病院に駆けつけると、まだ手術前のトラがいた。
泣き腫らした目で、黄色いアヒルのぬいぐるみを握りしめてた。
怖がって泣いてたトラに看護師さんが持ってきてくれたそう。
「イエローっていうんだ。関西弁で結構キツい事言うんだけど、ドクターなんだ、すごく心強いんだ。」
キャラ設定までされてた。笑
ありがとうね、イエロー。
トラの鎖骨は上下にボッキリと折れていて、プレートで固定する手術をすることになった。
いつ手術が始まるのかはわからない。
ドクターの手が空いたら、ということなのだろう。
「あと1時間以内には手術になると思うよ」
それまでの時間、トラを囲んで夫と楽しい話を沢山した。
私も夫も鎖骨を折ってるし、その場にいた看護師さんも「俺も折ったよ」と言ってた。
私は中1の時だったから、トラが最年少レコードだねなんて笑いにして。
そして、手術の時が来た。
麻酔師のドクターは、山で会うと一緒にパウダーを滑るスノーボード仲間だった。
トラを見て少し驚いて、そして安心させてくれた。
先に少しリラックスする点滴を打ってくれた。
ここで一旦お別れ…。
ストレッチャーに乗せられ、手術室へ運ばれていくトラ。
顔は見えなかったけど、絶対泣いてるだろうと思った。
私も見送りながら涙が溢れてた。
トラには見せなかった。私の不安な顔は見せちゃいけないと思った。
私の肩を抱く夫の目にもたぶん。。
だって、全身麻酔なんて初めてだし。
こんな小さい体で。
信じよう。
がんばれ、トラ。
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