言葉の直後だった。

 竜人が一歩を踏み出したと思った時には、既にその体が視界いっぱいに広がっていた。

 接近して来る、と認識する間もなく肉薄されたのだ。

 

「――ッ!!?」

 

 振るわれる稲妻の刃を鎖の巻き付いた腕で咄嗟に遮ろうとするが、構えが間に合わない。

 刃が、魔人の左肩から右腰までをなぞるように切り裂く。

 受けた傷そのものは浅いが、確かな痛みと共に強い痺れを感じさせた。

 しかし、魔人からすれば受けた痛みよりも、竜人の動きに対応出来なかった事実に対する驚愕の方が強かった。

 

(速イ……っ!?)

 

 負けじと右の拳を竜人の顔面目掛けて放とうとするが、竜人は刃を振るった勢いを殺さず回転するように動く。

 遠心力に従い、その長い尻尾が稲妻の刃に続いて回し蹴りかのように腹部へ振るわれる。

 バチィン!! と、軽快ながらも強く鋭い音が響き、威力に押される形で魔人の体が強制的に後退させられる。

 その力強さと、動作の速さ。

 思い当たる節は一つしか無かった。

 

(コイツ……!! 刃だケじゃネぇ、!?)

 

 世の中にはEMSという、筋トレに使われる器具グッズがある。

 電気刺激によって筋肉を強制的に伸縮させ鍛える――基本的には肌に付ける事で効果を発揮する代物だ。

 恐らく、メガシードラモンの力を行使している司弩蒼矢の動作が急に速く、そして力強くなったのはそれと同じ原理だろう。

 元々、メガシードラモンという種族には『サンダージャベリン』という必殺技を実現させるため、頭部の外殻の内に発電装置が組み込まれているらしい。

 確かに、構造が同じであれば体の各部に存在する鎧にも同じように発電装置が組み込まれていてもおかしくはない。

 だが、もしも本当に同じ発電装置を用いている場合、今の司弩蒼矢は必殺技として用いられるレベルの電力を体に流し込んでいる事になる。

 そんなものに、筋肉は愚か内臓は耐えられるのか。

 サンダージャベリンはあくまでも、自身の生体電気ではなく『装置』という明らかに生物感の無い外付けの武装によって成り立っている必殺技のはずだ。

 メガシードラモンという、ただでさえ電気を通しやすい『海』の性質を宿した水棲型デジモンの生身の肉体そのものに、必殺技レベルの電気に対する耐性が存在するとでも言うのか……!?

 

(チィッ、こンナ情報『図鑑』にハ無かッたゾ!! さッキ不意打ちトハ言え吹っ飛バさレたのはアレガ原因か!!)

「調子に乗るナよ成り立テ風情がァ!!」

 

 憤怒の形相で共に魔人は両腕に巻き付いた鎖を伸ばし振るう。

 竜人は咄嗟に稲妻の剣で鎖を弾こうとするが、その対応が災いしてか左腕側の鎖が稲妻の剣に絡み付き、その動作を封じていた。

 それを確認した魔人は絡み取った左腕側の鎖を掴み竜人の動きを封じつつ、自らの必殺技を放つために一度息を吸おうとする。

 だが、直後に竜人は予想外の行動に出た。

 稲妻の剣に絡み付いている魔人の鎖を、帯びた炎で火傷する事にも構わず空いた左手で掴み取ったのだ。

 引き寄せ、もう一方の右手にも同じく鎖を掴み取らせる。

 そして、

 

「がああああああああああああああああっ!!」

 

 咆哮にも等しい叫び声が聞こえた、次の瞬間だった。

 魔人の体が、唐突に

 

「――ッ!! 何ッ……だトッ……!!?」

 

 その原因を、魔人には信じられなかった。

 鎖を両手で掴んだ赤い竜人が、その膂力でもって鎖を伸ばし放った張本人たる魔人をハンマー投げでもするように振り回し始めたのだ。

 確かに体に電気を流す事で身体能力を向上させている事は既に予測がついていたが、それでも体内に溶けた重金属を蓄えた魔人の体重を鎖越しに振り回せるほどに強化されているとは思ってもいなかった。

 あるいは、魔人の方も両手で鎖を引こうとしていれば膂力の面で拮抗させる事は出来たかもしれないが、足が地から離れてしまった今となっては最早手遅れだ。

 渦でも描くような軌道で魔人の体を鎖越しに頭上で振り回すと、竜人はその勢いのまま鎖を振り下ろす。

 当然、魔人の体は地面に叩き付けられる。

 その衝撃は、落着した地点に広く亀裂が生じるほどだった。

 

