自分に自信を持ちたい。
ちゃんとやれること見せて認めてもらいたい。

現状に満足せずに上を目指すのは
そんな単純な気持ちからなのかなと、私は思います。


旅に出るたび持ち歩くパスポートケースに入れてある数枚の写真の中に、初めてバックカントリーで山小屋に泊まって滑った時の写真があります。

カナダ Whistler の奥にある Fissile という山で、Blackcomb から山を幾つか歩いて越えてたどり着きました。

私が見上げている、「バナナシュート」と呼ばれる正面から左下に抜けているシュートを滑り降りました。
当時の私にしては怖くてたまらない急な斜度でした。後ろから追いかけてくる表面の雪崩を感じながら滑った初めての感覚。

この日は満月を狙っていて、月が真上に登る真夜中に起き出し、月明かりでのスノーボードにも挑戦しました。

凍える雪山の真夜中は寒くて寒くて、ブーツが冷たくて足が痛くてたまらなくて。
その過酷な辛さは笑えるほどでした。

そしてヘッドライトを点けて滑った月明かりの雪山は、宇宙みたいでした。本当に。どこか違う世界で滑ってるみたいでした。

一生忘れない想い出です。

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2000年、私はいろんなメディアで沢山取り上げてもらい、トッププロスノーボーダーになっていました。

日本で行われたcore xtreme gamesで、ビッグエアーとクオーターパイプで表彰台に上がり、それまでやって来たハーフパイプから新たな挑戦を形に出来た頃でした。

日本初の Ultimate Awardで人気投票1位となり華やかなステージで表彰されました。
しかし、ここまで来たという嬉しさや実感よりも私はどうやったらもっときちんと自分を認めてもらえるかと考えていました。

これで満足なんかしてない、もっと出来るんだってことを見せたいという気持ちの方が強くありました。

今の自分が自分で思う以上に人気があることが何だか恥ずかしくもあり。もっと本当に本物になりたいと思っていました。


だからそんな日本の環境を飛び出して、初心に返り新たな自分を切り開きたいと改めて拠点にしたカナダ。
20才の頃ここで初めてスノーボードを履いた日から、7年後のことでした。

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写真の裏に書いていた、徳川家康の家訓。
想像以上にプロスノーボーダーとしての環境は良くなっていたけれど、現状に満足する自分になりたくなかった。

だから、こんな風に自分に言い聞かせていました。


あれから14年。
私はずーっと忘れないでいました。
あの山の世界を。

スノーボードを始めて22年目。
今も私はずーっと、スノーボードが好きです。


そして、今の自分が自分のベストだとはまだ思えないです。
もっと出来ることがあると思っています。