入院27日目 日曜日
よく晴れた日。
ここ数日、新入り・津田の影響で、部屋は基本的に留守にしている事が多い。
食事後と睡眠時以外は私はベッドで横になっていない。
昨日の食事に至っては、全員の食事中に津田が声を出しながら便を始めたので、外の看護師さんを捕まえ、
「本意ではない、こんな事は言いたくない、談話室で食べて良いか?」と言った。
私にはその我慢はムリだった。
なので、普段は談話室に1人ポツンと座っている。
コレは入院当初からその傾向にあり、例外だったのは2人部屋に移動した数日間だけだ。
しばらくの期間は1人ポツン状態だったが、当然そうではない日もありそんな日は軽く話し込んだりしていた。
全員、例外なく女性患者。
談話室まで来れる男性は限られているし、来れる人も来る事は基本ない。
数日前からは、私を含め7名程の談話室集会となっている。
看護師さん曰く、通称「女子会」
この女子会で私は質問攻めに合ったり、絶対ダメだと思うがジュース代・オヤツ代と称して500円を貰ったりしているごめんなさい。
500円は返そうとしても受け取ってくれない。
おばあちゃんあるある、男孫は無尽蔵に食べると思っている。
孫でおかしくない年齢の私もその対象となっている様だ。
段々と人数は減って行きそうだ。今日1人、明日も1人、おばあちゃんが退院となる。来週も1人と言っていた。
寂しくなるがそれは良いことで喜ぶべきなんだと思う。
そして今日、
お風呂から上がり洗面所で化粧水を湯水の如く浴びていた所、洗面所からすぐ近く、ある部屋から泣き声が聞こえてきた。
泣き声が聞こえてくるのは珍しい、と言えばそうなのだが無い訳ではない。
しかし私はそのくぐもった独特の泣き声に違和感を覚えた。
閉め切られている部屋にも。泣いてるのに誰も対応しないのにも。
私がボーッと視ていると偶然、近くを通った私とよく喋るスタッフが教えてくれた。
先程、亡くなった、と。
泣いているのは家族だ、と。
青天の霹靂だった。
私がいる階の患者さんは、症状としては他の階に入院している患者さんのように重症ではないハズだ。
他の階に居た方が退院を目標に来る階。
私の様に最初からこの階に入院するのは10人に1人ぐらいだと、以前耳にした。
もちろんソレが突然なのは分かっていた…いや、分かっているつもりだったんだ私は。
何故…。うん、何故なんて無意味なのかも知れない。
亡くなる必然性や理由は何も無い、これが結果。
亡くなった方の家族だって分かっている。
思うトコロもあり気分が乗らなかったので、女子会には行かなかった。
風にあたりたくなり屋上へ行った。
そして深い意味で理解に至った。
私がそうなっても泣く者は居ない。結果だけが残る。
それは歴史。自分が積み上げた時間の結晶。