「ぐ、ガァ……っ!!」

「……ぐっ、それだけ重いんだ。自分が与えた痛みぐらい、しっかり伝わっただろ」

 

 燃え続ける鎖を掴んだ事で火傷していると思わしき両手を放し、竜人はただ事実を告げる。

 辛うじて頭から落ちる事だけは避ける事が出来た魔人だったが、それでも自らの重さをそのまま攻撃力に転換したに等しい一撃を受けて、苦悶の声を漏らす事は避けられなかったらしい。

 実際、かなり堪えていた。

 皮肉にも、それは司弩蒼矢が赤い竜人に成る前の姿だった頃と殆ど真逆の形。

 屈辱だと感じ、魔人が更なる怒りを覚えるには十分な構図だった。

 

「仕返し、ノ……つもリかテメエエエエエエエエエエエエエ!!」

 

 体から噴き出ていた、あるいは漏れ出ていた青い炎の勢いが更に増す。

 人らしい肌色の部分も殆ど覆い隠され、炎の鎧は大気を焼き、生物が呼吸をする上で必要な酸素を奪う。

 酸素の損失は肉体的な構造が人間に近い魔人にとっても苦しさを覚える要因となるはずだが、怒りに身を焼く彼の意識はそちらの方にまで向かない。

 組織の目論見からも私情からも許し難い態度と行動を取った司弩蒼矢の希望を叩き潰す――そんな悪意が今の彼の燃料となっていた。

 

(馬鹿ニしやガって。イイ気にナりやがッて。潰しテやル。這イ蹲らセてヤる。くソ、何でこンな事にナってンだ。奴は明確に絶望しテたはズだッてのに。調すル切っ掛ケは作レていたハズだっタのニ。『魔王』の力ガ暴走しテ暴レたとカなラまだシも、俺ガあンな姿の力技で倒れサセらレるなンて。全テあノ女共の所為ダ。殺シてヤる。抗えナいようニした後、奴等の死体デ二度トそンな眼が出来ねェようニ心ヲ折ッてやル!!)

 

 思考は回る。

 今この状況で、司弩蒼矢の戦闘能力を奪うために最も有効で、尚且つ爽快感を得られる手段は何かと、彼の頭の中に根付いた悪意に基づいて行動が算出される。

 言葉の上では平静を装おうとしているが、現時点で竜人は最低でも両手と腹部の三箇所に火傷を受けており、それは今も尚鋭い痛みを発しさせ続けているはずだ。

 ここまで足掻くことが出来ている理由も、あくまで全身各部に存在する発電機能付きの外殻の鎧と、そこから流される電力の恩恵を受ける事で急加速的に能力を引き上げた脚力によるものだ。

 

(かと言ッて足ハ簡単にハ狙えねエ。鎖で叩いタり縛ッたリしよウとしてモ当たラナいなラ単なル隙にしカならン。……なラ、そモソも

 

 そこまで考えると、魔人は息を大きく吸い、

 

炎熱解鋼ヘヴィーメタルファイアーァァァ!!」

 

 直後に魔人の口から放たれたのは、青色の炎のように見える何か。

 その正体は、体内に蓄えられた重金属を溶かした、ある種の溶岩にも等しいもの。

 デスメラモンという種族の代名詞たる必殺の攻撃方法。

 鋼鉄を容易に溶かす熱を伴ったそれを、魔人は自らの足元に向けて放っていた。

 灼け溶けた重金属は、さながらこぼれ落ちたジュースのような滑らかさで廃棄された建物の硬い床に広がっていく。

 

「――ッ!!?」

 

 それを見た赤い竜人は驚きの表情を浮かべると、すぐさま口から大量の水を吹き出し足の踏み場が奪われるのを阻止しようとする。

 だが、赤い竜人の放つ水の吐息ブレスは大量の水蒸気を発生させると共に重金属を液体から固体へと変じさせる事が出来ているものの、その行動によって青色の進攻を防ぐ事が出来るのは正面のみ。

