「兄を持ち運べるサイズに」 素敵な家族のお話でした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「兄を持ち運べるサイズに」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

ある日、理子のもとに、何年も会っていない兄が死んだという知らせが警察から電話が入る。理子は東北へ向かい、警察署で7年ぶりに兄の元妻・加奈子と、その娘・満里奈と再会。兄が住んでいたアパートを片づけ、壁に貼られた家族写真を見つける。理子たちはそれぞれに家族を見つめ直すことになる。

というお話です。

 

 

作家の理子は、ある日突如警察から兄の急死を知らされる。家で倒れていたのを兄の息子の良一が見つけたらしい。妻と離婚後、良一と二人で住んでいたのだ。兄が住んでいた東北へと向かいながら、理子は兄との苦い思い出を振り返っていた。

警察署で7年ぶりに兄の元嫁・加奈子と娘の満里奈、一時的に児童相談所に保護されていた良一と再会する。警察から兄の遺体を引き取り、お葬式を済ませ荼毘に付し、兄は「持ち運べるサイズ」になった。



 

そして、兄たちが住んでいたゴミ屋敷と化しているアパートを片付けていた3人が目にしたのは、壁に貼られた家族写真の数々。子供時代の兄と理子が写ったもの、兄・加奈子・満里奈・良一が作った家族のもの。

兄の後始末をしながら悪口を言いつづける理子に、同じように迷惑をかけられたはずの加奈子はぽつりと「もしかしたら、理子ちゃんには、あの人の知らないところがあるのかな」と言う。兄の知らなかった事実に触れ、怒り、笑って、少し泣いた、もう一度、家族を想いなおす、4人のてんてこまいな4日間が始まった。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、面白かった。思った以上に好感の持てる映画でした。とにかくキャスティングが素晴らしい。内容は大体予想通りのお話だったのですが、柴咲コウさん、満島ひかりさん、オダギリジョーさんという3人がこんなにもハマるかというほど、上手くハマっていて、また演技が上手いので泣けるんですよ。この3人が上手いには十分に知っているけれど、それ以上に気に入りました。

 

ある日突然の兄の訃報。驚いた理子ですが、実はどこかホッとする気持ちがありました。何故なら、兄は人間として酷い性格だったからです。昔から自分勝手でズボラだった兄ですが、何故か母親に溺愛されており、理子はそんな兄が妬ましかったんです。

 

兄は実家のあった愛知から東北に引っ越し、息子と二人で住んでいました。妻の加奈子と離婚して、娘は加奈子が息子は兄が引き取ったようです。警察で兄を引き取り、施設に預けられていた良一も集まって、葬式、火葬を済ませます。骨になり箱のサイズになった兄を受け取ります。理子は長年心に刺さったトゲが抜けてホッとしたようなそんな気持ちだったのではないかと思いました。

 

 

その帰りに施設の人が理子にこっそりと「良一くんは下着サイズが小さくて施設で用意をしました。」と告げるんです。ちょっとした一言ですが、酷く衝撃を受けました。この言葉だけで、良一が父親に虐待を受けていたのではないかと思わせるんです。”サイズが小さくて”という事は買って貰えていないという事で、もしかしたら食事もろくにさせて貰えていなかったかもしれないんです。一瞬、ゾッとしました。

 

でも、兄の住んでいた家を掃除し始めると、段々と誤解が解けていくんです。兄がいつも理子に、金の無心をするための嘘をついているという内容のメールを送っていたのですが、それが嘘ではなかったかもとなって行くんです。嘘のようなホントの事だったらしいのですが、元々疑っているから嘘に聞こえてしまうんですよね。理子の気持ちも理解出来るけど、兄の気持ちも解ってくるんです。

 

 

そんな理子とは対照的な加奈子の気持ちも描かれます。彼女はきっと、どこまでも上手く生きることが出来ない夫を支え続けることに疲れてしまって離婚したんじゃないかな。勝手に借金を作ったと言っていたし、一緒にいたら子供たちも可哀想だし、夫を甘えさせるばかりだと思ったんじゃないかと感じました。嫌いになって離婚したんじゃないと思います。

 

上手く生きられない人っているでしょ。この兄は、様子を見ているとどこかネジが外れているようで、境界知能と言われる方なんじゃないかなと思いました。特徴が同じなんです。感情をコントロール出来ず、融通が利かず、反省が出来ない。同じ失敗を繰り返すので仕事も続かず、お金も溜まらず。でもスポーツ万能だったようだし器用貧乏だったのかな。

 

 

理子は結婚して二人の息子を育てており、翻訳家でエッセイストもしています。有名になり著書もあったので、兄はお金に困っているのに妹の本を何冊も購入して周りの人々に配っていたようです。こういうところが境界知能かなと思いました。その本を購入しないで息子の下着を買えばよいのに、そういう総合的な考え方が出来ないんですよね。息子は成長するということもよく認識出来ていなかったのかもしれない。

 

現代だと、境界知能のようだからお金の管理をさせないとか、仕事場でもそれなりの仕事を与えるとか、社会が勉強していてそういう方々も気持ちよく仕事が出来て生活が出来るようにと変わってきているとは思いますが、そう簡単にすべての人が対応してもらえる訳では無いので難しいですよね。

 

この映画で思ったのは、そういうボーダーラインの親の元に生まれた子供たちをどうしてあげたらよいのかという問題です。普通に生活が出来ていれば良いけど、この映画のように周りに気付かれずに苦しんでいる場合が多いと思うので、何か助けてあげることは出来ないのかなぁと思いました。

 

 

話が反れましたので映画に戻ります。そんな兄をどこまでも疑って、何も知ろうとしなかった自分を理子が顧みる映画でした。よく考えてみると、いつも兄は理子のことを考えて、助けてくれようとしていたんです。言葉や考えが足りずに、理子が思うような答えを返してくれなかったかもしれないけど、気持ちはずっと理子に向いていたし、家族に向いていたのだと思います。そんな事が描かれた良い映画でした。

 

理子を演じた柴咲コウさんはオーラを消して普通の主婦を演じてくださっていたし、元妻の加奈子を演じた満島ひかりさんは、やっぱり凄く上手かった。溢れてくる感情という表現が素晴らしくて、やっぱり彼女が演じると深くなるなぁと感じました。もっと満島さんが観たいなぁ。以前、ハムレットの舞台で満島さんがオフィーリアを演じていて、その時も素敵だなぁと思ったのですが今作でも好きになりました。

 

 

私はこの映画、超!超!お薦めしたいと思います。最近、邦画が豊作だなぁ。どの邦画を観ても、なんだか気持ち良くなって嬉しくなります。中野量太監督、家族を描くのがとても上手いですもんね。今回も泣かせていただきました。ありがとうございました。素晴らしい作品です。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「兄を持ち運べるサイズに」