──AM4:25 歌舞伎町 帰路
音色が降ってくる
新しい年を迎えて 初めての雨だ
少年の頃の 土の匂いがする雨も
楽しみに出かけた日の 突然の雨も
あの子が 左利きだと知った日の雨も
僕は忘れないだろう
「あけましておめでとう」
と僕は空に呟いた。
そうだ、今回のハピネスの方程式は、
海月あめさま。の記事にしよう。
──AM 5:25 自室
雨の落ちる速度は秒速7メートル、どんなに高い場所からでも、どんなにエネルギーを持っていても、物体はその速度が増せば増すほどに抵抗を受け、速度は一定に収束してしまう。僕はノートにペンを走らせた。雨粒の質量をm、重力はg、速さをv、抵抗力の定数をkとしたら。抵抗力は速さに比例するからmgとkvが釣り合っている。
「v=mg/k」
物理は残酷だ。
「kがなければどこまでも加速出来るのに。」
── 回想 Ⅰ
ユグドラシル アルテミスは、2018年2月に本家ユグドラシルから分店を果たしオープンし、来月で2周年を迎えようとしている。当時入店間もない未経験者のあめは「由希さんの作るお店に着いて行きたい」と自ら名乗りを上げてくれたのを昨日の事のように覚えている。アルテミスがオープンして間もなく頭角を現し始めた彼は、常に明日の予定が埋まらない不安と戦いながら寝る時間を惜しみ、自分の限られたリソースを最大限に使って出来ることは何でも挑戦した。その姿は新人の頃の僕によく似ていた。そして誰よりも早く幹部への階段を登り始め、未経験1年で1000万PLAYERの称号と主任の役職を得た。
──回想 Ⅱ 病室
その後病気のため長期療養していた海月あめは、去年の四分の1くらいを病室で過ごした。終わったら行きたい場所、食べたいもの、見たい景色、やりたいこと、そして何よりもホストの事ばかり考えていた。入院中に入店した新人が「あめさま。が毎日ラインをくれる、まだ会ったことは無いですけど」と言っていたくらいだ。自分が一番輝ける場所に、一日も早く戻りたい。そう思わせてくれたお客様や仲間たちと、一緒に夢の続きを見るために。
──AM5:55 自室
あめの繊細な感性が創り出す世界はシャボン玉のようで、世界の輪郭を色んな風に美しく映し出しては消えて、また生まれてを繰り返す。ホストを通じて「常に理想の自分でいたい、人の為になりたい、記憶に残りたい」と願う彼。このシャボン玉ひとつひとつは、きっと彼の生き方なんだ。
長期療養から復帰を果たしたあめは、今年からは徐々に出勤を増やし、今月は復活祭(1/17)とバースデー(1/28)が控えている。今度はどんな世界を見せてくれるんだろう。
──AM6:21 自室
成長する、速度を増すと言うことは、それだけ負荷が大きく障害が多いと言うことだ。けれど人の成長速度は物理法則の範疇にはない、kを無視して、秒速7メートルを超えてどこへだって行けるはずだ。
「歌舞伎町に華を咲かす。」──海月あめさま。
僕が超えられなかった速度を超えた先の世界には、どんな華が咲いているのか、まだ僕には想像もつかない。彼の世界に触れて、僕も一緒に夢を見始めているのだろう、楽しみだ。
──AM6:30 夜明け
原稿の執筆終了と共に
雨は上がっていた。
「今日の雨も忘れられそうにないな。」
雨が上がると空には、
虹の華が咲いていた。
◆草摩由希
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