飛んでたわけではない
きっと彼の心の中に棲んでたんだろう

そんなある日
彼は思い立ったように
誰かを描きだした

僕だった

やがて彼はその絵を僕に渡した

僕は子供ながらに
お金が必要なことを知ってたんだろう
ポケットの中の小銭を
かき集めようとした

すると彼は
いらない、いらない
笑いながらそんな素振りをした

受け取った紙の中で
僕が笑ってた

少しだけイケメンの僕が
初夏の陽射しの中で笑ってた