桃太郎論文⑤
桃太郎は誰もが知っている童話。
言うなれば日本最強の童話。
だがしかし、今日の教科書には掲載されていない。
載っていないのに、どの子供も知っているというのは、それはそれですごいが、ではなぜ載っていないのか?
と言うのも、以前は載っていた。
しかし、ある時期から載らなくなったのだ。
では
なぜ桃太郎は教科書から抹殺されたのか
調べていくうちにはっきりとした理由がわかった。
しかも日本の歴史と大きく関係していて、非常に納得のいく理由が。
というわけで、今回は桃太郎の歴史を研究してみた。
桃太郎の歴史
まず、創作されたのは室町時代辺りとよく言われるが、これははっきり言って定かではない。
ベースになった物語がきっとあるに違いないが、どの作品だったのかは今となっては不明である。
「むかしむかしの桃太郎」や「太郎話」などいろいろと可能性がある作品もあるが、解決しないので、ここではバッサリ省略!
創作された当時はインターネットがあるわけでもなく、電話があるわけでもない。
だからそのベースの話を聞いた人が、違う人に話す、または記すことによって伝わっていったとされる。
しかも、その人のアレンジを加えて。
だからその人によって、話が少しずつずれてくる。
なんとなく同じ話でも、桃の数が違ったり、お供が違ったり、結末が違ったり、あるいは別のおとぎ話と引っ付いちゃったものもあったりと、場所によって、時代によって全然違う話が伝承されていった。
その結果なのか、現在、日本中で4000程の話が残されている、とされている。
しかし、現在はそのようなバラバラの話ではなく、統一された桃太郎が全国的に一般的になっている。
これはなぜかというと、明治時代に入り「尋常小学校読本」(明治20年)といういわゆる教科書に桃太郎が採用されたからである。
これが教科書に初めて登場したときであり、ここからずっとある時期までは教科書に載っていた。
この効果により、全国的に統一された桃太郎が知れ渡ることになった。
回春型と果生型
話は少しずれるが、教科書に載せる際に、面白いことが起こった。
室町時代から作られてきた桃太郎と、教科書に載っていた桃太郎では大きな違いがあるのだ。
それは、
桃太郎の生まれ方が違う
現行の桃太郎は桃から生まれてくるが、昔の桃太郎はそうではなかった。
桃から生まれてこなかったのだ。
では、何から生まれてきたか?
当たり前といえば当たり前なのだが、
正解は
お母さんから生まれた
果たして、これはどういうことなのか?
以前の桃論で、「なぜ桃なのか?」(http://ameblo.jp/yuhkamiki/entry-12242965769.html)という事を研究した際にも記しているが、桃には若返りの効果があるとされていて、
川から流れてきた桃をおばあさんが拾って食べると、若返った。
もう一つ拾って(あるいは、自分の桃の半分を)家に帰っておじいさんに食べさせると、おじいさんも若返った。
その夜に授かった子供が桃太郎、なのである。
しかし、教育上の問題もあり、桃から生まれるというド・フィクションの形にした、というわけだ。
(※赤本「桃太郎」の桃太郎誕生のシーン)
桃太郎将軍
話はずれたが、
長きに渡り、教科書に君臨した桃太郎。
その勇敢な姿に子供はみな憧れを持っていたに違いない。
さて、ここから核心的なところを触れていくが、時代的には明治時代が終わり、昭和に入り、戦争時代に突入していく。
この戦争時代に、桃太郎が軍国主義に使われることになったのだ。
つまり、鬼は鬼畜米兵、日本国民は桃太郎将軍のように勇敢にあれ!
または桃太郎将軍に使える犬や猿、雉のように忠誠であれ!
というように、桃太郎を通して、日本国民のあり方を教え込んで行ったのだ。
当時、日本で初めての長編アニメが作られた。
タイトルは「桃太郎の海鷲」(1942年製作)
内容は日本海軍がハワイを奇襲した真珠湾攻撃をモデルにしており、桃太郎を隊長とする機密部隊が鬼ヶ島へ「鬼退治(空襲)」し、多大な戦果を挙げるという話である。
また1945年には「桃太郎 海の神兵」という作品も作られている。
このように、軍国主義に利用されるようになった桃太郎は次第に「日本」という国を表すようになっていった。
他にも、こういうイラストも登場する。
桃太郎は日本の代表。
奥にいるのはピノキオ。こちらはイタリア。
そして、左手前が赤ずきん。こちらはドイツ。
つまり、日独伊三国同盟を表したモノである。
こうして、桃太郎が日本人にとってますます象徴的なものになっていったのであるが、戦争が終わり、
GHQによって軍国主義を連想させるものは排除された。
そこに桃太郎が引っかかったのだ。
このタイミングで教科書から抹消されたのだ。
日本人なら誰もが慣れ親しんだ桃太郎が、軍国主義に使われ、悲しくも教科書からも消される。
そんな悲運な童話は他にあるだろうか?
しかし、希望を捨ててはいけない。
日本人の心にはこの物語が受け継がれ続け、語り続けられていった。
誰が強制したわけでもなく、教科書に載っているわけでもないのに関わらず、ほぼ全ての日本人が知っている童話として、今尚トップに君臨している。
消されても這い上がってくる。
その根強い人気のこの最強童話から学ぶ事はこれからも多そうだ。
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