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それはユッコこと岡田有希子さんが空の下からいなくなって、10年ほど経った頃。

貧困の学生時代を終え、仕事にすっかり慣れた20代前半のわたしはなぜか、根拠のない自信に満ちていた。

いま考えれば、彼女いない歴=年齢という現実に目を背けていただけなんだけど。

 

虫の声にようやく秋の気配を感じる、夕暮れの交差点で。

信号を待つわたしに声を掛けてきたのは、整った顔立ちをした30代半ばの女性だった。

 

「約束してた相手に振られた、奢るから一緒に飲まない?」

柔らかい笑顔をみせて彼女は言った。

 

これってひょっとして噂に聞く、選ばれし男が享受する逆ナンというやつだろうか。

実はそのとき、わたしも約束していた相手に振られてしまって途方に暮れていたのだ。

 

目の前に現れた女性は、貴重な休みが残念な休みになりつつある自分に、ヨコシマな期待をチョッピリもたせつつあった。

キレイなお姉さんと只酒、それからどんどこしょ…極めてオイシイ展開が待っているかもしれナイト。

 

「喜んでご一緒します」

そう口にしようとした刹那、なぜか脳裏をよぎったのだ。

数時間後、ボコボコにされ身ぐるみ剥がされる自分の姿が。

 

あれが、虫の知らせというものだったんだろうか。

あのままお姉さんについていったら、それこそ虫の息になっていたかもしれない。

 

美人局(つつもたせ)。

あの頃わたしは、そんな言葉さえ知らなかったんだ。

 

 


1985年秋、日曜の深夜ラジオに「岡田有希子の夜遊びしナイト」という素敵な時間が訪れたといいます。「さあ!それでは今日も有希子と一緒に、しないとナイト…しようね!」

photo by yukikostarlight