荒川祐二で~す
スサノオで~す
小春「祐くん♪スーさん♪」
影狼「……」
『スサノオと日本の神を巡る旅 ~オオクニヌシの国造りの地を巡る~』
次なる僕らの目的地は、
新潟県は糸魚川市 天津(あまつ)神社境内にある、
『奴奈川(ぬなかわ)神社』。
と言われてもピンと来ない人もいるかもしれませんね」
ス「昨日のオオヤビコの指示で、
根の国に向かったオオクニヌシ。
そこでこの俺、俺、俺に鍛え上げられ、
やつは立派な王たる力を持つ男になった。
…が」
あ「…が?」
ス「同時に、女癖も悪くなった…」
あ「有名な話ですね…。
『オオクニヌシ=八千矛の神』という異名…」
ス「ほんまに…。
何ちゅう異名やねん…
『八百矛』ぐらいで留めておけばいいのに…」
あ「数の問題ではない」
ス「(笑)
どっちにしても、
全国のあっちこっちの女神に手を出すようになったオオクニヌシが、
『聡明で美しい』という噂を聞きつけて、
わざわざ出雲からここ越国(新潟)まで出向いた。
そこまでして、
モノにしたいと思った女神、
それが『ヌナカワ姫』」
そんなことを話しながら、
僕らは、
北陸新幹線に乗って、
『糸魚川駅』(北口)へ。
あ「ここは昨年、大きな火災があった場所ですね…」
イザナミを死なせてしまった、
ヒノカグツチの話でも表されているように、
火はいつの時代も、諸刃の剣。
生活を支えてくれると同時に、
恐ろしいものでもある」
あ「………」
そして駅から、
日本海側に向かって少し歩くと、
そこには…?
…と、足下の子どもは?」
ス「諏訪のタケミナカタ」
あ「マジ!?
あの『国譲り』でタケミカヅチさんと戦った、
タケミナカタさん!?」
ス「オオクニヌシとヌナカワ姫の子どもやからな」
あ「…そういえばそうやった!!
改めて実際に見ると、衝撃」
ス「神話は知れば知るほど、
色んな繋がりが見えて来て楽しくなるよな。
あと面白い話をもう一つ。
この像が向いている方角はな、
オオクニヌシのいる出雲の方角やねん」
あ「そうやって聞くと、ロマンを感じるねぇ」
そして僕らは駅の反対側(南口)へ。
そこから徒歩5分。
天津神社に到着した。
天津神社の主祭神ではなく、
本殿横の境内社である、
『奴奈川神社』のご祭神。
ス「同じようなことを何回か言ったことがあるけど、
神社やそこの祭神というものはかつては、
当然各地方、
それぞれの人々の信仰によって、
作られて成り立っていた。
しかし、
大和王権が全国を統治するようになると、
各地方の神社の祭神を大和王権系の神々に入れ替えたり、
変更したりということもあったからな。
まぁ歴史の流れの中での話よ」
あ「そうなんだ…。
そういうことも調べないと、
全然わからないもんね…」
ス「だからここの『ヌナカワ姫』は、
かつてこの地域一帯を統治していた、
『巫女』だったんじゃないかとも言われている。
『巫女』って言っても、
今の巫女とは全然イメージが違うで。
シャーマンとか、卑弥呼みたいなものと言えばわかりやすいかな?
ヒスイを神具として用いて、
占いや呪術で、
国を統治していたという」
あ「マジか。
そのヌナカワ姫の国がかつて、
大和王権に組み込まれてこうなったと?」
ス「まぁいつも言ってるけど、
俺が提示するのは、
あくまで『説』な。
知った上で、
答えは自分で見つけていけばいい」
そんなことを話し、
『奴奈川神社』で参拝。
(二礼二拍手一礼)
…さて、
オオクニヌシが求めた、
『聡明で美しい女神』とは…?
