2011-08-12 12:46:31

自作戯曲 『もやしの髭根』

テーマ:創作戯曲
『もやしの髭根』の七番目です。戯曲ですらないものになっていますが、まぁいいでしょう。
ルクレティウスが続いてごめんなさい。一か月以上同じ本を読んでいるって、わたしにとってはいつものことです。
今回は途中ちょっとグロイと思われる箇所があるかもしれません。

『もやしの髭根』 (第七幕)

午前中の居間、窓は全開。おんな、畳を小さな雑巾で拭いている。机の上の本がぴらぴらと風でめくれる。

ルクレティウス : 目的因の否定 =器官が機能を創る=

           よくある間違いを避けるため、注意深く聞くんだよ。
           輝く瞳は、遠くを見るために形成されたのではない。
           脚が曲がるのは闊歩するためではないし、
           身体に備わる腕や手は、必要なことを為すためにあるのではない。
          
           この種の説明はすべて逆なんだ。関係をさかさまにして考えている。
           身体に備わるものは、わたしたちの使用に合わせて作られたのではなく、
           むしろ器官が形成されたときに、その機能が創られたのだ。

           目ができる前にビジョンはないし、舌ができる前に言葉はない。
          
              (中略)

           他方、人は、槍を飛ばしたり、防具を作る以前から、素手で殴り合っていた。
           柔らかいベッドで眠るよりずっと前から、四肢を休める習慣を持っていた。
           カップを作りだす前にも、喉の渇きを癒していた。
           槍や防具、ベッド、カップの発見は、機能を目的として為される。そうだろう?
   Lucrèce De la nature, Lucretius, De rerum natura ルクレティウス(前94頃~前55頃)『物の本性について』 IV 825.

おんな :  (畳を拭きながら) ふーん。わたしは舌がなくても言葉はあったと思うな。
       
おんな雑巾をひっくり返す。見る。

おんな :  わぁ、けっこう汚れている。
      
         海外にいるとき、畳の上に布団を敷いて眠りたいとたまに思った。今は畳が好き。
         いつだったかある山村で、庭に畳を並べて干してあるのを見た。
         掃除機を持たないわたしも、一日一枚ずつでも干してみたいと思ってはいるのだけれど、
         畳を上げたら下から何が出てくるのか分からないし、恐ろしくてできないでいる。
         せめてあんまり物を置かずに、できる限り家に風とお日様を入れましょう。
      
移動して別の畳を拭く音。風が吹いて、本がぴらぴらめくれる。

おんな :  でもね、ルクレティウス。
         心臓が、身体に血液を循環させるためのポンプじゃないとしたら、
         いったい何なのでしょうね?心臓とポンプは何が違う?

         (少し手を止めてぼーっとする)

         あ、食べられるところ?
         焼鳥屋さんの「ハツ」美味しいよね。大好き。

手を止める。

おんな :  でもね、ルクレティウス、
         「歩くために脚がある」と「脚があるから歩ける」ってそんなに違うかしら?

         「機能」が入るとややこしいからちょっとよけておこう。
         変な例だけれど、「仕事をするからご飯を食べられる。」というのと
         「食べるために仕事をする。」という二つの文の違いと論理的には同じだよね。
      
         で、それはどんな違い?

         とくに理由はないけど、入れ替えてみようか。
         「ご飯を食べるから仕事ができる。」うん。おなかがすいてヘロヘロでは仕事ができない。
         「仕事をするからご飯を食べられる」し、「ご飯を食べるから仕事ができる」。
         うん。暮らしがなかなかうまく回っており、元気そうな気がする。

         じゃあ、「仕事をするために食べる。」はどう?
         昔、「食べるために仕事をするのか、仕事のために食べるのか。」とぼやいた友人がいて、
         ずいぶん窮屈な日々を過ごしているのだろうと思ったけど、、、今はどうしているかなぁ。
      
