「あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。」
を観てきました。Fan’s Voiceさんの独占最速試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは
1995年、テグ。家族の問題や学校のイジメにストレスを募らせていたドンジュンはカンヒャンに恋をする。しかしその日々は突然に終わりを迎え、カンヒャンはテグを去ってしまう。それから25年後。ドンジュンは後悔を抱え、「もしあの時、別の選択をしていたら?」と3つの異なる2020年秋を生きて、足りない何かを探し、やがて本当の自分を見いだしていく。
というお話です。
1995年、テグ。喧嘩の絶えない両親や学校でいじめられる日々に鬱憤を募らせていたドンジュン。ある日、転校してきたカリスマ性溢れる男友達のカンヒャンに恋をした。彼は「マン・オン・ワイヤー」の本を自分のバイブルのように思っており、いつも緊張をもって生きることに幸せを感じていた。
カンヒャンは母親と共にドンジュンと同じマンションの上の階に引っ越してきた。ドンジュンの数学の成績が悪く、勉強を見てくれるようになり親友となった。しかし、彼との穏やかな日常は思いがけない事件で終わりを迎え、カンヒャンはテグを去ってしまう。
想いを言葉にできず、後悔を抱えたまま大人になったドンジュンは、不幸で惨めだと感じる人生を消化しながら、ふと思う。「もしあの時、別の選択をしていれば?」
テグから外へ出ずに高校教師になる運命、アメリカへ交換留学しソウルで大学教授になる運命、プサンで結婚離婚をし父親として生きる運命。3つの異なる2020年秋を生きるドンジュンは、足りない何かを探し続け、やがて本当の自分を見つけて行く。後は、映画を観てくださいね。
派手な映画ではありませんが、雰囲気の良い、何とも温かい気持ちになる映画でした。途中はシビアで辛い部分も多々あるのですが、どんな人にでも人生紆余曲折、色々な出来事があって、全てをひっくるめてプラスマイナス0になるのだと思うんです。最後に笑えたなら、それまでにあった辛い事なんて吹っ飛んじゃうでしょ。
というか、最後に笑えるように自分で持って行くのが大人ってもんじゃないのかな。いつまでも自分は不幸で惨めだと思いながら生きるなんてやってらんないでしょ。力技で自分はしあわせなんだってところまで持ち上げていくのが人間でしょ。私はそう思って生きてきたんだけど、違うのかしら。
この映画では、ドンジュンはもしもの3パターンを自分で経験してみるんです。高校を卒業して、テグの大学へ行って高校の教師となるか、ソウルの大学へ行きアメリカの大学との交換留学生として勉強をして大学教授となるか、プサンで仕事をしながら離れて暮らしていた息子と一緒に暮らすことにするか、3つの都市での生き方を考えてみるんです。
でもどの生き方を選んでも、カンヒャンとの思い出は変わらないし、自分が前に進む一歩を踏み出さないとどの人生でも変わらないという事に気が付いたと思うんです。人生は、誰のせいでもない、自分が選択して作るものなんです。
ドンジュンは父親の思いやりの無さに幻滅していて、彼の姉は母が癌で亡くなって直ぐに再婚したような父親を許していないんです。姉が父親との連絡を切ったせいで、ドンジュンが姉の分も引き受けていて、父親の新しい家族と食事をしたりしているのですが、本当に嫌そうでした。
この父親、結婚している時に既に不倫していたんじゃないかな。だって再婚相手との子供がドンジュンとほとんど変わらないんですから。酷いですよね。そんな父親のデリカシーの無さがドンジュンを深く傷つけているのですが、ドンジュンは言い返さないんですよ。これ言わないと鈍感な人間には解らないです。
ドンジュンはとても繊細で、色々な事で傷ついているんです。唯一カンヒャンだけが彼の味方で、学生時代はカンヒャンがいてくれたから何とか学生生活がおくれたんだと思うけど、ドンジュンはその分のお返しをカンヒャンに出来なかったんです。辛い時に一緒についていてあげるのが友達でしょ。でもドンジュンは出来なかったので、心にしこりが残っているんです。
なんか3種類のもしもを描いているんだけど、私が思うに、実際のドンジュンは最後にカンヒャンに話をしたんじゃないかな。あの話をする場面が本当にあったことじゃないかと思いました。だからきっと、再会できるはずなんです。きっと、それが本当にドンジュンだったんじゃないかな。
何もしてあげられなかったと思っていたけど、3種類のもしもを頭の中で描いてみて、その中で自分が最後にしていた行動を思い出したんじゃないかしら。どんな選択をしたとしても、あの時に最後の会話をしたことで、きっとしあわせな未来に繋がっていたのだと思います。彼に逢えたのは本当なんじゃないかな。
ドンジュンはカンヒャンに恋をしたとなっていますが、この恋は男女の恋愛のようなモノではなく、淡い恋心だったんじゃないかな。男女とかは関係なく、尊敬して好意を持っているという恋心で、結婚とかそういう恋では無かったような気がするんです。純粋な憧れというか、”好き”だったのではないかと私は思いました。クィアとかLGBTQとか、そういう世界とはかけ離れた恋だったんだと理解をしました。
だから女性と結婚離婚をして15歳の息子がいる”もしも”もあったんだと思うんです。同性に憧れて好意を持つってあるでしょ。性欲とかとはかけ離れた”好き”で、もちろん他の人といたりすると嫉妬したりして、そんな好きもあるじゃないですか。ドンジュンにとっては、青春時代になりたかった理想の男性像だったんじゃないかな。
そんな恋心がとても素敵に見えました。美しいんです。何の欲もない、ただ本当に好きというだけの存在があることが、どんなに心の支えになるのか、それが良く描かれていたと思いました。好きな人がいる、いたっていうのは幸せですよね。好きと思っている自分も輝いていたはずだから、そんな時代を懐かしく思うのは当たり前です。良い思い出と思って、大切にしたらよいと思いました。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。ちょっと解り難い構成ではありましたが、彼が抱いていた”好き”は純粋で美しいものでした。周りによって壊され、伝えられなかったけど、きっといつかその”好き”は昇華できるのではないかと思います。良い映画でした。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。![]()
「あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。」









