確か12.3年かな。
当初は寄席はもちろんのこと、志ん朝のCDで落語を覚えた。粋で端正な江戸コトバが耳に心地良い。聴いているだけでその時代の風景や演じているその人物に入りこんでいく。
そして、志ん生。とにかく面白い。ハチャメチャな人だったらしいけど、その人間味も含めて大好きな落語家だ。著書のびんぼう自慢もなめくじ艦隊も絶妙。
二人の親子と較べる少し地味だが志ん朝の兄、馬生。談志が大好きだったらしい。
この人の「笠碁」をたまたまラジオで聴いて惹きこまれた。雨のシトシト降る情景、暇を持て余すご隠居さんのイライラした感じが映画を観ているように伝わってくる。
この3人の親子はナマで見ることができなかったが、少ない動画でその芸を堪能することができる。
今観たい落語家。市馬、喬太郎……らたくさんいるけど、この人のこの演目が聴きたいという域までにはいってない。
あの時聴いたあの演目が忘れられない、という落語に出会いたいと日々願っている。
ところで落語の効能。
不思議と映画では味わえない、一気に江戸の世界に連れてってくれるような楽しさ。とぼけた熊さん八っさん、横丁のおかみさんや海苔やのばあさんに物知りなご隠居さんたちが歩き出す。
土間の土くれや畳の毛羽立ち、薄っぺらい座布団。狭い路地裏とドブ板と野良犬、もろもろ全てがイメージできる。
落語はけっこうためになることもある。もともと、お坊さんの講話から端を発したというらしく聴くと何故か心穏やかになる。
また季節毎の風物詩や、親子や夫婦の情や善良な心持ちなどを教えてくれる。
人情噺には感情移入し、滑稽話はただただ笑う。シンプルな世界。
CDなどで聴くのもいいが、ナマで観るのをお勧めしたい。座布団の上のエンターテイメントを是非是非。