立ちあがり、少し残っていた埃を取るため、箒と塵取りを持ってくる。

おんな :   因果関係でよいところに「目的」が入り込んでいて、とても窮屈になることがある。
         機能を目的として作られるものは道具だね。
         自然界のような「もちつもたれつ」の関係が複雑に絡み合っている環境下では、
         それぞれが働き合っている(機能がある)にも関わらず、道具は少ないと、
         ルクレティウス、あなたはそう言いたかったの?
         (嘘。本当は先にあげた箇所で世界の成り立ちに関する宗教的な説明を否定した。)

畳から顔をあげて、拭いたところを眺めている。

おんな :  ふぅ~。見かけは変わっていないけれどきれいになったような気がする。
         きれいになったような気がすると、ちょっと涼しい気がする。
         畳も好きだけれど箒も好き。古くからあり自然物に似ている良くできた大事な道具たち。
         
         「きれいにしたくて掃除を始めたわけじゃないけれど、掃除をしたらきれいになった」・・・、
         あ~こんがらがってきた、もう嫌だ何も考えたくない・・・。お昼ごはんを食べよう。
      


読んでくださいまして、ありがとうございます。
柚 葉
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2011-07-21 11:31:34

私戯曲 『もやしの髭根』

テーマ:創作戯曲
もやし・・・関係がなくなってきましたが、『もやしの髭根』の第6番目です。
好き勝手なことを書いていますが、お許しくださいな。

『もやしの髭根』 (第6幕)

ある山の上、ロープウェイの終点の休憩所にあるテラス。
机の上には、ビールの瓶、パン、文庫本など。本は風でぴらぴらめくれている。建物の入り口に犬が寝そべっている。

ルクレティウス : 「一つ空の下、羊毛用の羊たち、荒れ馬の種族、角のある牛の群れが、
             同じ牧場の草を食んでいる。同じ小川の水で渇きを癒しながら、
             親の性質を受け継ぎ、種の習性を繰り返し、それぞれの異なった生を送る。
             草に含まれるのは、なんて多様な物質なんだろう。小川はなんて多様な物質を含むのだろう!」
          Lucrèce De la nature (Lucretius (前94頃~前55頃) De rerem natura 『物の本質について』) Ⅱ 660.

おんな : ここにいて、こうして陽のあたる斜面を見下ろしていると、
       ルクレティウス、わたしも同じことを思うよ。

       土にたくさんの種類の種がこぼれ落ち、雨は土にしみ込みやがて根に届く。
       そうして夏になると、さまざまな色、形、大きさの花がいっせいに開く。
       背の低い草の中で花は疎らでも、その多様性ゆえに豊かな気持ちになる。
       「でたらめにならず、さまざまである」世界に、わたしも魅了されているよ。

       (飛んでいる鳥に)下から飛んで来たの?それともここで生まれたの?両親も?
       (テラスに寝そべっている汚い犬に)あなたのお父さんは、羊飼いの犬だった?            

しばらく景色をながめる。それから立ちあがりながらリュックサックに物をしまって、背負う。
おんな : よし!行こう。(小屋の人に) ありがとう、さようなら~!

ザクザク、ザクザクと音をならして歩き始める。
      
おんな : 「スキーがしたいなら、森林限界より上に行けばいいじゃない」
        ふむ。日本に帰ったら誰かに言ってみよう。

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ 歩く。

おんな : (立ち止まって)あー羊だ!それから陽に焼けた羊飼いが一人、犬が二匹。
       モコモコした羊の群れが身を寄せ合って移動している。
       ああ、やっと会えた。
       そう言えばさっきのテラスにも、冬の防寒用の羊の毛皮が壁にかけてあった。
       すごい、もっと近づきたい。
       後をついてどこまでも行きたい。
       そのまま、知らないうちに羊飼いか羊になって暮らしたい。
       それでもある日、わたしだったことを思い出すでしょうね。
       そのときは何を想うだろう?
       