 固まった金属の塊の左右からはその元の姿である青色の溶鉱が流れ、赤い竜人の陣地を確実に奪っていく。

 そして、魔人が青色の溶鉱を吐き出す事を止めた頃には、赤い竜人の足を付けられる場所が殆ど無くなっていた。

 左右に避け場は無く、逃げ場たる後方には建物の壁。 

 魔人の周囲には青い溶鉱が流れ込んでいて、下手に切り込もうとすれば足を火傷どころか炭化させかねない。

 最早魔人自身が手を下さずとも、肉を炙り尽くす環境そのものが赤い竜人の体力を確実に奪っていき、それを打破しようと力を振るえば魔人に対して隙を晒す事になる状況。

 実際問題、熱に晒されている赤い竜人は呼吸も荒く、苦しげな表情を浮かべていた。

 火傷の痛みもそうだが、熱に体力を奪われ続け、遂に疲れを自覚してきたのだろう。

 

(今度ハ油断しねェ。また鎖ヲ掴まレようガ、あンだけ疲労しテるなら膂力デ負けル要素も無い)

「終わリだ。そノ鎧のカラクリにハ驚いタが、どンなに速クなッても足場が無けレば意味ねェだロ?」

 

 後は飛び道具だけを警戒しつつ、鎖による攻撃で一方的に攻撃していけばいい。

 その事実に魔人は笑みを浮かべ、自らが放った青い溶鉱の上を歩き近寄っていく。

 自らの攻撃をしっかり命中させられるように。

 赤い竜人にはこれ以上、何も有効な手を打てない事を確信している故に。

 得意とする水や冷気を用いた技を用いても、魔人の火力の前には焼け石に水でしか無い。

 これまでの戦闘の内容からも、竜人は目で見て理解しているはずだ。

 不意打ちに等しい形で魔人に対して何度か攻撃を当てる事に成功こそしていたが、それでも水を用いた攻撃だけは大して通用していなかった事を。

 その結果を見れば、冷気を用いた攻撃がまず通用しない事も察しているに違いない。

 

「諦めロ。お前ニ味方すルもンはこれ以上誰モ、いヤ何もねェぞ?」

 

 司弩蒼矢は言葉で応じなかった。

 代わりに魔人に対して三度目の水の吐息を吹き掛けてくる。

 身体能力の強化の恩恵からか、水の勢い自体は強くなっているようだが、結局は魔人の青い炎の鎧に触れると同時に大量の水蒸気となって霧散するだけとなった。

 返す刃で魔人は炎を帯びた鎖を伸ばし、竜人の体を連続して打つ。

 竜人は稲妻の剣を用いて鎖の連撃を弾き、隙を見ては水の吐息ブレスを何度も放ち攻撃してくるが、結果は変わらない。

 やがて鎖の攻撃にも対応し切れなくなり、体から発せられていた青い電気も弱まり、遂には片膝を地に付け、息も絶え絶えな姿を晒していた。

 

「何ナら祈ッてみロよ。誰カが助けニ来てくレる事を。どウせまタ足手纏イだロうがナァ?」

 

 悦に浸った笑みと共に魔人は存分に嗤う。

 略奪者の、加害者の、悪党の愉悦がそこにあった。

 誰が見ても、最早勝敗など決まったと思える光景だった。

 なのに、

 

「……なら、本当に助けを求めてみるさ」

「――あン?」

 

 竜人は突如としておかしな事を口にした。

 その声に揺らぎは感じられない。

 まさかと思い、女達が逃げた建物の出口の方へ振り向いてみるが、誰の姿も見当たらない。

 ハッタリか、と結論付けて竜人の方へとすぐに振り返る。

 その時だった。

 

氷の吹き矢アイスアロー!!」

 

 不意打ち染みたタイミングで、竜人の口から技の名前が唱えられた。

 それは、竜人が今の姿に至る前の頃にも用いていた、口の中から冷気と共に氷の矢を放つ技だ。

 同系統の種族として、進化した後になっても使える事を元々予測は出来ていた。

 だが、水の息吹ブレスを放った時とは異なり、その狙いは魔人ではなく建物の天井に向けられていた。

 

(……何ダ、上……?)

