この街も老人ばかりに夾竹桃
( このまちも ろうじんばかりに きょうちくとう )


この時期、近辺で見かける花木といえば「紫陽花(あじさい)」だが、それ以外では「夾竹桃(きょうちくとう)」が挙げられる。街路樹、公園樹として、或いは庭木としてよく見かける。



ご存じの方も多いと思うが、原爆投下により75年間草木も生えないといわれた広島で、いち早く花を咲かせた花木であり、昭和48年に広島市民の投票により「市の花」に選ばれたそうだ。



事程左様(ことほどさよう)に、「夾竹桃」は生命力、再生力が強い樹木である。近辺でも樹高3m程の「夾竹桃」が数年前にばっさり切られたが、1~2年で再生し、今ではかつてと同じぐらいに生長している。

本日の掲句は、そんな「夾竹桃」とは裏腹に、だんだんと老人ばかりになっていく街の行く末を按じ詠んだ句である。「夾竹桃」は夏の季語。

 



因みに、「夾竹桃」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 真白きはミゾレの如き夾竹桃
② 強き日を浴びてまた咲く夾竹桃
③ 残暑にて三度咲きたる夾竹桃 

*三度(みたび)


 

①は、白花の「夾竹桃」を見て詠んだ句。中七の「ミゾレ」は、冬に降る霙(みぞれ)でなく、かき氷の「ミゾレ」のこと。シロップには赤、緑、黄などがあるが「ミゾレ」は透明。
②は、6月頃咲き満開になった後、一旦花を全て散らせた夾竹桃が、再び強い日差しを浴びて咲きだしたことを詠んだ。
③は、それまで咲くのは二度までと思っていたが、立秋の日以後に再び咲きだしたことに驚き詠んだ句。どうやら三度まで咲くようだ。秋の季語「残暑」を入れて秋の句とする。

 

 

「夾竹桃」は、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑小高木である。インド原産で日本へは、中国を経て江戸時代中期に伝来したといわている。大気汚染などによく耐え、防音効果も期待できる。但し、強い経口毒性があり、調理に用いたり、家畜が食べたりしないように注意が必要とのこと。



花期は長く、6月~10月まで断続的に開花する。近辺の「夾竹桃」について言えば、一回目は6月初めに咲き、中頃に散っている。二回目は6月下旬に咲き、7月中旬に散っている。そして、三回目は8月初めからポツポツと咲き始める。



花は、五弁の一重咲きのもの、八重咲きのものがあり、色も紅、ピンク、白、黄色などがある。名前は、葉が竹に、花が桃に似ていることに由来する。「夾」は「はさむ」の意。



「夾竹桃」を詠んだ句は比較的多い。本ブログでも、これまで30句近く取り上げたが、今回はそれ以外のものを新たに選び掲載した。


【夾竹桃の参考句】
夾竹桃町中の過疎進みをり /松崎鉄之介
煙突のけむりまつすぐ夾竹桃 /佐藤麻緒    
錆び水の澱む運河や夾竹桃 /岸恒雄
夾竹桃裏門いつも閉ざされて /熊谷みどり
城壁の崩れを隠し夾竹桃 /龍神悠紀子