飛行機が止まって1時間。

ブーーーンとエンジンの空しい音が身体に響く。

 

ところでわたしには、心の友がいる。

飛行機の翼の上に3つくらい並んださらに小さい羽根のような物体がある。

わたしはそいつらをひそかに「小さい翼ちゃん」と名付けていた。

これは国内で飛行機に乗る時からそうだった。

この小さい翼ちゃんたちは飛行機が飛び立つ時にぱかぱかと開いたり閉じたりしながら、

たぶん風を調整しているんだと思っている。(ろくに調べてないけど)

いつも健気で可愛い。

だが愛しのその子たちもまだ全然動かない。

心の友よ、この飛行機は飛び立つのかい。

というか、君らが活躍する時は来るのかい。

 

途方に暮れていると、突然エンジン音が大きくなり出した。

もしかして…もしかして…

小さい翼ちゃんたちが…ぱかぱかしてる!ぱかぱか!

頑張れ!負けるな!頑張れ!

そうして凄い風にあおられながら、とうとう飛行機がセントレアを離れたのだ。

今日ほど翼ちゃんたちが可愛く見えたことはない。

ありがとう、翼ちゃん。

っていうかまだセントレアだ。

 

朝の9時半過ぎ、ようやく羽田に着いた。

よかった。11時半に出発するんだからまだ時間的にも余裕だ。

ほっとして、人の波についていく。

ところが、ここでひとつ不安があった。

 

荷物って、そのまま飛行機に積み替えて貰えるのか?

 

お恥ずかしながら、マジで海外初めての人間、それがわたしだ。

それで不安になって空港の人に聞いた。

 

「すみません、ヒースロー行きに乗り換えたいんですけど…」

「ああ、それでしたら、搭乗ロビーを出て、8番のバス乗り場でバスに乗ってください」

「分かりました、ありがとうございます」

「搭乗ロビーです。お気をつけて」

 

搭乗ロビー、搭乗ロビー…。

探してみるが、搭乗ロビーという名前はない。その代わり、「搭乗口」という名前の出入り口を見つけた。もしかして…ここか?

どう見てもここしかない。わたしはそこをすっと出た。

振り返るとそこにはこう書かれていた。

 

「一度出たらもう二度とここからは入れません」

 

なんだ。この恐ろしい言葉は。

おまけに警備員がしっかりと立っている。

途端に、とても焦り出した。

わたし、もしかして、出てはいけないところを出たんじゃ…。

だって名前だって搭乗ロビーじゃない。搭乗口だ。

 

やばい!間違えたんだ。

 

慌てて戻ろうとしたら、警備員に両手を大きく広げて止められた。

そんな止められ方、映画でしか見たことない。

 

「もう入れませんよ」

「すみません、わたし、乗り継がなきゃいけないのに、出てしまったみたいなんです」

「それなら二階に行って、事情を説明してください」

 

全速力で二階に行く。

ロンドンにたどり着けるのか。わたし。

 

っていうかこの雑記、いつロンドンに行くんだ。