       あら、この辺にもよく見たら糞がいっぱい・・・。

       ぎゃ!だめだ、犬に見つかった!
       登ってきた。こっちに来る。

犬は見えるところで距離をおいて止まる。

       (犬に言うように)わたしは現在ハイキング中で、あやしいものではありません。
       まさか、羊を盗みにきたのではありません。
       (後ろを振り返って)やー無理。迂回するかゆっくり降りるのを待つかしよう!
       わたし実は賢そうな犬怖い。番犬とか。ね、まだこっちを見ている。

おんな犬が動かないのを確認して、しばらく羊の群れを眺めている。

       羊飼いは、一度もこちらを見ない。
       彼にはわたしたちが見えていないのだ。
       まるでわたしたちは別の時間を生きているよう。

       秋の次は冬に戻る。
       そんな周期的な日々を過ごす人にとって、時間は止まるかな?
       どんなふうに?
       果樹が花を咲かせ、実をつけ、葉を落とすのを繰り返すように。
       誕生日には、またその日に戻ったのだと感じられ、年をとらないかな?
       いつか迎える死は、世界の花嫁との結婚であり、太陽と月と木々と山々と鳥たちが祝福するのだろう。

       変わらない生活様式は、良い方に変わり続ける社会と同様に尊い。

長い間、前の方の羊がぎゅうぎゅうになって列をつくり、後ろの羊が少しばらつきつつ列に加わるのを見ている。
おんなぐるりと方向を変え、来た道を戻る。羊の方を振り返る。     

おんな : あ、犬が見えなくなった。

ざくざく、ざくざく。

おんな : ぎゃ!また犬がこちらを見に来た。
       ね、ね、別の道にしよう?もうひとつハイキングコースがあったじゃない?     



読んでくださいまして、本当にありがとうございます。
柚 葉
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2011-07-07 08:08:56

うさぎとかめ

テーマ:創作戯曲
うさぎとかめ(遠足編)

うさぎ : あの山まで遠足に行こう

かめ : いいね。じゃあまずは、池に水を飲みに行かなくちゃ。

うさぎ : そうだね。

二匹歩く。すぐに距離がひらく。

うさぎ : (振り返って大声で)僕がひとっ走り池まで行って、水を汲んでこよう!

かめ : えー、僕も池に行きたいんだよー!

うさぎ : じゃあ、一緒に…

二匹の距離がますますひらく。

うさぎ : あ、いい匂い。近くに薔薇が咲いているんだ。
      (さっきよりも大声で亀に向かって)ねぇ、とってもいい匂いがするねぇ。

かめ : えー?花の匂いなんてしないよ。
      君のところまで行ったら、するかも。

うさぎ : はぁー。君の足は遅いね。
      そうだ。ねぇ、きみが背負っている重そうな荷物を、ぼくが持ってあげよう。
      そうしたら、もっと早く歩けるよ。

かめ : ありがたいけど、これは体から取れないの!
      それに、たとえ甲羅がなくたって、君より足が遅いのは足の形の問題だと思う。
      僕の水陸両用なんだ。

うさぎ : そうかぁ。
      でもね、僕、こんなにのろのろ行くのは耐えられないんだ。
      この草原をピョーンピョーンと思いっきり跳ねて行きたいんだよ!

かめ : じゃあ、先に行っていいよ!
      君ってお昼寝が好きだろう?追いついたら起こしてあげる。
      お昼寝をした後の君の毛って、草花の匂いがして僕は好きなんだ。

うさぎ : そうしよう。
      君のためにとびっきりステキな場所を見つけて昼寝をするよ。
      でも君は、甲羅干しをしないの?

かめ : 僕は明日、一日中甲羅干しするから平気さ。

うさぎ : 僕は明日、湖の周りで花を集めるよ。
      んじゃ、先行くね!昼寝の場所で待ち合わせー!