…。
……。
………。
…………。
ス「お前はいつも、女神は美しく呼び出せる傾向にある。
男は比較的、変なのが出る確率が高い」
お久しぶりでございます」
ス「おぅ、ヌナカワ姫。
相変わらず綺麗やな。
まぁ俺のクシナダには敵わんけどな」
ヌナカワ姫「スサノオ様、綺麗だなんてお恥ずかしゅうございます。
ご冗談はおよしになって下さい」
美しい言葉遣いと、
気品あふれる態度でスサノオと接するヌナカワ姫。
正しくオオクニヌシが惚れた、
女神の姿がそこにあった。
あ「はい、もうハゲ頭でいいです。
何でしょう?」
ス「お前、ヌナカワ姫の有名な歌は知ってるやろ?」
あ「あぁ、あのオオクニヌシさんが、
わざわざ出雲から出向いて来たのに、
ヌナカワ姫は部屋にも入れてくれなかった。
それでも諦めきれないオオクニヌシが歌った、
求愛の歌に対して、
ヌナカワ姫が返した歌ですよね。
『古事記の恋愛物語』」
ス「ヌナカワ姫、あれ、歌ってくれるか」
ヌナカワ姫「スサノオ様…、
お恥ずかしゅうございます…」
ス「歌ってほしゅうございます…」
あ「聞かせてほしゅうございます…」
ヌナカワ姫「……分かりましたでしゅうございます……」
…。
……。
………。
…………。
あ&ス「(意外にノリがいい)」
そんな僕らに、
ヌナカワ姫はゆっくりと、
美しく艶やかな声で、
歌を歌い上げる。
ヌナカワ姫を求める、
オオクニヌシへ歌った歌。
ヌナカワ姫「八千矛の神さま、
わたしの心は、
おちつかずにフラフラ飛ぶ水鳥のようです。
今は、自分のことしか考えていない鳥。
しかし、
いずれは、あなた様の鳥になるのでしょう。
緑の山に日が沈んだなら、
闇に包まれた夜がやって来ます。
その時にまた、
朝日のようにさわやかにやって来てください。
そうしたなら、
私はコウゾ(クワ科の植物)の綱(つな)のような、
白い腕(うで)であなたを抱き締め、
泡雪(あわゆき)のような、
若く白い乳房(ちぶさ)であなたを包むでしょう。
手をぎゅっと握って絡ませて、
足と足を重ね、
思う限りの一夜を過ごしましょう。
ですから、
どうか急ぐような恋などなさらないでください」
※『古事記のヌナカワ姫の歌』を荒川意訳。
あ「…な、何かドキドキする…」
ス「やろ!?やろ!?!?
めっちゃドキドキせーへん!?
俺も!俺も!!最初聞いた時、めっちゃドキドキしてん!!!!
何かな!!想像したらな!!めっちゃドキドキすんねん!!」
あ「神が無闇にテンション上げるな。
あんたは男子中学生か」
ス「 (´・ω・`)」
あ「そ、それにしても、
オオクニヌシさんのどこがそんなに良かったんですか?」
僕の問いに、
ヌナカワ姫は頬を赤らめて、
恥ずかしそうに答える。
ヌナカワ姫「…一生懸命なところ…でございます…」
あ「一生懸命…ですか。
やっぱり出雲から新潟まで、
わざわざ出向いてきたところとか?」
ヌナカワ姫「そう…でございます…」
ス「フン、ただ女好きなだけやないか」
あ「スサノオさん、おやめなさい」
ヌナカワ姫「お恥ずかしい話ですが、
分かってはいても、
女というものは、
男性のそういった思い切った行動に弱いものです」
あ「確かにそうなの…かな?
僕は男だから、
あんまり分からない感覚だけど」
ス「フン、ただヒマなだけ…」
あ「おやめなさい」
ヌナカワ姫「例え力を持っていても、
いつの時も少年のように目を輝かせて、
一生懸命。
私の知るオオクニヌシ様は、
そのような神さまでした」
あ「何か…益々…オオクニヌシさんに対する謎が深まるね…」
ス「まぁオオクニヌシのことは置いといて、
ヌナカワ姫のような恋物語をしたければ、
この神社に来て、
ヌナカワ姫に会いに来ればいい」
ヌナカワ姫「はい…。
私は『縁結び、子授け』の神でもございます。
いつでもまた皆様をお待ちしております…」
あ「何だか心が洗われました。
素敵な歌をありがとうございました」
ス「…エロ神さまことオオクニヌシ様、
あなたにたぶらかされて、
私の心は、
溺れてもがき苦しむ、ダチョウのよう…」
あ「変な替え歌で、
せっかく祓われた俺の心を穢すな」