皆様、こんにちは😃!
ゆいレディースクリニックです。
今回は、硬膜外麻酔による無痛分娩のお話です。

無痛分娩で行われる硬膜外麻酔は、腰椎の硬膜外というところに細いチューブを留置して、そのチューブから、局所麻酔薬を硬膜外腔に注入して、下半身の痛覚を麻痺させる麻酔です。
主に下腹部〜下半身の手術に使用される麻酔で、産科(帝王切開)、婦人科(子宮や卵巣)、外科(下腹部)、泌尿器科、整形外科(下半身)とかの、各科で昔からよく用いられる麻酔法です。
産科で無痛分娩に使用される硬膜外麻酔は、完全に無痛にする事を目標とはしておらず、例えば、麻酔のない時の陣痛極期の痛みレベルを10とすれば、2〜3程度の、我慢しなくても充分耐えられる程度にまで抑えるようにコントロールしていきます。もし必要となれば、そのまま帝王切開ができるレベルまで痛みをとる事も可能ですが、そこまですると、母体の低血圧等の副作用が強く出てくる可能性があります。(母体の低血圧がひどくなると、胎盤の血流も悪くなって、胎児が低酸素状態となり、胎児心拍が下がり、徐脈となる事もあります。低血圧がひどくなった場合は、輸液(点滴)や、昇圧剤の注射で対処します。)

硬膜外麻酔の手順
1  患者様には、点滴をして横臥位になり、背中を丸く後ろに突き出してもらいます。この体位により、背骨の、骨の隆起(棘突起)がわかりやすくなり、なおかつ、背骨の後方が広がって、穿刺が容易になります。
高度肥満の方は、この体位でも、厚い皮下脂肪のため、背中の骨の隆起(棘突起)が触知できなくなり、穿刺が困難となり、結果無痛に出来ない場合もありますので、御了承下さい。
2 背中の穿刺予定部分を3回、消毒します。(冷やっとします。
3 穿刺予定部位(大抵、第3〜4腰椎または、第2〜3腰椎の棘間)に局所麻酔の注射をして、本番の太い針(硬膜外針)を刺す際の痛みをとります。
4 麻酔の皮下注射をした穿刺予定部分に、太い硬膜外針を、背中に垂直に、硬膜外腔という場所まで刺していきます。標準的な体格のかたで、皮膚から約4cm程度の深さで、硬膜外腔に針先が入ります。その際、目安となるのが、黄靭帯(おうじんたい)と言う、厚さ4mm程度の硬い靭帯で、その靭帯を突き抜けたところが硬膜外腔です。硬膜外腔は、血管の豊富な疎な結合織であり、その空間に針先が入っている事を、生理食塩水や空気を注入して、確認します。(抵抗がなく、スッと注入できます。)

5 硬膜外腔に針先が入れば、その針先を頭側に向けて、チューブを硬膜外腔に留置します。通常、穿刺した場所から、4〜7cm程度、頭側まで先端を進めて、針だけ抜いてチューブを、その位置に留置して、背中にテープで固定します。(首、肩の後ろくらいまで、テープを貼って、動いても抜けないように固定します。)
6 チューブの端から、生理食塩水を試しに4〜5ml、硬膜外腔に注入します。その際、髄液や、血液が逆流してこない事を充分に確認します。
穿刺後に、無色透明な脊髄液がでてきたら、針が深く入りすぎている事となり、これに気づかず、多量の局所麻酔薬をここに誤って注入してしまうと、重度の低血圧になるのは勿論、呼吸筋まで麻痺してしまいますから、呼吸困難となり、これを数分〜10分間放置すると、重度の脳障害が残ったり、命の問題となる可能性があります。当然、胎児も、重度の低酸素から仮死状態になります。2年ほど前に報道された京都の産婦人科の無痛分娩に伴う医療事故は、これです。これにすぐに気付いて、すぐに呼吸管理(人工呼吸等)をして、輸液で昇圧剤等の薬剤を適切に使えば、後遺症や障害が残る事はありません。
また、注入の局所麻酔薬が血管内にそのまま入ってしまうと、局所麻酔中毒が起こります。この症状は、意識が遠のいて数秒のうちに、痙攣が起こります。(ただし、呼吸は止まりませんので、血管内に入って麻酔薬の効果が弱まるまで、呼吸と血圧をちゃんと維持すれば、特に後遺症は残りません。)
7 テストの量(通常、約3ml)程度の局所麻酔薬をチューブから硬膜外腔に注入します。(患者様は、注入部位が少し冷たく感じます。)
8 テストの注入で、急な血圧や、下肢の麻痺が出なければ(この少量の注入で、急に下半身のが麻痺してきたら、薬剤が、脊髄液中に入ってしまっている可能性がありますから、このまま注入すると危険です。京都での医療事故となります。)、本番の局所麻酔薬を注入します。注入法は、一度に一定の量(約6〜10ml)を一気に注入する方法(ワンショット)と、自動注入器を使用して、少量を持続的に注入する方法があり、患者様の陣痛の状態により、方法を選択します。
9 メインの局所麻酔薬を、入れてもすぐには、痛みは取れません。鎮痛効果が出るまで15〜20分程度の時間がかかります。患者様は、両下肢が温かい感覚となり、そのうち、長時間正座した後のように、下半身が痺れてきます。当然、自覚的な陣痛の痛みも徐々に薄れていきます。子宮の収縮は、変わらず続きますが、分娩時に腹圧、怒責をかけにくくなる場合もあり、吸引分娩となる事もあります。
麻酔が強く効くと、足が痺れてガクガクとなり、歩行が難しくなる事がありますから、一人で立ち上がろうとはしないで下さい。(転んでしまいます)
トイレに立って行けないようであれば、適宜、看護師、助産師が導尿(膀胱に細い管を入れて尿を出します。)
10 児の娩出時に、会陰切開をしたり、産後に会陰裂傷の縫合をしたりしますが、この時も、ずっと硬膜外麻酔が効いていますから、余分な麻酔を追加する必要はありません。(通常は、縫合部位に、局所麻酔薬を注射して縫合します。)
大抵、お母様はニコニコ笑顔のまま、赤ちゃんが産まれてきます。
11 裂傷の縫合が済めば、もう麻酔は必要なくなりますから、背中に留置した硬膜外チューブを抜きます。(抜くのは簡単で、チューブを引っ張るだけで、痛みもなくすぐ終わります。)
12 チューブ抜去後、数時間で、下肢の感覚は普通に戻ります。

以上が、硬膜外麻酔の概略です。  

いろいろ細かい説明を聞くと怖いイメージを持たれる方もあるでしょうが、熟練との医師が行えば、安全なものです。(個人的には、約2000例以上の経験があります。)
当院の無痛分娩費用は、10万円(+税)としております。
☝️ ゆいレディースクリニックから正面、
        朝焼けの大池公園。

如何でしょうか。
興味のある方は、医師、看護スタッフにお尋ね下さい。