ピョーンピョーンとうさぎ消える。



(※ 実話ではありません。)
柚 葉
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2011-05-28 17:21:54

自作戯曲 『もやしの髭根』

テーマ:創作戯曲
こんにちは。創作私戯曲(?) 『もやしの髭根』 第五幕です。
嫌いなところもたくさん見つけるでしょうけれど、愛する人々に対して正直でいたいというわがままをお許しください。

もやしの髭根』(第五幕)

五月、おんな草っぱらに茣蓙をしいてごろごろしている。
カサカサカサという音とともにトカゲがすぐ近くに現れる。
      
おんな   あ、トカゲ君だ。
       いいなぁ。草より背が低いのってうらやましい。
       寝転がっていると、世界はほんとに美しいと思う。
       もっと小さくなって、ずっとここにいられたらいいのになぁ。

       トカゲの腹に触れる葉っぱはどんな感触なんだろう。ちょっと温かいのかな。
       音は、あの鎧みたいな体にどんな風に響いているんだろう。
       体温が少しずつ上がり動けるようになるときって、どんな気分?
       小さな音楽が鳴り出すのかもしれないね。   

       はぁ。人の社会の外で生きる生物と話せたらいいのに。
       言葉が人にしか使えないのなら、何か別の方法を探す。
       そのためにわたし、人魚姫みたいに言葉を捨てようかな。
      
       ただし一つ懸念がある。たとえ話せても、次に会ったとき誰か分からなくなりそうなこと。
       だって、生物って地球上にたくさんいるでしょう。
       すべてを個別に認識し愛せるのは、西洋の神様くらいよね・・・。
       わたし、たとえ一匹でも自信がない。そんな風には愛していない、と言おうか。
       失礼・・・かなぁ?
       はぁ、ただ想像してみるだけでも心配って尽きないわね。
      
しばらく間。小さな声。

トカゲ   そんなことないよ。

おんな驚く。が、驚いたことを悟られないようにゆっくり身体を小さくして、小声。少し考えてから、慎重に。

おんな   ねえ、いま何かほしいものある?

トカゲ   何もいらない。(その場を去ろうと、別の方向を向く)

おんな   そう・・・。(ひとりごと)あぁ、一言目を間違えてしまった!

トカゲ、突然体の向きを変え、うろたえている女の目を見るような角度に顔をあげて。

トカゲ   いつか、僕にとって大切なものが君にも分かるときが時が来る。
       
       なぜってそれはいつも僕たちのそばにあるし、君にとっても大切なものだから。
       
       でも今、きっと君は忘れてしまったし、僕にも正確には伝えられない。
       
       ただ知っていることなんだ、と言う以外に、伝えられないのかもしれない。
       
       媒体が何であれ、伝わり得るものは少ない。

トカゲは方向を変えて、去ろうとする。
おんな、先のまずい質問を取りつくろうとして、焦って。

おんな   あのね、わたし次に会ったときに君が分からなくなってしまうの。

トカゲ   その時が来たら迎えに来るよ。

ガサッ。トカゲ去る。
おんな、いつまでもトカゲのいた場所を見ている。

おんな   あ~あ、行ってしまった。
       でも少なくとも、最初の問いは間違った問いだということが分かった。

長く無言。寝ころんであたりの緑を見上げている。ふと思いついたように。

おんな   小学6年生の時、家族と離れて船上で何日か過ごしたことがある。
        たしか、一日目と二日目は海が荒れたの。
        会ったばかりの女の子が酔い止めブレスレッドを貸してくれて、
        それがおまじないのように効いたおかげで、わたしは酔わなかった・・・。

        その旅の途中、星のきれいな夜には、みんなで甲板に出て星を眺めた。
        天上には無数の星がまたたき、小さなランプがあちこちに灯る夜空は明るかった。
        でも船の周りには、真っ暗な海が在った。

        長く続いた揺れが身体のどこかに残っている私にとって、
        見上げた空は平面的で、冷たく、星々は大きな変化とは無縁だと思われた。
        他方、船が身をゆだねている暗い海は、得体のしれないものだということ、
        それはそう思うたびに心音が耳に響くほど知っていた。

        でも、怖かったかと聞かれたら、そうでもない、としか答えようがないの。
        バランスを知った、ということ。人は海に沈めるほど重くない。
        (百人以上乗っている船ですら沈まないんだから、とその時は思っていた。)
        そして船長にできることは、船を浮かせる事でも、水平に保つことでもない。
      
        船を押し上げているのが海だというのは、子供も知っている事実であり、
        むしろその力強さに安心してもいた。

        あぁ、新緑の中にこうしてうずくまっていると、いろんなことを思い出すね。



読んでくださいまして、本当にありがとうございます。
柚 葉
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2011-05-01 13:46:13

