朝日浴び星の瞳もパチクリと
( あさひあび ほしのひとみも ぱちくりと )


先週の土曜日、京都の植物園に行ってきた。実は先々週も行ったのだが、期待していた「万作(まんさく)」や「節分草(せつぶんそう)」は莟のままで全く咲いていなかった。



先週は、こんどこそと思って行ったのだが、いずれも数輪咲いているだけだった。保存している過去の写真を確認すると、この時期にはかなり咲いていたのだが、どうも今年は開花が遅れているようである。



そんなこともあり、今週は、近辺で見かけた春の野草などを順次取り上げることにし、今日は、「大犬(おおいぬ)のふぐり」を取り上げた。
 

掲句は、ある神社の裏庭で咲いているのを見て詠んだ句だが、いつもながら、この花が咲きだすと春が来たことを実感する。


 

中七の「星の瞳(ほしのひとみ)」は、「大犬のふぐり」の別称で、時々これを使って詠んでいる。周知の通り「ふぐり」は「陰嚢(いんのう)」のことで、これを使うことには何となく抵抗感がある。



「星の瞳」という名前は、誰が付けたのか不明だが、この花を形容するに相応しいものと思う。ちょっと少女漫画っぽい名前で、当初は使うことにためらいはあったが、馴染んでくるとそれもなくなってきた。

尚、「大犬のふぐり」は「犬ふぐり」とも言い、春の季語になっているので、「星の瞳」もそれに準じるものとして使用した。



因みに、過去には「犬ふぐり」の句も多く詠んでいるが、「星の瞳」でも以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 別世界星の瞳に見ゆるかも
② お目覚めの星の瞳や池の傍
③ 野に出でよ星の瞳も輝けり




①は、別名に「星の瞳」があることを初めて知って詠んだ句。「犬ふぐり」とは、ちょっと雰囲気が違ってくる。
②は、この花を池の畔で見た時に、いよいよお目覚めかと思って詠んだ句。
③は、春の浮き浮きした気持ちを詠んだもの。上五の「野に出でよ」は、俳人中村汀女の「外(ト)にも出よ 触るるばかりに春の月」の句に倣ったもの。



「星の瞳」こと「大犬のふぐり」は、オオバコ科クワガタソウ属の越年草。ヨーロッパ、西アジア原産。明治時代に渡来し帰化。花期は2月~5月。花弁は4枚。色は瑠璃色(コバルトブルー)だが、まれに白い花をつけることがある。

英語名は「Bird's Eye(鳥の目)」あるいは「Cat's Eye(猫の目)」。いずれもそのきらめきを「瞳」に例えたものと思われる。



「犬ふぐり」を詠んだ句は結構あるが、「星の瞳」を使って詠んだ句はほとんどない。ただ、明治生の著名な俳人高浜虚子は、以下の句を詠んでいることは興味深い。

いぬふぐり星のまたたく如くなり