ある春の日。
霞が麗らかにたなびく山の峰に五色に輝く雲が現われました。
その渦を巻くような不思議な形をした雲は遠い深山から噴き出したように思われました。
「あれを見よ。瑞雲じゃ」
「なんと美しい雲であろうか」
「これは吉祥のお告げに違いない。ありがたいこと」
「ありがたいこと」
その不思議な色に輝く雲は遠い京からも望め、見た者たちはみな天に向かって手を合わせたということです。
ちょうどその頃、天上の蓮池でひとつの花が開きました。
辺りは柔らかい光に満ちて、かつて光る君と呼ばれた人は目を覚ましたのです。
その美貌は若かりし日のそのままに、光るばかりに尊い姿であるのを飛天は喜びの歌を声高らかに歌い上げる。
喜びが満ちるほどに目が開かれて、蓮の花は大きく開きました。
さて、その傍らに誰かいたものか。
それはここまで読み進めて下さった方々の御心にお任せすると致しましょう。
この『源氏物語』は私がアレンジして書いているもので、人物描写など
も私の想像などが重きを占めています。
また失われた巻についても想像で描いているので、オリジナルのものとは違います。
お問い合わせが多いのでこの場にて・・・/ゆかり