自作戯曲 『もやしの髭根』

テーマ:創作戯曲
こんにちは。お久しぶりです。私戯曲(?)『もやしの髭根』の第四幕です。

『もやしの髭根』 (第四幕)

台所。蒸し器を使って冷ご飯を温めなおしている。

おんな   わたしは根っからの根なし草ではない。
       あれ?同じことを二回繰り返してるかな。まあいいや。
     
       土の上ではいつだって根付こうとしている。
       でもいかんせん、根っこが弱すぎるのかあるいは土壌がゆるすぎるのか、
       今のところ自分を支えることができない。

       だから旅が好きなのだろう。
     
       風習の異なる場所で、言葉だってあんまり上手でないから、
       ゆっくり、傷つけないように (気付かれないようにかな?よその土地だもの) 髭根を伸ばし、
       他国で何かを知るために、まるで甘噛みをして確かめるような、そしてときどき噛みつかれるような、
       そんな経験を繰り返す。

       頭は、新しい情報でいっぱいになってしまってへとへとになりながら、
       むしろ研ぎ澄まされる感覚も好きだし、未知のものを容易には受け入れられない頑固さも好き。
       そこで何か一つでも親しいものができたら、とたんに解け始める謎が好き。

       もうすぐまた旅に出る。久しぶりだし、楽しみだわ。
                
おとこ   ねぇねぇ、電子レンジを買おうよ。ナウシカさん。

おんな   あはは。風に乗る代わりに瞬間移動しそうね。

おとこ   じゃあ森の人!

おんな   わたしは火を使うよ。
        電子レンジはわが山門に入るを許さず、です。でも家には山門がないね・・・。
        モノの時間を勝手にいじるのは、時差ぼけを繰り返させるようで苦痛なのよ。
        ぐわーんと響くめまいを想像してしまう。
     
しばらく無言。

おんな   わたし、ヒトに備わる知性って「もてる」ことで急速に進化したのだと思うことがある。
        ほら、クジャクの羽根を説明するのに困ったダーウィンが言ったでしょ。
        でもあの羽根を使って、安定したえさ場を作ったり、他の動物との争いを減らすことなどできないよね。
        だって、羽根が効力をもつのは同じ種の間でのことだし、暮らしには他の生物や環境が必要だもの。

        議論も理論も技術も、文学も芸術も、鶴のダンス。人の世界で閉じている。想像すると面白い。
        わたしは、男でも女でもそんなさまざまな姿に魅せられるし、恍惚とするし、幸せだわ。文明が好きよ。
        でもそこまで。暮らしはもっと自然の中にあっていいと思う。
        それに、自然の中にはまた別の歓喜があるわ。ほら五月はうっとりするほど美しい。
  
おとこ    あなたが好きなエコロジストたちは、そんな知性を至上とする人たちじゃない?
        だって人社会のみならず、自然界のことまで全部考えてあげようって人たちでしょ。

おんな    たしかに。
     
おんな黙る。おとこはそのまま別のことをしはじめる。

おんな   たしかに・・・でも・・・。

蒸し器から湯気が上がっている。

幕、というより続く。

読んでくれて、本当にありがとうございます。楽しい休暇をお過ごしください。
柚 葉
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2011-04-12 20:34:42

創作戯曲(?) 『もやしの髭根』

テーマ:創作戯曲
「もやしの髭根 第三幕」です。四幕で終えるかどうか未定になりました。
何も考えないで始めた結果、つながりがなくなってしまいましたが、わたしもどこに行くか分からないで続けます。

創作私戯曲(?) 『もやしの髭根』 第三幕

朝、寝室。(携帯の)目覚ましアラームの音 デッデーデデデ♪、デッデーデデデ♪

おんな う~。眠い、眠い、眠い、眠い。。。(携帯を止めたり操作したりしながら)エレフィ・・・

携帯から... RFI ... 22H à paris 21H au temps universaire, bon soir à tous ...