 

 疑問を覚え、釣られるように魔人は上方に視線を動かす。

 そこで、彼は確かな異分子イレギュラーを目にした。

 

「……、ダと……!?」

 

 廃棄された建物の、空など見えない天井てんじょう

 そこに、本来であれば空にしか見る事が無いはずの雲が形成されていた。

 

(馬鹿ナ……雲なンてこんナ場所ニ発生すルわけガねぇ。何だ、一体何ガ原因で……)

「驚くほどの事でもないだろ。雲なんて今時理科の実験でも作れるようなものだ」

 

 冷気を吐き出す事を止めた竜人が、疑問を生じさせた魔人に対して言葉を発する。

 

自身物理学者じゃないから詳しくは知らないけど、雲っていうのは要するに大気中に固まって浮いた水滴や氷の粒の事。熱湯から出る湯気や氷から出てくる白い煙だって、ある種の雲と言ってもいいものだ」

「……まサ、か……」

「確かにこっちが放った水の攻撃は確かに水蒸気になって霧散した。けど、決してそれは『無くなった』わけじゃない。お前と言う焼け石に当たった後、あの天井に『溜まり』続けていたんだ。そして、お前は頼まれなくても勝手に熱気を作り、上昇気流を生み続けていた。その体だってそうだけど、何よりこの青い溶岩みたいなものがトドメになったよ。大量の水蒸気が上がった状態で、これだけの熱気。後は冷やすだけで条件は満たせる」

 

 そのために、竜人は冷気を上方に放っていた。

 確かに、魔人の言う通り、空に存在するほどに巨大なものは発生させられないが。

 広がる範囲を建物の天井に限定させれば、局所的と言えど『雲』を生み出す事は不可能ではない。

 そして、

 

「ある程度の大きさを伴った雲さえ浮かべば、

「……ッ!! テメェ!!」

 

 竜人の狙いに気付いた魔人が攻撃をしようとする。

 しかし、その前に竜人は口から再び冷気を雲に向け、素早く吹き掛ける。

 それが最後のピースとなった。

 魔人が鎖で竜人の体を打った時には手遅れだった。

 局所的に作られた雲に大量の細やかな氷の欠片が冷気と共に放り込まれ、雲の中の水滴を強制的に冷却させる。

 数多の水滴は瞬時に氷の欠片となり雲の中を落ちていくが、それ等は途中で全て魔人が生み出した溶鉱の熱気に溶かされ雨粒となり。

 結果として、これまで竜人が放ってきた水の攻撃と、大気中に存在していた水分全てが雨という形で降り注がれる事となる。

 自然現象としての雨に比べれば大した雨量にはならないが、それでもこの場に広がった青色の溶鉱を冷やし固めるには十分な量が降ることだろう。

 文字通り頭を冷やされた魔人が、声を漏らす。

 

「こレが、狙いダッたっテのカ……? 最初かラ、雲ヲ作るたメに水の攻撃ヲ……!?」

「……最初からではないさ。そもそもお前が辺り一面を青く燃やすまで、打開のためとはいえこんな回りくどいやり方はやろうとも考えなかった。ただ、闘っている内に作れる条件が勝手に揃ってくれていたから利用しただけだ」

 

 確かに、天井に浮かんだ『雲』を形成するための要素は戦闘の流れで自然と生じていったものだ。

 水の吐息ブレスから生じた蒸気と、魔人の体や溶鉱から吹き上がっていた上昇気流。

 あくまでも竜人はそこに冷気という最後のピースを放り込んだだけなのかもしれない。

 だが、足の踏み場を奪われた直後の攻撃に、電気による攻撃ではなく魔人に通用しないはずの水の吐息ブレスを選んでいた理由が、雨雲を作り出すための意図的なものであったのなら。

 この竜人は、ずっと早い段階で天井の水気に気付いていたという事になる。

 戦闘中、頭上に余所見をするような余裕を与えた覚えは無い。

 その目で見ることなく、大気中の水分を感知していたとでもいうのか?

 

「そンな、コんな……ゴ都合主義な事ガ……あッテ堪るカ!?」

 

 雨が降り注ぎ、場を支配していた熱気が薄れていく。

 大抵の水や氷を用いた攻撃を霧散させていた炎の力が、削ぎ落とされていく。

 どんなに協力な炎であろうと、大量の冷水の前にはその熱を殺されるのが定めだと言うように。

 焼け石に水という言葉にも、限度があると言うように。

 そして、一方で竜人は疲労し片膝をついていた様子から一変――まるで雨に活力を貰ったかのように立ち上がり、再びその身から青白い電光を迸らせる。

 静かに、告げる。

 

「……終わらせるぞ」

「もウ勝っタ気になッてンじゃねェ!! たかダか雨ヲ降らセた程度デいい気ニなりヤがッて!!」

 

