入り口は涼気いざなう白丁花
( いりぐちは りょうきいざなう はくちょうげ )


夏になってもまだ寒いと先ごろまで言っていたような気がするが、段々と薄着になり、昼日中は涼しさを求めるようになってきた。



 

そんなおり、時々見かけるのが、白い小さな花を涼しげに咲かせている「白丁花(はくちょうげ)」である。


 

本日の掲句は、その花木が、ある家の玄関前に植えてあって、沢山の花を咲かせているのを見て詠んだ句。


 

中七の「涼気」は「涼しい空気。涼しい気配」で夏の季語。「白丁花」の花も夏の季語なので本句は季重なり。


 

因みに、「白丁花」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


雪片を散らすが如く白丁花


本句では木を覆うように咲いている多くの小花を雪片に喩えた。


 

「白丁花」は、アカネ科ハクチョウゲ属の常緑低木。原産地は沖縄、台湾、インドシナ等。江戸時代に日本に渡来。低木で生垣や庭木、盆栽などで時々見かける。
*よく似た花に「段丁花(だんちょうげ)」があるが、これは「白丁花」の園芸品種。背丈が低く、葉が一回り小さいそうだが、正直まだ判別できていない。


 

花期は5月~7月。花は、ラッパ状で小さく(径1cm)白色または淡紅紫色。雌雄異株。葉も小さく、斑入り種がよく出回っている。



 

名前は、同科の落葉低木「紫丁花(しちょうげ)」に対応したもの。「丁」は花の形のことで「ラッパ型」を表す。つまり、「白い丁型の花」が名の由来。

*「丁子(ちょうじ)」の花に似た花を咲かせるところから名づけられたという説もあるが、ネット図鑑で見た限りでは、あまり似ていない。
 

「白鳥花」を記すこともあるが、これは全くの当て字。また、「六月雪」と書いて「はくちょうげ」と読ますこともある。


 

古く(江戸時代)からある花木だが、「白丁花」を詠んだ句は意外と少ない。以下には、ネットで見つけた句を参考まで掲載した。(過去に掲載したものも含む。)


【白丁花の参考句】
水鉢の水鳥なれや白丁花 (一有)
玉水のほちほち眠し白丁花(斑象)
奥ふかく砂しく門や白丁花(無徳)
木犀の落葉掃きけり白丁花(正岡子規)
雨の日の雨にしたがひ白丁花(中者正機)