3分間のラジオ放送が終わり、おんなは首のあたりに手を置いて、ゆっくり何かをもぎ取るように。

おんな  プチッ。イタッ。はぁあ。お早う。

布団の上に座って、取れた長いものを目の前にかざすようにして。

おんな  今日も立派に髭根が伸びたものね。あら、今日はちょっと悲しげなの?
      切り口からしたたる光が、心なしか弱々しい。
      もっとたっぷりと、暖かい色の光を含んだ水があふれる日もあるのに。
      うすら寒いあの場所でいったい何があったのかしら?
     
      眠る前、暖かくて眠たくて重たくて、朝なんて来なくてもいいのにと思うことがあるけれど、     
      朝になったら気分がすっかり変わっていることを今は経験から知っている。
      考えていたことは夜を境にすっかり変わってしまうし、
      眠る直前にできた歌は、書きとめないと絶対に忘れてしまう。

      みんな材料に使われてしまうのよ、髭根の。
      夜を通して、辺りを探り、這いながら進む髭根は、わたしの中にあるすべてのものを材料にして、
      いいえ、頭の中にあることすべてを養分にして、新たな領域に至ろうとする。
      眠る直前の歌なんて、とくに新鮮な餌で、柔らかくて生々しくて、大好物に違いないわ。

横にだらんとおいてある見えない髭根をしばらく眺めている。それから前を向く。

おんな  こうして毎朝、細い髭根を折りとるようになっても、わたしちっとも変っていない。
      じんじんとした傷みが続くほんの少しの間、身体の中で光がたぷんたぷんと揺れるのを感じ、
      それから、いつもの通りの一日が始まる。

もういちど、髭根の方に振り返って。
     
おんな  あれれ?さっさきまでここでみすぼらしく乾いていた髭根が、もうなくなっている。
      ずいぶん消えるのが早いのね。今まで気がつかなかったわ。
      もともと、この世界に遍在するものとずいぶん近しい存在なのでしょうね。
      だけどいったいどんな過程を経て、見えなくなったのかとても気になる。
      散り散りになった?溶けた?どこに?蒸発した?何かに食べられた?
      
      自然界にあるものは、それを微生物が食べることにより分解され、環境と変わらない何かに変わる。
      人もモノも同じように、他と区別がつかなくなるまでが一つの命であり、
      死は、相転移みたいなものだと思う。
      朽ちる、あるいは腐るという偉大な過程を自分の生から切り離したくない。
      だからわたしは土葬にしてもらいたいんだけれど・・・。たぶん最後は日本を出なくちゃね。

      もぉ、また朝からこんなことを考えてしまう・・・。なんて生き生きしていないの!
      これこそ、わたしがちっとも変っていないという証拠でもある。

      あぁ、もしかして?
      昨晩の髭根は、古代エジプト人のいるあたりまで伸びたのかもしれないわ。
      ミイラ作りの技術、秘術?を持った人々を相手に、「腐敗を妨げる技術による生の不完全性と
      永遠について」とか何とかを通りがかりに話してみて、いろいろと完敗したのかしら。
      まぁ、まぁ、(髭根のあった場所に目をやって) また、チャンスはあるわよ。
      それにわたし、古代エジプトの王様たちってちっとも好きじゃないわ。

部屋から出て、コーヒーを沸かしながら、

おんな  お早う。はい、コーヒー。
      ところで、「数学とかけてミイラととく、その心は?」

おとこ眠そうにしながら考えている。

おんな  はい、時間切れ。「手入れ(定理)が必要」でした。

おとこ  ぜんぜんうまくない。

おんな  むっ。本当の答えは「永遠?」なんだけど、面白くないから無理したの。
      そういえば柳の新芽が伸びてきていたね。「桜柳をこき交ぜて」が古都の春ですな。
     
ネギをトントン切りながら、ひとりごとに戻って、

おんな  わたしの髭根話にも、柔らかい新芽が出るといいんだけれど・・・。

続く

読んでくれてありがとうございます。
柚 葉
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2011-03-06 07:37:08