 竜人の言葉を断ち切るように魔人は叫び、再び必殺の技を放つため呼吸をしようとする。

 しかし、その前に赤い竜人は魔人に向けて左手を翳し、次なる言葉を紡ぐ。

 

海を制する竜の威メイルシュトロームッ!!」

 

 まるで呪文のような言葉が発せられた直後だった。

 建物の内部に降り注ぐ雨粒や、充満する蒸気――そういったこの場一帯の水気の全てが一つの水流と化すように渦を巻き、横向きの水の竜巻へと変じて魔人の体を一息に飲み込んだ。

 それは本来、水中戦でしか使えないはずの技だった。

 自らの意思でもって海流を操作し、荒波や渦潮を作り出す――メガシードラモンという種族が用いる事の出来るもう一つの技。

 ……そのカラクリを、あるいはかつて司弩蒼矢と闘ったお人好しの男であれば即座に看破出来たかもしれない。

 辺りに存在する全ての水――その性質を海水のそれへと一斉に変化させ、メガシードラモンの『海流』を操る技の条件を強制的に満たさせたのだと。

 

(馬鹿、な……ッ!!)

 

 水の竜巻に飲まれた魔人はまるで身動きが取れず、何とか地に足を着けて流れに抗おうと踏ん張るのが精一杯な状態になっていた。

 体から炎を吹き出し、竜巻を構成する水を霧散させようと試みるが、それも失敗する。

 一方で赤い竜人は水の竜巻の中へと自ら飛び込み、そのまま流れに身を任せ魔人に向かって突撃する。

 全身から雷光を輝かせ、稲妻の剣を正面に構え、さながら敵を貫く一本の矢と化す。

 最早、魔人には回避する事も防御する事も出来なかった。

 故に、これがこの闘いに決着を着ける一撃だった。

 竜人が叫び、魔人が意識を失う直前に聞いた、その必殺技の名は、

 

深闇貫く雷光の矢スプライトアローォォォッ!!!!!」

 

 稲妻が轟き、悲鳴すら掻き消えて。

 魔人の意識は、暗闇の中に沈没した。

 


 ◆ ◆ ◆ ◆

《後書き》

……というわけで最新話でしたが、いかがだったでしょうか?

途中に段落を挟む間も無くぶっ通しで戦闘パートです!! いやまぁ実をいうと好夢が波音を抱えて逃げた辺りで切って別の視点を取り入れる案もあったのですが、せっかくの初陣。せっかくの覚醒直後の戦闘回。ここは流れを殺すことはせず、一つの戦闘を最後の最後まで描写し切ることにさせて頂きました。

縁芽苦朗視点の一対多の戦闘とは異なり、完全体同士の一騎打ち。メガシードラモンの力を宿した蒼矢くんの力を表に出していく関係で、今回の視点は悪党サイドにしました。押しては引いてを繰り返し、互いに打てる手を打ち尽くす……を意識して書いたのですが、結果としてせっかくのスピード感を殺してしまったかもしれません。特にEMSのくだりの辺り。評価が絶対分かれるやーつ。

話を見てくれた方にはわかる通り、蒼矢くん完全体仕様の戦闘能力はかなりオリジナルに寄らせてます。本来頭部にあったブレードは普通に武器として使い、発電装置は外殻の鎧が全身各部に存在するようになった事で新たな使い道が生まれ、シードラモンの頃に使えていた水冷系の技も完備……と。今回でこそ最後を除いて陸上戦闘だったのですが、これが水中戦になると更に性能が向上するので、普通に強キャラです。

……なので、対抗馬として視点を担わせたデスメラモンのデューマンも必然的に強キャラになりました。デューマンとしての『変換』の能力は大して活かされていないのですが、感情による火力のブーストなどもあって熱いわ硬いわで蒼矢くんにとってはマジで相手が悪い部類。ぶっちゃけ『雨雲を作る』という発想が浮かばなかったら足元潰された時点で殆ど詰んでましたからな!! 背後の壁をブチ抜いて逃げるしかねぇ!! 

さて、これでひとまず蒼矢くんサイドの戦闘は一段落なわけですが、まだ状況は終わってません。

逃げた好夢ちゃんや、縁芽苦朗と牙絡雑賀の話がまだ終わってませんし、そもそも磯月波音の問題だってまだ『解決』してませんからね。

次の視点が誰のものになるのか、時間は掛かるかと思われますが楽しみにしてくれると幸いです。

PS さぁてデジモン化小説企画のための物語をこれから書いていかねば……。