フランクフルトのオペラ座では専属ソリストとダンサーが繰り広げる近代オペラを常時上演している。
ビゼーの『カルメン』を観てきた。
特筆すべきはまずその演出の特異性。
舞台は階段のみ。
歌い手は演技をしながら階段を昇ったり降りたりと忙しい。
更に、ヒロインのカルメンは、なんとゴリラの着ぐるみをかぶって登場する。
衣装も白シャツに細めの黒ネクタイ、タイトな黒ズボンというメンズライクなスタイル。
娼婦役らしく胸元を露出した従来のカルメンとは別人のように見える。
しかしなぜか艶めかしく感じさせるのは役者の力量か、演出の妙か。
いずれにしろ歌と演技の実力が試される演出であることに違いない。

更に驚いたのが役者のセリフがないこと。
台本の台詞部分はすべて字幕で紹介される。
台詞に代わってシーンをつなぐのが専属ダンサーによる華やかで躍動感あふれるダンス。
男女ペアが舞うクラシックバレエから、男性の力強い肉体美が強調されたソロの現代舞踊、そして、『カルメン』らしい迫力のフラメンコ。
加えて、専属オケは出演者のパフォーマンスと実に息の合った演奏をする。
これはもはや、私の知るオペラではなく、オペラ・エンターテイメントである。
出演者については、カルメンを演じたフランスの新進歌手、Gaëlle Arquezが異彩を放っていたように思う。
反して、Don Hose役の男性は美しい声の持ち主であるものの、演技か生来のものか、哀れな雰囲気をまとった腹のたるんだ中年男に見えた。
フランクフルト滞在中に他の演目も是非観てみたい。
100ユーロ未満で良い席が確保できるので、観光にいらした方にもお勧めしようと思う。
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