自作戯曲(?) 『もやしの髭根』

テーマ:創作戯曲
こんにちは。このブログを開いてくださりありがとうございます。
自作 私戯曲(?)の第ニ幕です。一幕目はこちらです
幕って?と自分でも思いますが、戯曲集は楽しいし、読んでいて疲れないから。

『もやしの髭根』 第二幕

おんな、道を歩いている。曇り。肌寒い。ひとりごと。

おんな  何から自由になりたいか?
     目に見える足枷のない主婦の場合、と。

立ち止まって小さなメモ帳に書き込む。

おんな  うーん。わたしは哲学を専攻し、そのまま大学院に行き、何年もそこにいた。
     つまり、将来世間で役立たずになることをかなり早い段階で覚悟したし、
     それでも「生きていくこと」に、根拠のない自信はたっぷりあったので選び(現に元気に生きている)、
     さらに -これが一番大事なところ- 「真理」らしきものがつい最近まで身近だった、
     そんな主婦の場合、って付け加えてもいいかしら?まぁ、いいでしょう。

間をおいて、

おんな  ざらざらした、もやしの髭根から自由になりたい。

     わたしは断固として言う。「もやしは損をしている」と。
     もやしのネガティブなイメージ、うすら寒さとか後ろ暗さとか、
     それはすべて、髭根のせいなのだから。
     本体と同じくらい長い根っこを、いつまでも引きずっているせいなの。

歩き出す しばらく無言。まわりが完全に無音になってから。

おんな  眠っているあいだ、人には髭根が生えてきて、
     どこかうすら寒いところを探り、さぐり、
     そう、今日のように肌寒くて曇っているところから、
     時間をかけて、透明な栄養をとりこむ、ということはないかしら。
   
     朝が来て目が覚めれば、
     一晩のうちにそうやって伸びた髭根は、
     くしゃくしゃになったパジャマのズボンみたいに、
     しわしわ、よれよれで、だらりと人に引きずられている。

     髭根は、明るい場所にいったん出てしまうと、
     もう二度と使いものにならない、弱いものなので、
     どんな人もすぐにその場で、ぽっきりと折り取ってしまうべきなのだ。

     眠ればまた、あるいは淡いシエスタのときでさえ少しは、
     うすら寒い場所を探して、あらたな根がそろりと生える。

     髭根を折り取ったもやしならば、
     白くピンっと張って、内側には特別な光を宿している。
     この世に現れ出るにはただ、髭根を。

神社に入っていく。梅の香り、花。

おんな  (着物を着ている中年の婦人を見て、首に手を当てながら)
     白い首の辺りに、今朝折り取ったばかりの傷跡がまだつやつやしている。
     光に満ちた水分が、零れ落ちそうなくらい膨らんでいる。

別の方をみる。30代女性。黒っぽくて上下だらんとした服装。うつむきがち。太め。

おんな  (つぶやくように) 興味深い現象だわ。
     
     中途半端な長さの毛先、伸びきった上着の裾、
     長いスカート裾が、みんな同じ角度で垂れ下がっている。

     湿った草みたいに、風が吹いてもそよがない。
     梅の香もこころなしか生臭い。
     
     と、ずいぶん失礼なことを考えているわね。見知らぬ人を相手に。
     ごめんなさいね。本当はあなたではなく、わたしの心の中の問題なので許してね。          

遠くから、手を振りつつ、女の人がやって来る。

知り合い まあ、お久しぶりですね。

おんな  こんにちは

知り合い 何を考えてらしたんです?ぼんやりして。遠くからでも目につきましたよ。

おんな  え? 頭の中で梅の短歌を作っていましたの。
      香りにすっかり魅了されてしまって。
      上品な香り、それから、立ち去ろうとする人を引きとめる甘さ。言葉にならないわ。

