「今の会社は実は行き先が不安定」
「ライバル会社に負けるかもしれない」
「親会社が買収される噂がある」
「転勤になりどこかへ飛ばされてしまう可能性がある」


今まで一度も聞いた事がなかった、会社の裏事情を饒舌に語る彼。


自分は悪くないと正当化しているようにも思えたが、働くのは彼で。
身体の事もあるし、今のスキルを活かして転職出来るのであればステップアップに繋がるのでは?とも思った。
何より、年齢的にも転職するなら早い方がいいのかもしれない。


結婚したいと思っている相手に申し訳が立たず、不甲斐ない思いをしているのだろうとも思った。きっと悩んで悩んで出した答えであるはず。
彼だってこうなりたくてなった訳じゃない事くらい分かっているから、


「応援するよ」


と言って彼のやりたいようにやればいい。と背中を押した。
なんとなく彼なら大丈夫だろう、謎の自信があった。人当たりもよく、周りから信頼されているように思えたから。



そして、転職活動をし始めて1ヶ月もたたないうちに無事に転職が決まった。



給料面や待遇も、前の会社よりはかなりいいみたいだった。