ツバキの実を、ちょいといただいて、きようの散歩も終わりました。夢想庵の玄関に、これを飾り、しばし、思いにふける。また、たのしからずや。

 昼には昼の楽しみがあり、夜には夜の楽しみがある。この季節、草木がものすごい勢いで伸びてくる。忙しい。口は出さなくてもいいが、手足はしっかり出さねばならない。

 いい姿になっているか。庭の姿は自分の姿でもある。枝ぶり。葉の茂り。自分の姿と同じだ。

 

 きょう、元杖道会員の上野さんのお宅の前を通った。奥様が、一応のかたずけをなさっていた。一応の、というのは、つまり私が切りっぱなしで辞した庭。その主との愛の巣は、外から見れば、きれいにかたずけてあった。私が切りっぱなしで放置した玄関の植樹の残材。「あとは頼みしましたぞ」と無言で辞したが、きょう前を通ったら、きれいになっていた。

 

 夫のいない家に、ひとりで住む。夫が愛した庭。そして木々の数々。自分だけではどうすることもできない、だろう。

 生前、杖道というものをやっていたおかげで、その仲間が剪定などをやってくれた。

 庭を荒してはいけませんよ。杖道の仲間は、口には出さないが、内心では思っている。

 夫の愛した庭じゃないですか。きれいに維持するのが残された者のつとめではないですか?と。