🧵この記事はきっかけ(1)からの連続シリーズです
 
 
オーディションの結果、当然サイは入賞しませんでした。
 
 
当日会場に来ていたメンズモデルはガチ勢だったため、グランプリや準グランプリとして自分以外の誰かが発表されると、会場のロッカーやゴミ箱を本気で蹴ったり殴ったりして、即座に会場を後にしていました。メンズモデルには参加賞として、ブランドのロゴが入ったクッキーの詰め合わせがもらえたのですが、出口で係の人が配っているクッキーの箱も邪険に振り払って、怒りに満ちた足取りで会場から去って行きました。
 
 
私はびっくりしてそれを見ていましたが、横にいるサイはにこにこして、「えりちゃん見て、あの人が優勝ですよ。すごいねぇ〜」「あの人は本当にかっこいいねぇ〜」と言って、グランプリや準グランプリに輝いたメンズモデルたちに心からの拍手をおくっていました😂 そしてサイは敗北したガチ勢が蹴散らしたゴミ箱やロッカーの扉をささっと直すと、「えりちゃん、私たちも帰りましょうか」と言って、私の右手を自分の左腕にひょいっとかけて出口に向かい、参加賞のクッキーを嬉しそうに受け取っていました😂
 
 
「あのー…今日えりちゃんも参加したんですけど、えりちゃんのクッキーもください」
と、係の人に私の分のクッキーを要求していました🤣🤣🤣
係の人が、
「これは今晩参加されたメンズモデルの方の分でして…」
と言うと、
「えりちゃんも今晩参加しましたよ?あと、さっきの人(怒って帰って行ったメンズモデル)クッキーいりません。だからえりちゃんの分あります」
と、普段発動しない意固地をなぜかここで発動させていました(笑)
 
 
「サイ、うちはクッキーいらないから、大丈夫。係の方も(怒り狂った人からおとぼけさんの対応まで)すみません」と言って会場を後にして、二人で新大阪に向かう新幹線に乗り込むと、サイは箱からクッキーを全部取り出して新幹線の座席のテーブルに並べ、「これはえりちゃんの」と言ってクッキーを半分私にくれました。
 
 
サイはどこまでも派手さがなくて、本当に素朴で優しい人でした。私にない物を全て持っているような、今思い返してみても、間違いなく素敵な人でした。
 
 
つづく