山吹やかつては金貨に目がくらみ
( やまぶきや かつてはきんかに めがくらみ )


まだ立夏(りっか)前だが、昨日、一昨日と夏の季語である「石楠花(しゃくなげ)と「著莪(しゃが)」を取り上げた。ただ、春の季語の花木も、まだいくつか残っている。その一つが、今日取り上げる「山吹(やまぶき)である。

 



「山吹」は、その色が黄金色(こがねいろ)であることから、よく小判や大判を「山吹色のお菓子」といい、賄賂の喩えに使われてきた。掲句では、そんなことを思い出し、昨今の裏金にまつわる話に絡めて詠んだ。



ただ、何となく中途半端なので、これを上の句として、以下の句を付けた。

今は金庫に札の束

勿論、札束を金塊にしている人もいると思うが・・・。



ところで、こういう五七五七七の形式は和歌(短歌)で使用されるが、主として滑稽や皮肉、風刺などを主題としたものを狂歌(きょうか)という。よく知られているもとしては、以下のものがある。

泰平の眠りを覚ます上喜撰たった四杯で夜も寝られず

 



この歌は、1853年浦賀沖にアメリカの船団四隻が来航し、それに驚いて夜も眠れないほど大騒ぎだったことを詠んだ歌。宇治の高級緑茶「上喜撰(じょうきせん)」を「蒸気船」にかけているところが味噌。「四杯」の「杯」は、お茶にも船にも使われる数詞。



ついでに言えば、俳句の五七五の形式で、もっぱら滑稽や皮肉、風刺などを主題したものは川柳(せんりゅう)と呼ばれる。季語などはあまり気にしなくてよいが、これはこれで結構難しい。



話は戻って、「山吹」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 山吹の放物線にしなりたる
② 山吹の息吹激しき里の道
③ 山吹の黄金に光る御所の裏




①は、川べりでやわらかな放物線を描いて撓(しな)っている「山吹」を見て詠んだ。花が枝に沿って流れ落ちるように咲いている姿は、楚々として美しい。
②は、「山吹」が田舎の小道に勢いよく咲いているのを見て詠んだ句。「山吹」と「息吹(いぶき)」の語呂合わせも多少意識して詠んだ。
③は、京都御苑を散策した時に、「山吹」が春の柔らかな陽ざしを浴びて輝いているのを見て詠んだ句である。


*八重の山吹


「山吹」は、バラ科ヤマブキ属の落葉低木で、日本と中国が原産地。花期は4月~5月。花は一重のものと八重のものがある。一重のものの花弁は5枚。八重のものは雄しべが花弁に変化し、雌しべも退化したので実がならない。

尚、「白山吹」は白い花をつける山吹のことではなく、バラ科シロヤマブキ属の落葉低木で「山吹」とは別属である。花や葉の形が似ていて、花が白いのでこの名前が付けられらた。


*白山吹の花と果実


「山吹」を詠んだ句は非常に多く、これまで本ブログでも20句以上紹介したが、今回は記事が長くなったので、新たな参考句の掲載は割愛する。