三波さんから電話が入った。

「ユキオさん、話があるんや今日会えへんか?」

いいですよ、どこで何時にしましょうか。

「品川のいつものイタリアン喫茶で、1時はどうやろか」

分かりました、じゃぁ1時で。

 

砂町の現場の地権者「細川さん」と、明日の夜会う予定になった。

つまり細川さんは、今回の地上げ話に応じるつもりだ。

(条件は会ってみなければ分からないが)

 

1時品川のイタリアン喫茶

 

「おう、お疲れさん、わざわざ済まんな忙しいところ」

(私は、全然忙しくない、仕事は全部外注で他人任せにしてある)

いえ、急にどうしたのですか?

「実はな、上野の案件話してたやろ。あそこに3500万手付け打っとったんやが、穴(ケツ)がつかへんもんやから相手が手付け流れするって言うてきたんや。木曜までに中間金を入れなあかん。」

(又始まった、この男はあいかわらず無謀な計画ばかり立てる)

 

だから、云ったでしょうあまり無茶しないでじっくり行きましょって!

(呆れかえった、まさかケツもつかないまま又私に内緒で手付けを打っていた)

「いや、分かるけどユキオさん3500万以上の中間金払わな、上野は流れてしまうんや、それで砂町の現場を権利売買しようかと思うてる」

(砂町は、私の計画通りいけば1年かかるが1億前後の利益が出る)

三波さん、冗談はやめて下さいよ、明日の夜地権者の細川さんとアポイントが取れているんです。細川さえ押さえてしまえば、あとは借地権者の親戚4人と弁護士同士の話で決着がつくんですよ。

(こうなれば、秘密を明かし利益の話もしなければならない)

 

「細川とアポが取れとるんかいな」

当たり前でしょう、私に任せると言ったから着々と話は進めてます、今年の12月には1億前後の利益が出ます。それを捨てるんですか?

 

「いや、上野はうまくすれば3億以上利益が出る。それで3500万手付けを打ったんや」

という事は、木曜日までに砂町の権利担保に3500万用意しろという事になりますね?

 

「そうや、どうにかならんやろうか?」

三波さん、何でいつも明日の明後日のギリギリになってこんな話ばかり言ってくるんですか、もう付き合えませんよ。

 

「そんな、つもりはなかったんやけど入る予定の金が入らへんようになってしもうたんや、わしも困っとる」

 

砂町は、我々には見えた話だけど現状で3500万も打ち込む投資家は無理ですね。(これは本当に困った、私は絶対に自分のお金を現場に打ち込むのはやめている、結局三波さんのように追い掛け回されるようになる)

 

「だったら、砂町は違う業者に投げて、上野にユキオさんも参加させるから投げてもええか?」

(細川さんは、又話が違って名前も聞いたことのない業者が登場してくる、たぶんご破算だろう)

 

三波さん、私が固い現場しか介入しないのは分かっているでしょう?上野は博打です。あの現場は上手くいって2年掛かりますよ、私は参加するつもりはありません。

(上野の現場は、2棟のオフィスビルを購入してテナントの立ち退きが両方で25軒くらいある。しかもオフィスと飲食ばかりだから、賃貸とはいえ、立ち退きの予算と期間が読みにくい)

 

「うん、わかってるってだけど3億は抜けるで」

(また、おかしな事ばかりいう。2年後の3億か3年後の5千万か分からない現場になぜ固執するのか)

 

あのですね、砂町は私に任せておけば確実に12月か、来年1月には三波さんの取り分5千万確定です。それを元金の3500万で放棄するのですか?馬鹿らしい。上野なんて「捕らぬ狸の皮算用」で、下手すれば3年以上掛かってプラマイゼロかも知れません。

なんでそういう計算になるのですか?それで、跡取りの地上げ屋がいるのですか。

 

「ちゃうって、元々3000万の貸し金の見返りに取った物件やんか、それを500万上乗せして売るんやから、わしの計算では一応は儲けた事になるやん、それの繰り返しやで」

違うでしょ、元々6000万の貸金の一部で半金の3000万が元金で残りの3000万がは、回収不能の業者やないですか。何が元金3000万か、訳わからん事を言うのは無しにして下さい。元金は6000万です。

 

「じやぁ、どうしたらいい?」

(始まった、私に金を作ってくれという魂胆だ)

 

どうにもなりませんね。上野を捨てたらいいんじゃありませんか。

「そうはいかんわ、砂町を権利譲渡したら500万の儲け、上野を捨てたら純粋に3500万の損、ユキオさんやったらどっちを選ぶ?」

(このおっさんは、毎月借金の返済で利息だけで500万、元金も含めれば2000万前後を、この10年間払い続けている。確かにスゴイ)

 

計算上はそうなりますが、私が計算できない世界ですから好きなようにしたらいいじゃありませんか。

「そういう言い方はないやろ、真剣に悩んでいるんやで」

 

それで、砂町の出口(跡取り)は、居るのですか?

「それが、時間が無いさかい困ってるんやないか」

(なんだ、私に金を作ってくれの話だけだ)

 

いやぁ、今の私には無理ですね。せめて2週間あれば話も違ってきますが。

「投資家に無理言えんやろか?」

 

まったく無理です、この状態で話を持って行った瞬間、付き合いが無くなります。(冷たいようだが、上野を諦めさせるしかない)

 

「そうか、もし砂町のケツ持ってくれる業者がいたら、ユキオさんにつなぐから、その時は勘弁やで」

 

: この判断は、難しい。三波さんの立場なら私もそう考えるかも知れない。

しかし、いつの事やら分からない、上野より確実な砂町の5000万を私なら選択する。7~8億の借金を抱えて居たら上野を選ぶかも知れない。