3月11日(日)

日本との時差は9時間だが、震災の時間には必ず黙祷をしようと決めていた。
明け方に黙祷。
それから実家の母にメールしたら、母も黙祷したといっていた。
実家は福島県の会津若松市。
いまだ解決していない問題が沢山ある。
どこにいても、あそこが故郷であることに間違いはない。

ところで、朝はいつも近所のカフェに行くと決めている。
至る所にある店なのだが、うちの近所のは特に感じがいいのだ。
中で食べていくほうが若干高くなるのだが、それでもカフェでその日やることを整理したり、ゆっくり芝居のことを考えるほうが、そこからの動きがスムーズになる。

この日も朝はコーヒーを飲みつつあれこれ。

そういえば数日前、このカフェでも道を聞かれた。
ロンドンに来て2回目だ。

っていうか、おかしくないか?
道聞かれ率、高くないか?

年配の男性で英語の感じからするとイギリスの方ではない。
彼は住所の書いてある紙を見せ、こう聞いてきた。

「このChiltern streetは右ですか?左ですか?」

…分からない。
「すみません、分かりません」と言おうとした時、思いとどまった。
そういえば前回も分からないと言ってしまった。
特に前回はロンドンに来て2日目。
ふいに道を聞かれたので、そう答えてしまったのた。
わたしはこれからの先の自分のことを考えた。

これだけ道を聞かれるわたしのことだ。
もしかしたらこの調子で、これからも道を聞かれるのではないか?
その度に「すみません、分かりません」と言っていたら、やがて罪悪感に苛まれていくのではないか?

わたしはさっとスマホのマップを見た。
Chiltern street……左だ。左に間違いない。

「ここを左です」

わたしはそう答えた。すると年配の男性は、

「ありがとう!イタリアから来て道が分からなくてね!」

と言い、嬉しそうに去っていった。
2度あることは3度あるのだ。
まだこれは序章に過ぎない。
そんな気がした。

というわけで、この日も道を聞かれないかびくびくしていたが大丈夫だった。

夕方、前述のSさんに誘われて教会でやるオペラを観に行く。
初めてのゾーン2だ。
ロンドンはセントラルから円状にゾーンで分けられていて、真ん中エリアがゾーン1、そこから離れてると、ゾーン2、ゾーン3となっていく。
地下鉄、つまりundergroundではなく、初めてovergroundに乗る。
やはりなんとなく雰囲気が違って面白い。

かなり歩いて道を間違えたかな、と思い始めた頃に辿り着いたのは、とても古い教会。

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セットのようないい雰囲気だ。
オペラは『ヘンゼルとグレーテル』。
とても面白かった。
ステージがない分、色んな工夫がされていた。
内容を知っているだけに、次のあのシーンはどうやってやるのかなという楽しみも。
そして歌がめちゃくちゃ上手い。

まわりのお客さんはおそらく地元の方が多めのようで、休憩中は社交の場の雰囲気。
いわゆる地元感も感じられて面白かった。
観に行って良かった。

帰りは身体がとても冷えたのでトムヤムクンを食べた。
美味しかったのだが、ちょっとだけ日本料理が食べたくなった。