後ろを向くなど、知り合いから目をそらして。

おんな  嘘をついてしまった。
     「もやしの髭根のことを考えていて、梅花が生臭い」なんて、言えないものね。
     
知り合いの方にふわっとした笑顔で向き直る。二人歩き始める。
知り合いとおんな、そろって梅を見歩く。

幕     

来週、第三幕です(たぶん)。

柚 葉
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2011-02-27 11:15:38

自作戯曲(?) 『もやしの髭根』 

テーマ:創作戯曲
う~ん。戯曲ってどうやって書くのか想像もつかないのですが、私小説ならぬ、私戯曲。
そもそもなぜそんなものを書いてみたいのか自分でもわからないのです。
え~と、、、果てしなく地味です。ただただエゴイスティックであること、わたしにとっての短歌と基本的に同じです。

『もやしの髭根 (全四幕)』

一幕目

台所、おんな一人、もやしを台の上に山にして、髭根を折っている。
ポキ、ポキ、ポキ、ポキと軽い音。

おんな  もやしの髭根を折っていれば、一生プチプチいらずだわ。
     全部終えるまで止まらない。
     それに、プチプチみたいに、プニッと失敗ってこともなくて、
     毎回軽快にぽきぽき折れるし。

黙って、ぽき、ぽき。

おんな  でも単純だからこそ、退屈した脳が「この仕事を早く!早く!終わらせろ!」と手をせかしはじめるのね。
     そうやってせかされると、手はとたんにリズムを失い、そして脳は一層つまらん!と言い始める。
     手と脳ってたぶん恋人どうしみたいな関係なんだわね。
     
     あぁ、それにしても、いつもいつも彼の帰りは遅い。

黙って、何か考えるように。ぽき、ぽき。

おんな  でも、彼の帰りを待ちながらもやしの髭根をぽきぽき折るのって悪くないの。
     待っているときのわたしの気分を表すのにぴったりな感じがする。
     何をしてもよい自由な時間でありつつ、人を待っているという点では拘束された時間。
     もやしの髭根なんて、実質、とってもとらなくてもいいと思う自由と、
     どうであろうがやっぱりわたしは髭根を取っていることには変わりないってところがね・・・。
  
ぽき、ぽき。


おんな  急いで作らなければならないお料理ほど苦痛なことってないでしょう?
     お玉やお鍋のふたが落ちてきたり(ガン!)、お皿を割ってしまったり(パリン)、
     料理ってそもそも、何かに注意を向けながら、別の何かについて考えつつ、
     そして、手はまた別の何かの作業をしている。ただでさえ複雑な作業なのに、
     せかされると口から絶えず、「ちぇ!」とか「もう!」とかが、勝手にこぼれるのは、
     きっと、慌ただしい一連の操作に欠かせない微妙な調整のためなんだわね。

     こんな風に余裕を持って素材に触れるのって、本当に豊かなことだと思わないと・・・。

ぽき、ぽき。

おんな  ふぅ、終わった。

ざるに入ったもやしを洗う。

おんな  なんてきれいな野菜だろう。
     髭根のついたまま、袋にめちゃくちゃに入っているときは、
     いかにも貧弱な安い野菜という感じだけれど、
     こうして見ると、白くてピンとしていてきれい。一つの完成された美なんだわ。

玄関でドアを開ける音。

おとこ  ただいま~

おんな  お帰りなさい。おつかれさま。

二人晩酌。もやしのナムルがテーブル上にある。

おんな  あのね、髭根のないもやしはね、一つの完成された美なのよ。

おとこ  このナムルが?

おんな  違うの、髭根がなくなって、ナムルになる前のこと。

おとこ  ふーん。でも、たかがもやしでしょ。

おんな  されどもやしです。髭根を取るかとらないかで、人生が変わります。

おとこ  おおげさな。

おんな  あなた、女の人のすね毛とか苦手でしょう。

おとこ  は?もやしの髭根はぜんぜん気にしませんが?

おんな  もやしの方が大事なのよ、それはもう大変身なのだから。
     たとえ女の人でも男の人でも、すね毛はもやしの髭根ほどのものではありません。

おとこ  お願いだから、別の話にしてくれない?食べにくいんだけど?

おんな  ふぅ。じゃああのね、お仕事の話しなんだけどね・・・。

二人、話しつつ幕。


では、来週、第ニ幕 (たぶん)。
柚 葉
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